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偽書『愚帝と僭王、畜生と議長』  作者: 宿木マコト
大敗のアルバリウス
11/74

畜生

 親愛なる人民諸君には、どうか最後まで落ち着いて本紙を読んでもらいたい。反革命勢力の活動が活発化する中、危険分子を操る黒幕の存在がかねてより噂されていた。そしてついに、革命隊が先日捕らえた反革命分子を調査した結果、恐るべき黒幕の正体が明らかになった。裏で反革命の糸を引いていた者、それは同志クロードであったのだ。もはやクロードは同志ではない。否、そもそも奴は同志ではなかった。クロードは内に反革命の思想を隠し持ち、偉大なる同志ヤサンの傍らでずっと邪悪な笑みを浮かべていたのだ。我らはこの許されざる裏切り者を断罪するため、今再び団結を確たるものとする。

 貴族と商人による前時代的かつ高圧的な支配体制を未だ夢見る愚かなるクロード、そしてそれに連なる反革命分子どもに告ぐ。革命隊はクロードとその一派を捕らえるべく、迅速かつ容赦なく行動する。人民の自由と平等を求める気高き心こそ、我らの剣であり、敵を捕らえる檻である。卑劣な敵に逃げ場などない。我らは勝利する。より良い世界の為に。


-- 共和国機関紙『革命』第220号『裏切り者クロードを断罪せよ』



 裏切り者、四つ足のクロードは、かつて革命の同志と呼ばれた。辺境で領主の護衛を務めたクロードは、愚帝の従者に成り上がると、腕が四つあるかのような強さであるとして『四つ腕のクロード』と名乗った。だがその二つ名は革命闘争中の活躍の乏しさからすると、とても釣り合わない。最強と恐れられた竜狩り騎士隊を壊滅させたのも、愚帝の籠る堅固なる城を打ち破ったのも、勇猛なる同志ヤサンである。クロードは、と言えば、いつも同志ヤサンの陰に隠れて野良犬のように残り物を漁っていただけである。そしてその分を弁えず竜殺しを実しやかに名乗り、英雄を気取った。いずれにせよ、四つ腕とは、人を騙すことに長けたが故の二つ名であったことは間違いない。

 クロードは帝国の腐敗を憂い、革命に参加したとされるが、最後には偉大なる同志ヤサンを裏切り、共和国最大の敵となった。思えばクロードは初めから貴族どもの傍らに立ち、人民から搾り取った甘い汁を吸う側にいたのだ。それは間者として革命に加わり、我らを欺いてきた。その本性は四つ腕などではなく、四つ足の畜生、四つ足のクロードであった。そしてこの帝国の犬たる四つ足は今も暗躍し、巧みな詐術で人心を惑わし、反革命分子を増やしている。今こそ我らは結束をより強固なものとし、卑劣なる反革命分子を断固として処断しなければならない。自由と平等の戦士たる共和国人民は、悪魔の甘言に耳を貸してはならないし、疑わしき危険分子を速やかなる正義の告発によって炙り出し、社会の浄化を進めなければならない。さもなくば、明日にもあなたの家族が卑劣な畜生の餌食となるかもしれないのだ。共に戦おう、より良い世界の為に。


-- 共和国機関紙『革命』第225号『正義の告発をせよ』


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