表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽書『愚帝と僭王、畜生と議長』  作者: 宿木マコト
大敗のアルバリウス
30/74

対峙

「竜王ハンゾ、会えて光栄だ。我は帝国皇帝アルバリウス。対話に応じてくれたことに礼を申し上げる」

「わたしも光栄だ、西の大国の王。確か王子だと聞いていたが、もしや先代は亡くなったのか」

「そうだ。つい先日のことだ」

「謹んでお悔やみ申し上げる」

「お心遣い痛み入る」

「だが、女子供を人質に呼びつけるとは、あまり褒められたものではないな」

「その通りだ。故にまずはそなたの妹君をお返ししておく」

アルバリウスが商人に目配せをする。商人の配下に連れられ、ハンゾの妹、シウが現れてハンゾに歩み寄る。ハンゾとシウはハンの言葉でしばし話す。ハンゾは言う。

「まずは礼を言うが、どういうつもりか」

「これは我らなりの誠意だ」

ハンゾは静かに笑う。

「只より高い物はないと、商人達はよく言っておるぞ。そんなに森丘の王族共が大事とは」

「森丘の王族を生かすも殺すも、それはそなたの好きにすればよい。だが生かして役立てた方が、そなたの為になるであろう」

「ほう」

アルバリウスは大きく息を吸う。

「我、皇帝アルバリウスは竜王ハンゾに和睦を申し入れる。条件は三つ。一つ、我、帝国皇帝アルバリウスは竜王ハンゾを森丘の国の国王に任ずる。二つ、竜王ハンゾは我、帝国皇帝アルバリウスへの臣従を誓約する。三つ、新たなる盟約の証として、竜王ハンゾの妹シウは我、帝国皇帝アルバリウスと婚姻を結ぶ。以上だ」

ハンゾは静かに笑う。

「わたしに臣従を誓えとは大きく出たな。しかも婚姻だと。婚姻と言えば聞こえはよいが、早い話が人質を寄こせと言っておるのであろう。そもそも、知っておるか。我らハンには元来、婚姻という言葉はない。婚姻の語は街の民からの借用語なのだ。女を家に囲っておこうなどと、街の民らしい発想なのであろうな」

「条件は飲めぬということか」

「そなたが示した誠意の分ぐらいは、もう少し考えようではないか。そうだな。婚姻の件は当人のシウが構わぬというのなら、好きにすればよい。臣従の件は、森丘の国にその価値があるかどうか、という話になるのではないか。わたしとしては、運河の国まで貰えるなら考えても良いと思っている」

「それは無理だ」

ハンゾは静かに笑う。

「では和睦も難しいな」

少し間を置き、アルバリウスは言う。

「牛馬を養うだけなら森丘の国があれば良い筈だ。そなたが運河の国を望むのは、彼の国の水運と交易に価値を見出しておるからではないか。ならばその手中に収めずとも、交易によって利を得ればよい。そなたの為に、帝国領内での配分票の流通を認可する。これで条件を飲んで欲しい。互いの民の為だ」

「なるほど」

ハンゾは暫く黙った後、ハンの言葉でシウと話す。時折、笑い声も混じる。ハンゾはアルバリウスに向き直る。

「シウは良いそうだ。シウに感謝し、大切にすることだ。わたしも条件を飲もう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ