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第11話:劣等賢者は情けをかける

 扉を開けて外へ出ると、門の前でダサい連中が勢揃いしていた。


「やっと出てきやがったか! この前はよくも俺様のかわいい子分を虐めてくれたよなぁ」


 ——と言いながら、最前列のパンチパーマの男が凄んできた。


 後ろには、左足に包帯を巻いたリーゼントの男が隠れている。軽く蹴っただけのつもりだったのだが、骨が折れてしまっていたらしい。どんだけ脆いんだ……?


「怖くて何も言えねえか! そりゃそうだよな! 俺はこの領地の裏組織の頭になる男だ——だが、今さら後悔してももう遅い!」


「べつに怖がってるわけじゃないんだが……それで、用件はなんなんだ? 俺たちは忙しいんだが」


「いい度胸してんじゃねえか……あまり舐め腐ってると死ぬぜ。おい、お前ら準備しろ——!」


 パンチパーマの掛け声で、三十人ほどの男女が一斉に武器をとった。

 剣や斧、槍、弓など、武器のバリエーションは様々。


「はぁ。じゃあミーナ、頼んだぞ」


「そ、そんな……一人で大人の男の人を相手にするなんて……」


「練習通りやれば大丈夫だ。むしろ手加減しないとちょっとさすがにアイツらが気の毒だから注意してくれ」


 まあ、念には念を入れて——

 俺は、連中たちにある魔法をかけておいた。


 その直後、攻撃が始まる。


「砲火ァ!」


 近接武器を持った者が一斉にミーナを襲い、遠距離からも矢や魔法攻撃が降り注いだ。


「まずは、守りを固めて……」


 ミーナの正面に見えない魔法の壁が現れ、全ての攻撃を弾いていく。

 襲ってきた連中は壁に激突し、悲鳴をあげていた。


「数が多い場合は、攻撃を拡散させて……」


 連中の進軍が止まり、混乱している中、ミーナから無数の火球が飛んでいく。


「な、なんだこれは!」


「こっちは攻撃できねえってのになんで向こうからは来るんだよ!?」


「や、やめろおおおお!!!!」


 連中たちの声は虚しく、次々と着弾していく。


「「「「「あああああああああ!!!!」」」」」


 一瞬で前衛の連中が無力化した。


「ええ!? ど、どうしよう……まさかこんな簡単に倒れるなんて……死んでないわよね……?」


「安心しろ。念のため死なないよう魔法をかけておいた。肉体へのダメージを精神に転化するっていうもんで、死ぬほどの苦痛はあると思うが実際に死ぬことはない」


「アレンはそんなこともできるの!? すごいわ!」


「これはそんなに難しい魔法じゃない。それよりも、凄いじゃないか。連中が逃げていくぞ」


 ミーナの強力な魔法を恐れたマシな頭の連中は、早々と逃げ出していた。

 残ったのは、この前の三人衆とパンチパーマの男のみ。


「おのれ……おのれ……おのれええええ!」


 パンチパーマの男が拳を振り上げてミーナに殴りかかる——

 が、それが届くことはない。


「自分よりも力が強い攻撃は、受け流して相手の力を利用して……」


 ズデン!


「ぐあああああ……!」


 俺が教えたのは、なにも魔法だけじゃない。基本的な体術を備えておけば魔力を温存できるし、使い方によっては魔法よりも便利だったりするからな。


「さて——まだやるか?」


「「「「ひ、ひいいい!」」」」


 残った四人はガクガクと震えていた。


「本当にすまなかった……! 何でもする! 許してくれ!」


「お前たちに酷い目に遭わされた人たちはみんなそう言ったんじゃないのか? ずいぶんと都合が良いんだな」


「それは、その……」


「お前ら四人、全員で誠意というものを見せてみろ。そのスカスカの頭でも思いつくやつが一つだけあるだろ」


「くっ……」


 人間にとって最大の屈辱。

 それは——


「申し訳ございませんでした! 二度と獣人に悪さはしない! この通りだっ!」


 額を地につけての謝罪——土下座だ。


「獣人だけじゃない。誰にも悪さをするな。世のため人のためになることに励め」


 こうして、四人を開放した。

 その後、領民を困らせていたあの連中の一派が悪さをすることはなくなった。

 とんでもなく強い獣人がいるという噂が流れ、獣人虐めも激減したと聞いている。

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