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一話 天使がくる

俺は今年で27歳の屑デブニートである。名前は武藤太むとうふとし、身長171cm、体重は100kg前後だ。

俺はニートだが、そこらのニートとは違って、今は親の脛はかじっていない。一人暮らしニートである。一年前までは実家ニートだったわけだが。

俺は実家でニートをしていたとき、ずっと親からの圧をひしひしと感じており、何かして金を稼がないといけないと感じていた。そこで今流行りの小学生人気職業ランキングナンバーワンのyoutuberになることにしたんだ。

何をしようかと、とりあえず、得意の早食いで米5合早食い最速動画を投稿する。デブが、米が炊けたと同時に素手で「アチイ、アチイ」と言いながら必死な形相で米を貪る様が若者にウケたらしい。海外にもわたり俺の動画は五千万再生にもなり、一躍時の人となった。しかし、その後の俺の動画は全くダメで、一発屋で終わり、youtuberは辞めることとなる。

 俺の奇跡の動画で得た広告収入も持ってあと一年だろう。

また何か始めないと。今さら実家に帰れるわけない。

でも、頑張れないからニートなんだよ!


バリボリバリボリ、バリボリバリボリ

左手でポテチを食べながら、今日もパソコンでアニメを見あさる。ふと、壁に取り付けた時計を見る。

あ~、もう朝の四時か…。確認した途端、とてつもない眠気が襲ってきた。

うわ~、今日も何もしてない。絶対明日から何かするぞ~。

さて、今日はもう寝るか。

歯磨きとトイレをすまして、ベッドに横になる。

「よっこらしょういちっと」

ズゴオオオオ、ズゴオオオオ

俺は深い眠りに落ちた。



これは夢か…。俺は高校生となっており、モモちゃんと下校していた。モモちゃんは二次元の俺の押しキャラである。俺は全盛期の高校時代から一向に彼女がおらず、モモちゃんをひたすら押すことで飢えを凌いでいた。まあ、彼女がいないのは、

仕事してないし、引きこもりニートだからしかたなくはあるが…。

 俺とモモちゃんのたわいもない会話は続く。俺はどうやらモモちゃんの彼氏という設定らしい。

 やっぱりかわいいなあ~。これ、夢だよな。夢なら襲っても大丈夫だよな。そんな考えが浮かんでいたその時、

 フンヌウウ、フンヌ、ヌオオオオオオオ!!!

どこからともなく雄たけびが聞こえる。うるせえなあ。今いいとこなんだよ。

ヌウウウウウウ!!オオオオオオオ!!

全く止む気配がない。それどころかますます雄たけびは大きくなるばかりである。どこから聞こえるんだ。これは俺の夢だろ?鳴りやめよ。

フグウウウウウ、オリャアアアアアア!!!

雄たけびはピタリと止んだ。数秒間シーンと静まり返った後、淡い光がこの場全体を包む。そして光はだんだん強くなり、何も見えなくなった。

まぶしい。何も見えねえ。

突然光は消える。ゆっくりと目を開けると、ぼやけて鮮明には見えないが目の前に白っぽい誰かが立っていた。目が慣れてくるとしっかり見える。目の前には顔を真っ赤にしてフラフラとやつれている子供がいた。頭には黄色いリング状の物体が浮遊しており、背中には立派な翼がある白い布を羽織った子供が見える。見るからに天使だ。

「ハァ、ハァ。やっと成功した。」

目の前の天使がなんか言っている。俺は周りを見渡し驚く。

「えっ、ここ俺ん家のアパートじゃん」

と思わず声にだす。俺はどうやらアパートのベランダの外側でふわふわと浮かんでいるようだ。

「うわっ、すっげ!」

興奮しながら空中を飛び回る。聞いたことあるぞ。これが明晰夢ってやつか。体がめちゃめちゃ軽い。フォオオオオ。

 上空200mほどまで飛び、景色を見渡す。それにしても鮮明だなぁ。

「ちょっと、ちょっと待って。聞いて-!」

下から声が聞こえる。さっきの天使だ。フラフラと俺のところまで上ってくる。

「誰、お前?」

天使は、少し息を整えると答える。

「フフフ、私は天使のミカ。よろしく。太君、さっき君を呼び起こしたのは私。君には私と協力して悪魔退治をしてほしいんだ。もちろんただでとは言わない。私には人の人生のシナリオを書き換える能力がある。君が頑張るたびに私は君の願いを叶えてやろう。どうだ、引き受けてくれるよね?」

「は?」

 俺の困惑した表情から察したのか、天使は続ける。

「そうか、君はまだ何が何だかわからないよね。まずここは分かると思うけど、ここは現実の世界。そこのアパートの二階が君の家だ。私がたまたま通りかかったらすっごい神通力を持った君を見つけて今やっとこさ起こしたところ」

「ほーん」

「まだ夢だと勘違いしてそうだげど…。とにかく、君の神通力はとてつもなく高い。ホントにすごいんだ。ホントのホントに。君のパートナーになれたら私は最強だよ、ホントに。フフフ。うーんと、私達の仕事はここでの悪魔退治なんだけど、私達はただ見えるだけの存在。一切戦えない。だから一部の優秀な人間達に手伝ってもらうんだ。この仕事をする人達をドリーマーって言って、立派な仕事として成り立ってる。君以外に数十人いるよ。」

天使のだらだらと長い話が続く。よくしゃべるガキだ。ほとんど話は聞いてなかったけど、俺には特別な力があるのか。それは悪い気はしない。でも、ここは現実か、道理で景色がクリアな訳だ。ふーん。

「そういえば、今の俺って魂だけみたいなもんじゃん。物体に触れるようにできたりしねえの?さっき、アパートの壁に手がすり抜けたんだわ」

「えっ、触れるはずだけど。私、ドリーマーで地面に歩いてる人何人も見てるよ。念じたら触れるんじゃない?」

「ほーん、とりあえず試すわ」

 俺は急いで下降する。怖えー。ジェットコースター見てえだ。若干このまま落下して死ぬんじゃないかという考えが脳裏によぎったが大丈夫だった。地面付近で減速して、そっと足を地面につけようとする。うん?

「やっぱ、着かねえわ。透けて沈む」

「強く念じてみて。絶対そんなはずないよ」

俺は目をつむりひたすら念じる。

足よ着け、足よ着け、足よ着け。

先ほどまで沈んでいた足が地面から反発してゆっくりと上昇してきて、地面丁度で設置する。

「おお、できたわ」

「ほらねー、言ったでしょ」

地面を走り急いでアパートの壁に触れる。ペタッ。よし、いける。

俺が喜びをかみしめていると、突然アパートから男が一人でてきた。うわっと俺に緊張感が走る。俺は今パンイチだ。どうやら、魂は寝たままの姿で出てくるらしい。

「おい!おい!今俺周りから見えてないよな?」

俺はすぐさまアパートと道路の間にある植え込みにダイブし、小声で天使に聞く。

「ハハハハ、周りからは見えないよ。大丈夫、大丈夫」

笑いごとじゃねえんだよ。俺をバカにしたように笑った天使に説教を垂れようと思ったが、さっきまで考えていたことを思い出し、怒りは一瞬で消え去った。

その後アパートから出てきた男は車に乗りどこかに消え去る。

「フフ、フフ、大丈夫だよな、ちょっとどっか行ってくるわ。すぐ戻る」

 ニヤニヤとにやける俺を見て天使は何か危ないと感づく。

「あー、何か企んでるー、絶対私もついていく」

まあ、いいや。急いでまた上空に飛び、辺りを物色する。今の空の感じといい、今は昼時。誰か散歩してる子はいるだろう。フフフフ。

「何するつもりー?」

天使が後ろからついてきて、何か言ってるが無視。

「おおおお!かわいい子発見!」

 急いで急降下。俺は音を立てずにさっと着地し、散歩している女の前に立つ。そして、ゆっくり手を広げる。すると何も気づかず女は俺に飛び込んで来るのだ。俺は女を優しく抱き寄せる。この感触は忘れないでおこう。

 スーハースーハースーハースーハー

 匂いを嗅ごうとしたが、ダメだった。匂いは何も感じないらしい。まあ、いいや。女は訳もわからず、慌てている。ああ、かわいい。もう少し、もう少し、このまま。

俺は目をつむり、ただじっとぬくもりを確かめる。すると、

「うわああああ、何してるんだ。離せー!離せー!」

と突然喚き声がした。この女、こんなブサイクな声するのかと面食らって目を見開くと、俺の周りで天使が必死な顔であたふたと飛んでいた。

「離せ、離せ。お前はもう首だああああ!!」

 さすがに天使がかわいそうに見えて、俺は女を離して、ちらりと女の顔を窺う。うぬぬ、かわいい。最後に胸を二揉みして開放してやった。女は周りをキョロキョロしながら、走りだしていった。あの女、もう当分一人で散歩できねえだろうなという考えが浮かび、思わず笑みがこぼれる。

「おい!太!いいか、よく聞け。ここでの君の罪は全てパートナーの私の責任になるんだ。私の徳はさっきごっそり無くなって、神からの評価がだだ下がりだぞ。もう君は強制でドリーマーになってもらう。もう絶対にあんな真似するなよ」

 天使は俺をかなり睨みつけて怒鳴ってきた。めちゃくちゃキレてるのが分かる。見た目は小学校低学年ほどだが、その天使の覇気にびびっていた。

「わかった、わかった。もうしねえよ。落ち着け。俺もこんなことになってよくわかってねえんだ」

「おい、黙ってろ。今悪魔を探してる」

天使は怒った口調で、俺の言葉を遮る。両手の人差し指をこめかみに当て、目をつむり、うずくまる。

「うーーーーん。あっ、いたいた。いくよ、付いて来て」

と天使は言い、飛び立つ。俺も後を追う。

 俺はひたすら黙って天使の後ろを飛ぶ。飛び立ってから数分たっただろうか、すると、天使が俺の横に並び、

「いいかい、もうすぐ悪魔のところに着くから。今は夜じゃないし、下級悪魔だから心配しなくて大丈夫。ちゃちゃっと退治してきてよ」

と言う。俺は天使の顔を見てもう怒っていない様で少しホッとしたのも束の間、天使の言葉に無意識に自分の呼吸が粗くなっているのに気づく。ホントに悪魔とかいんのかよ。得体のしれない者への恐怖が段々自身を蝕んでいった。


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