戦果
「将軍、冴えてるじゃねえか。本当に野営が見つかるなんてな。一気に仕掛けるか」
友が囁く。クロードが小声で返す。
「待て。竜がいる。一匹か。こっちにはいないと思っていたのだがな」
「うわ。しかもなんだあれ。なんか餓鬼が乗ってないか。遊んでるのかよ」
「商人の言葉を信じるならば、竜に乗っている以上、子供でも王族ということになる。捕らえれば戦果になる」
「その前に竜はどうすんだよ」
「始めに反対側から仕掛ける。向こうに注意が向いたところで後ろからこの槍で殺す」
クロードは鉄槍を構える。
「本気かよ」
クロードは無言で兵に合図する。兵は静かに左右へ分かれ、野営地を取り囲む。
野営地の遠くの側が、騒がしくなった。
「始まったな」
友が呟く。クロードらは一斉に矢を放ち、剣と槍に持ち替えて突撃する。クロードは五人程殺し、竜の背後に立つ。鉄槍を高く構え、叩きつけるようにして竜の脇腹に刺す。竜は咆哮する。背に乗っていた者は地面に落ちた。竜は暴れ、その爪がクロードの胸を捕らえる。クロードの躰が飛ぶ。額からは血が流れる。
「クロード」
友は叫び、竜に刺さった鉄槍を掴む。力を込め、槍をさらに奥へと突き刺すと、竜は再び咆哮し、暴れる。友は傷つき血を流すが、鉄槍を手離さない。クロードは剣を拾い、叩きつけるが、深くは斬れない。竜は躰を捩り、友の肩に咬みつく。友は叫ぶ。クロードは短剣を竜の目に突き刺すが、その躰ごと前脚で払われる。友は片腕で槍を掴み、抉る。竜の口が開き、友は地面に倒れる。続けて竜も倒れる。辺りは血の海と化していた。クロードは友の名を叫んだ。
「戻ったか」
山裾の街に戻ったクロードに将軍が声をかける。その将軍の躰は血に塗れ、傍らの兵達に剣を向けられている。クロードは言う。
「どういうことだ。一体どうなっている」
アルバリウスは無言で立ち尽くす。将軍は言う。
「お前達の首尾はどうだったのだ」
クロードは少し間を置き、答える。
「襲撃はうまくいった。竜を一匹殺した。捕虜を捕らえ、食料も少し奪ってきた。運べない分は焼いた」
将軍は頷く。
「上々だな。いつものもう一人はどうした」
「あいつは、死んだ」
「そうか。無理をさせたな」
暫く沈黙が続く。
「将軍は勝ったのか」
「野戦には勝った。だが奴らは逃げ足が取り柄、思った程には殺せておらぬ。迂闊に深追いもできぬ故、本隊は後ろに下げた。森丘の兵を囮にしてな。あの者達、半分は死んだであろう」
「囮だと。どういうことだ」
「森丘の兵だけではない。流民も殺した。皆殺しだ。これで我らの兵糧は持つ。しかもお前達の襲撃がうまくいったのであれば、敵の兵糧も減ったはずだ。戦うにせよ、和睦するにせよ、食い物の所為で奴らに足元を見られることはない。だがわたしは殿下の命に背き、民を手に掛けた逆臣。その罪を裁かれねばならぬ」
「将軍を、拘束しろ」
アルバリウスの声は震えていた。




