対峙
「竜王ハンゾ、会えて光栄だ。我は帝国皇帝アルバリウス。対話に応じてくれたことに礼を申し上げる」
「わたしも光栄だ、西の大国の王。確か王子だと聞いていたが、もしや先代は亡くなったのか」
「そうだ。つい先日のことだ」
「謹んでお悔やみ申し上げる」
「お心遣い痛み入る」
「だが、女子供を人質に呼びつけるとは、あまり褒められたものではないな」
「その通りだ。故にまずはそなたの妹君をお返ししておく」
アルバリウスが商人に目配せをする。商人の配下に連れられ、ハンゾの妹、シウが現れてハンゾに歩み寄る。ハンゾとシウはハンの言葉でしばし話す。ハンゾは言う。
「まずは礼を言うが、どういうつもりか」
「これは我らなりの誠意だ」
ハンゾは静かに笑う。
「只より高い物はないと、商人達はよく言っておるぞ。そんなに森丘の王族共が大事とは」
「森丘の王族を生かすも殺すも、それはそなたの好きにすればよい。だが生かして役立てた方が、そなたの為になるであろう」
「ほう」
アルバリウスは大きく息を吸う。
「我、皇帝アルバリウスは竜王ハンゾに和睦を申し入れる。条件は三つ。一つ、我、帝国皇帝アルバリウスは竜王ハンゾを森丘の国の国王に任ずる。二つ、竜王ハンゾは我、帝国皇帝アルバリウスへの臣従を誓約する。三つ、新たなる盟約の証として、竜王ハンゾの妹シウは我、帝国皇帝アルバリウスと婚姻を結ぶ。以上だ」
ハンゾは静かに笑う。
「わたしに臣従を誓えとは大きく出たな。しかも婚姻だと。婚姻と言えば聞こえはよいが、早い話が人質を寄こせと言っておるのであろう。そもそも、知っておるか。我らハンには元来、婚姻という言葉はない。婚姻の語は街の民からの借用語なのだ。女を家に囲っておこうなどと、街の民らしい発想なのであろうな」
「条件は飲めぬということか」
「そなたが示した誠意の分ぐらいは、もう少し考えようではないか。そうだな。婚姻の件は当人のシウが構わぬというのなら、好きにすればよい。臣従の件は、森丘の国にその価値があるかどうか、という話になるのではないか。わたしとしては、運河の国まで貰えるなら考えても良いと思っている」
「それは無理だ」
ハンゾは静かに笑う。
「では和睦も難しいな」
少し間を置き、アルバリウスは言う。
「牛馬を養うだけなら森丘の国があれば良い筈だ。そなたが運河の国を望むのは、彼の国の水運と交易に価値を見出しておるからではないか。ならばその手中に収めずとも、交易によって利を得ればよい。そなたの為に、帝国領内での配分票の流通を認可する。これで条件を飲んで欲しい。互いの民の為だ」
「なるほど」
ハンゾは暫く黙った後、ハンの言葉でシウと話す。時折、笑い声も混じる。ハンゾはアルバリウスに向き直る。
「シウは良いそうだ。シウに感謝し、大切にすることだ。わたしも条件を飲もう」




