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第37話:劣等賢者は自己紹介する

 ◇


 ようやくSクラスの教室へ着いた。

 既に到着した生徒たちが静かに自分の席に座っている。


「そういえば席順ってどうなってるんだっけ」


「合格順位順みたいですよ。ほら、黒板に書いてあります」


「なるほど……ということは、俺は窓際の一番端の席か」


 なんともまぁ席順まで成績で付けるなんて露骨なことするよな。

 首席合格者には一番の特等席が与えられ、最下位は教卓の前か。合理的と言えば合理的ではあるけど、なんか目立っちゃいそうなんだよなぁ。


「よっと」


 机と椅子は異世界と言っても普通の木製。

 可もなく不可もない。日本の学校と同じような感じだ。


 俺たちが席に着いたタイミングで、先生が入ってきた。

 既に合格発表の前に一度話したことがあるのだが、俺以外のクラスメイトは初めて目にすることになる担任講師。


「初めまして。あなたたちの担任を任されたリージア・アルデイアよ。魔法理論を専門に研究しているわ。……私のことを語ってもつまらないし、今日のところは皆さんに自己紹介をしてもらうから、順番にお願いね。じゃあまずは、アレン・エルネストから」


 え、いきなり俺かよ。

 何を話せばいいんだ……?


「名前と出身地、それと今までの人生で頑張ったこと、将来の夢とか。なんでも好きなことを言ってくれればいいわ」


 はぁ。なんか気が進まないが、そのくらいならパッと言えそうだ。


「アレン・エルネスト。出身は王国の辺境にあるエルネスト領だ。今までの人生で頑張ったこと……。うーん、強いて言えば、『魔法の粉』の使い方を体系的にまとめて住民に理解してもらって、領地を王国最大の食糧生産地に発展させたことかな? 将来の夢は——世界最強の魔法士になることだ」


 よし、まあこんな感じだろう。

 思っていることと今までやったことを言うだけだから簡単だな。


 ってあれ……?

 なんかみんながポカーンとしてるんだけど?


「そんな……まさかあの噂は本当だったのか? 錬金術が復活したっていう——」


「こんなの学生レベルを超えているわ……」


「世界最強の魔法士——イリス様の御子息って噂は本当なのか!?」


 無難に収めたつもりだったんのに、なぜか余計に注目されてる気がするんですけど!?


「えーと、もういいんだよな?」


「結構よ。では次の人」


 ふう。

 やっぱり人前で話すと緊張するもんだな。

 この手の面倒臭い行事は後になればなるほど面倒臭い。最初にパパッと終わらせると余裕を持って観察できる。


「ようやく私の番ね。ああ、長かったわ……。私は、皆知っての通り、フィア・エルミーラよ。エルミーラは皆知っての大都会。だから貴族の娘である私はお金はたくさん使えるんだけど……そういうのってつまらないじゃない? 私は出資を募って金貨1000枚級のイベントを開催したの。それが頑張ったことね。ちなみに将来の夢は……世界征服よ!」


 一人につき金貨一枚の参加費として、千人規模くらいのイベントか。

 見た目に似合わずなかなかすごいことをやってたんだな。


「皆さん初めまして。私はアリス・ルグミーヌといいます。先のお二人みたいに凄い実績とかはないんですけど、村にあった美術魔法サークルのリーダーをしていました。美術魔法というのは魔法でアートを表現するもので、コンテストに向けてみんな熱心に練習していました。でも、些細な方針の違いで喧嘩にバラバラになってしまいそうなことがあって……。このままじゃいけないと忌憚のない意見をぶつける場を用意して、思ったことを全部吐き出してもらったら上手く方針がまとまり、コンテストでは優勝することができました。これが頑張ったこと……かもしれないです。将来の夢はお嫁さんです」


 ……と、こんな感じで次々進んでいく。


 にしても不思議なもんで、全然規模が違うはずなんだがフィアよりアリスの方が凄いことやった感が出てるのは興味深いな。


 生まれてからたったの十五年で頑張ったことが大したことある者などほとんどいない。

 なんのために頑張ったことなんて言わせてるのか全くもって不明なんだが……これはリージア先生の趣味だろうか。


 一時間ほどで全員の自己紹介が終了した。


「では、今日のところはこの辺で解散よ。他のクラスはまだやってると思うけど、みんなは静かに帰ること。SクラスのSはサイレントのSだからね」


 え、Sクラスの意味ってそういうことだったの……?


 

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