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偽書『愚帝と僭王、畜生と議長』  作者: 宿木マコト
大敗のアルバリウス
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攻城

「殿下、城攻めの準備は整いました。決行は明朝。よろしいですな」

将軍の言にアルバリウスは返す。

「城攻めの機械は十分に揃っておるのか」

「投石や弩砲といった大掛かりな機械はあまり多くは揃っておりませぬ。ですがこれ以上に時を掛けては、敵にも備えの時間を与えることになります」

「分かった。よろしく頼む」

アルバリウスは答えた。クロードが口を開く。

「本当に今攻めて大丈夫か」

将軍が返す。

「何だ、まさか何となく不安だ、などと抜かすのではあるまいな」

「帝国軍は流民やら捕虜やら押し付けられた所為で兵糧に難がある。だから数に任せて、なるべく早く決着をつけたいと思っている。そしてこれはハンゾが、こうなるように仕向けたからこうなった。俺達はハンゾに攻めて来いと催促されている」

「確かにこの状況に誘導したのは奴らだ。我らが次にどう出るかも分かっておるであろう。だが数の攻めというものは、分かっていても防ぎようがないものだ。数は今の我らにとって最大の武器。今、やらぬ手はない」

クロードは頷く。

「他に目ぼしい手段がある訳でもない。やるしかないか」

皆、頷いた。


 帝国軍の王都侵攻は日の出の前、地平が明るくなり始めた頃に開始された。帝国の投石機や弩砲の周りには溝と木柵が張り巡らされ、騎兵に備える。将軍が無言で合図すると、全軍が動き始める。ある者は衝角を押して城門へ、ある者は機械を使って城壁に岩を投げつけ、またある者は城壁に向けて矢を放つ。そして他の多くの者は、長大な梯子を携えて城壁に向かう。城壁から放たれる矢は疎らだった。帝国兵は次々と梯子を上っていく。

「ハンは纏まった抵抗が出来ておらぬように見える。敵の虚を突くことができたのだな。早朝の奇襲がこれ程に効くとは驚いた」

アルバリウスの言に続き、将軍は呟く。

「幾らなんでも手ごたえがなさすぎる」

城壁の各所から、黒い煙が立ち上る。アルバリウスは叫ぶ。

「何故あんなに煙が上がっている。火矢を放った訳でもないというのに」

「奴らが街を焼いているんだ」

友の言にクロードは呟く。

「瓦礫にしてから街を明け渡すつもりか」

城壁が大きく崩れる。

「壊し過ぎではないか。あれでは帝国の兵も落ちて死ぬであろう。もう投石は止めよ。」

アルバリウスの言に、将軍は返す。

「我らの投石ではあのような崩れ方は致しませぬ。これは何か、奴らが細工をしたものかと」

クロードは言う。

「やられたな。奴らは時間を稼いで守りを固めていたのではなく、街を焼く支度をしていた。王都の中は酷いことになっているぞ」

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