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『SSRヒロイン確定ガチャチケット』回したらおっさんが出てきたからやむなく二人で無双してみる

1話 SSRヒロイン確定ガチャチケット拾いました


 この世に生まれ、最初の産声を上げたその瞬間、赤子だった俺はこう叫んだのだろう。オギャァ(モテたい)と。それは俺という存在そのものの魂の叫びだった。


 いったい何の因果で、自分がこの世界に生まれ落ちたのかはわからない。だが、確実に俺はこう言える。


 モテたい……女の子に、モテたい……。

 ハーレムものの物語みたいに、色んな個性を持ったやさしい女の子に囲まれて、毎日美少女たちの甲高い声を聞いて過ごしたい……。


 もうとにかくモテたい、この際贅沢は言わないからただモテたい、それだけでいい。


 俺の魂の叫び、横文字にしてソウルシャウトは、強烈な情念を持つがゆえに呪いとなって、俺の在り方を――よりにもよってモテない方向に縛り付けていた……。



 ●



「嘘だろ……しばらくinしない間に期限切れになってるとか……ああやべー、やる気なくすわー……」


 全ての歯車はその時にようやく動き出した。

 ある日、俺は町で主人公(・・・)の姿を見つけて、彼がショップの軒先に何かを捨て去るのを見た。


 何げなしに俺はそれを拾った。

 主人公(ザ・ヒーロー)はこの世界の主役、俺たちモブから見ればとんでもないレアアイテムをときに捨てることもある。


 in率の低いやる気のない主人公は、それはもうだるそうに町の外へと旅立っていった。


 実はこの世界の主人公は周期的に新しいプレイヤーに変わるのだが、下手に刺激したり関わらない方が良いと決まっている。

 彼らは彼らの悪を倒すのが目的で、正義の存在ではあるがけして善人ではないからだ。


「……はっ、はうあぁっっ?!!」


 主人公の遺棄物、その表側を見るなり俺は驚愕した。モテたいと願い続けた男は、とてもモテるとは言い難い素っ頓狂な叫びを上げていた。


 俺が拾ったのは何気ない紙切れだ。しかしただの紙じゃない、これは、あのガチャ券と呼ばれるものだ……。


 手に入れた物を二度見して、俺は飛び込むように路地裏に逃げた。こんなものを手に入れたと他に知れたら大変だった。

 最悪奪い合いになって、殺し合いの事件に発展する……!


「す、すすすす、す、すぱ、すぱーれあ……ひ、ひひひ、ヒロイン……ッッ、まっ、マジデーッッ?!!」


 ヒロイン、それは主人公にだけ許される特別なパートナー。

 SSR、世界を救い得る主人公の仲間の一角、圧倒的に優遇されたスキルとステータス、主役に相応しい魅力的な容姿を併せ持った英雄たちの称号だ。


 そのガチャ券には外世界語で、こう書いてあったんだ……。

 【SSRヒロイン確定ガチャチケット(期限切れ)】と。


「……期限、切れ?」


 ハーレムじゃなくてもいい。ただ1人のヒロインが俺と生涯を共にしてくれればそれでいい。

 しかもSSRヒロイン、これでもう苦労することもない、一時はそう思ったのに!!


「嘘だろ……期限切れになってるとか……ああやべー、生きる気なくすわー……」


 俺はよりにもよって誰かさんと似たようなことを口走っていた。

 SSRヒロインという希望が砕け散り、俺は俺がモブであることに絶望した。


「あ。でもこれ、ショップのお姉さんと……」


 けど思い出した、ショップのお姉さんはSSRの英雄並みにかわいいってことに。

 主人公がこれを落としたと言って、知り合いになるチャンスじゃないかこれは……。


 いける。ショップの人はガチャキャラじゃないこっちの世界の人だし、いける、いけるはずだ……!

 ガチャ券拾うなんてそれだけでラッキーだ、期限切れだけど、今の俺はついている、いける!


 今思えば支離滅裂な根拠だった。だけどその時ばかりはいけるような気がして、俺は主人公たち御用達のショップに飛び込んでいった。



 ●



「いらっしゃいませ英雄様、どうぞごゆっく……なんだ、こっちの人じゃん」

「あ、ああああ、あのっ、そのっ、こ、これ……これれれ……っ」


 繰り返す。俺の魂に刻まれた願いは、呪いだ。

 モテたいという強い想いが、ある致命的な欠陥を俺に刻みつけた。


「んーー? あ、ガチャ券」

「んーっ、んーっんーーっっ!」


 ダメだ、何やってるんだ俺は、これじゃ公共語が話せない異民族キャラクターみたいじゃないか……。


 ショップのお姉さんは長くて鮮やかな緑の髪を持っている。胸もかなり大きくて、営業スマイルが印象的な明るい人だ。


「わーっ、これSSRチケットじゃん! しかもヒロイン確定っ?! あ、でも期限切れてる……」

「オ、オレ、ヒロッタ……ソレ……」


 ショップのお姉さんみたいな例外をのぞいて、こっちの人(・・・・・)の髪の毛は基本的に地味だ。

 ブロンドであっても明るさがなくて、レアキャラや主人公を引き立てるようにできている。


「わざわざ届けてくれたんだ?」

「ンーッッ! ソ、ソレ、アラソイ、タネ……キケン……」


「そうだね……。前に似たような暴動あったし、ありがとっ助かったよ~。あ、私ナヴィル、キミの名前は?」

「ジェ……ジェジェ……ッ」


「ジェジェさん?」

「ヌーーッッ!! ジェ……ジェイ……」


 町の自警団のJ、それが俺の名前だ。

 ナヴィルさんのように固有の名前を持つ者が羨ましかった。それよりただモテたかった。


「ふーん……なんかキミ、他の人たちと違うね。まるで……魂があるみたい」

「た、たましい……?」


「そう魂。これ私の考え方だけど、この世界には魂がある人と、ない人がいる。キミはある方、ふふふっ、あと面白い方?」

「うっ、ぁっ、ぁっ……オ、オレ、オンナノコ、ニ、ガテ……」


「やっぱり♪ それだけ個性たっぷりで、ガチャキャラ化してないって逆に珍しいかも。そうだ、ちょっと待ってねっ! もしかしたら……」


 するとナヴィルさんが店の奥に消えた。

 ガッチャンガッチャンとキャッシャーを鳴らすような騒がしい音が何度も響き渡り、それからさらにしばらくすると戻ってきた。


「やったーっ!」


 ご機嫌の明るい笑顔と、キラキラになったガチャチケットと一緒に。


 ちなみにガチャキャラ化というのは、俺たちモブが何かの拍子に目立ったり活躍するとまれに起きる、何ともありがた迷惑な現象だ。

 端的に言えば世界から一度消滅させられて、英雄の一人として主人公に付き従うはめになる。


「実はこのガチャ券ね、配布期間が短すぎて、貰ってない人に補填されることになったやつなの。ということで、はいっ」

「……えっ」


 そのガチャ券を俺に差し出してナヴィルさんが笑う。

 胸の強調された商人系の衣装と一緒にだ。しばらくの間、彼女の意図が分からなかった。


「あげる」

「…………えッッ?!」


「あげるってば。どうせあいつ、AP使い切ったらしばらくinしないもん、キミが使ってもバレないって♪」

「えっ、えっ……でも、いいのかな……嬉しいけど、でも……」


「だって私ヒロインなんていらないし、いても困るじゃん?」

「あっ、うんっ、女性にヒロインは、いらないね……わ、笑える、アハハハ……」


「どうぞ」

「ありがとう……ああああっ本当だ、期限切れ、してない……あああああっ!」


 外世界語でこう言うらしい。ついに我が世の春が来た!

 俺は期限切れしていないSSRヒロイン確定ガチャチケットを受け取って、ぎこちない笑顔をナヴィルさんに向ける。


 それから自分でもおずおずと、ひかえめに、それを差し出し直した……。


「使う? 使うに決まってるよねっ、どんな子が出るかなぁーっ、ジェイくんの場合ダブり0だから余計期待が膨らむよね! それじゃいくよっ!」

「ぁっ、ぅっ、ぁっ……お、おね……が……ます……」


 俺の時代が来た。もうこの際どんな子でもかまわない。


 いじめるのが大好きなサディストでも、愛の濃すぎるヤンデレでも、ちょっと痛々しくて何考えてるかわかんないゴスキャラでも、何でも、何でもいいから俺にもヒロインが欲しい!! SSRヒロイン、来いッッ!!


 生まれて初めて見る召喚エフェクトはほどよくチープで、それでいて神秘的だった。

 ああこれがSSRの輝き、虹色で埋め尽くされた光の中に、シルエットが浮かび上がる。


 おお、思ったより大柄だ……。

 身長170cmの俺より頭1つ半くらい大きい……?

 そうか、巨女系ヒロインか……でもこれはこれで良いかもしれない。自警団のJが言うのも変だけど、何だか守ってくれそうで……。


 でもあれ、おかしいな……あれ?

 腕、太くね? 腕っていうか足も、胸囲も、髪型もなんか短髪だし、もしかしなくともこれって……全身筋肉??


 そのとき虹色の輝きが飽和した。

 聞いたことがある、この後ついにシルエットに包まれた本当の姿が現れるのだ。


 この際ちょっとくらいガチマッチョで、タンパク質が大好きな巨大お姉さんでもかまわない。

 俺だけのヒロイン、俺だけのヒロインになってくれるなら何だって、何だって俺はかまわない! ありがとう神様っ、ナヴィルさん!!



 ●



 ●



 ●



 それはヒロインと呼ぶにはあまりに雄々しく、そして(おお)きかった……。


『我が名はヴァリハルト……永久を流浪する鋼である……。今後ともよろしく、英雄殿……』


 というか、もうメチャクチャ頭が混乱してて上手く言えないんだけど、ただありのままの事実を言うと、俺のヒロインは、ヒロインじゃなかった……。だって声とかすげぇ野太いし……。


 あのね……SSRヒロイン確定ガチャを回したら、なんか……おっさんが(・・・・・)、出てきた……。


「あれ……っ? え、あれ……??」

『どうした英雄殿、何を当惑されているか? さあ共に荒野を歩もう……』

「ごめん、私知らないっ。これきっとバグだよバグっ、それじゃまたねージェイくん、またよろしくっ!」


 おっさんと俺はショップから追い出されていた。

 店の軒先でこんなデカいヒロイン??を連れて、呆然と立ち尽くしていたら営業妨害だろうか……。


 ガチャ券の残骸に目を落とす。

 何度見てもそこには、SSRヒロイン確定ガチャチケットと書かれていた……。


「ど……どうしたのだ英雄殿……ま、まさか、またダブりであるか……? すまんこれだけは先に言わせて、言わせて下さいっ、餌行きは嫌でござるぅぅー!!」

「ううん、ダブってない……」


 おっさん(ヴァリハルト)と、ガチャ券を交互に見る。

 何度も、何度も、何度も何度も何度も何度もモテたかった願いに苦悶しながら……。


「そうであるかっ、ああよかったっ! 最近の主人公はろくなやつがいなくてなっ、俺を無能キャラ扱いするのだ! それで英雄殿、他にその……強そうな仲間はいるで、あるか……?」


 おっさんはとても喜んだ。安堵したらしい。

 けれど他の仲間を気にしてまた顔色を暗くした。まるで自分を見てるかのようだ……。


「おっさんだけ……おっさん、だけ、だよ……おっさんだけ………………」

「よしっっ!! ではなく、おおそうであるかっ、俺は物理に定評のあるヴァリハルト、共に行こう、荒野の果てまで! というかその、何だ? なんでそんなに、暗いのであるか……?」


 何でもなにもない。俺が欲しかったのは、ヴァリハルトのおっさんじゃなかった。ただそれだけ……。


 出てきたのか女の子ならただのRキャラでも良かった……でも現実は、SSRおっさん(挙動不審気味)……。


「これ……見て。見ればわかるから……」

「うむっ、俺が出てきたガチャ券であるな。はははっ、自分のヘソの尾を見せられたような気分にな――ぅ……ぅぅ、む……ぅむぅぅ……」


 おっさんと俺は一緒に頭を抱えていた。

 絶対に出てきちゃいけないところから、ヴァリハルトのおっさんは現れてしまったんだ……。


「おっさんって、ヒロイン枠なの……?」

「こんなヒロインがいるわけなかろうっ、おおおおぞましいことを言うなっ!?」


「じゃあやっぱりこれ、バグだよね……」

「バグである……」


 おっさんの顔色が絶望に染まったのがわかった。

 何がそんなに深刻なのかはわからない。わかるのは、おっさんより俺の事情の方が深刻だってことだけ。


「どうしよう……」

「ど、どうしようと言われてもっ、今さらどうにもならないでござる! 拾った以上はちゃんと育てるのが飼い主の役目であろうっ!?」


「でも、ヒロインじゃないし……」

「でもSSRでござるぞ?! 絶対に役に立つでござるっ、ラッキーであるぞ、ええっと……名前をうかがってもよろしいか?」


「J……俺の名前はジェイ・ジゲーダ」

「ジェイ殿……これは一生の頼みでござる! え、餌だけは……餌行きだけは許してくれっ! もうっ、もうSSRなのにRキャラの経験値(えさ)にされる人生は嫌でござるぅぅー!!」


 それが俺、ジェイとヴァリハルトのおっさんの出会いだった……。

 SSRヒロイン確定ガチャ回したら、おっさんが出てきました……。



 ・


 ・


 ・



2話 ヒロインとのイチャラブ生活の夢は脆く崩れ去り、おっさん飼育してます……


 あの後ナヴィルさんのところに行って、返品しようとしたらこう言われた。


「ジェイくん、ガチャ回したらちゃんと育てるって約束したでしょ!」

「そ、そそそ、そんな約束っ、してないよっ!」


「とーにーかーくっ、そんなでっかいの返品されても困るからっ、ちゃんと自分で育てて! ほらこれって、イベントこなしたらかわいい娘が出てくるフラグだよっ。ぐはっ、俺はもうダメだ……ジェイ殿のことは任せたぞ娘よ~……みたいに! じゃそういうことで、ありがとうございました~!」


 返品NGだって。

 ヴァリハルトのおっさんは、でっかいの返品という言葉にトラウマをまた刺激されたのか、すげぇ暗い顔をしてた。


 しょうがないから2m近いおっさんを家に連れ帰って、しょうがないからヒロインじゃないけど、なんか一緒に生活することになってた……。



 ●



 休暇は今日でおわり、昼ご飯はチャーハンにした。

 食事代はいつもの3倍強、おっさんは性格こそ謙虚だけどとんでもない大食らいだ……。


「美味い美味いっ、美味いでござるジェイ殿! はぁぁぁ……俺、こんなにやさしくされたの初めてでござる……。これまでの主人公(ザ・ヒーロー)は、俺に宿代すら出してくれないで、馬小屋に寝かせるようなやつらばっかりだったでござるっ!」


 あと、飯食わせただけで超懐かれた……。

 こんなでっかいの飼ってたら、ヒロインなんて夢のまた夢だ……ああ、返品したい……。


「なあ……おっさん餌にしたら、俺も強くなれるかな……」

「ひっひぃっ?! 餌は嫌でござるっ餌だけはご勘弁下されジェイ殿ぉぉっっ?!!」


 もうどうしたらいいのかわからない……。

 顔面を飯粒まみれにされた俺は、顔の掃除もしないで自分のチャーハンをつつく。


「だってSSRって、経験値いっぱいなんだろ……それがあれば俺もモテるかなって……」

「お……お慈悲をくれでござる! それだけはっ、それだけは許して欲しいでござるっ! 俺も普通に戦って活躍したいでござる!」


 おっさんの願いはそこらしかった。

 育成の餌にされたくない。ただキャラとして生きたい。

 その切なる願いは、ただモテたいっていう俺の願いにちょっと似ていた。


「そう……じゃあ明日、自警団の連中におっさん紹介するから……」

「おおっ、フリークエストでござるな! 黎明期だった頃はまだ出番があって、よく周回したでござる!」


「いや、ただの仕事。……言ってなかったけど、俺ただのNPC(モブ)だから。主人公じゃない」

「わはははっ、ジェイ殿は冗談が上手いでござるなぁっ! こんなに饒舌に会話ができるNPCなんていないでござるよっ。わかったでござる、これはこういう設定の長期ミッションなのでござるなぁ~」


 それにしても、このおっさん本当に強いんだろうか……。

 身体は凄いけど、Rキャラにまで餌にされてきたって、よっぽど弱いか、たちの悪いパッシブスキルを持っているんじゃないだろうか……。


「ジェイ殿」

「なに……」


 マッチョが犬みたいな笑顔を浮かべていた。

 分厚い唇の横に、ご飯つぶをひっつけて。


「おかわりでござる!」

「まだ食うのかよ……じゃあこれ食べなよ、その間に新しく作る」


「ジェイ殿……」

「今度はなに……」


「ジェイ殿は本当にっ、本当にっやさしいでござるなぁ……っ! このヴァリハルト決めたでござる、もうジェイ殿の犬にでも何でもなるでござる! 餌以外なら何にでも!」


 SSRおっさんヴァリハルトは、チャーハン4人前で落ちるチョロインだった……。

 どうしよう。明日、自警団の連中にコレどう説明しよう……。


 本人はフリークエストだと思い込んでいるけど、お前みたいな自警団がいるか! って言われるに決まってる……。



 ●



「嘘を吐けッ、お前みたいな自警団がいるかッ!」


 翌日の朝、俺はヴァリハルトのおっさんを連れて職場に行った。

 自警団の駐屯地でみんなにおっさんを紹介して、彼をここで働かせてやってくれと団長に頭を下げた。


 おっさんは見事な体格だ。これだけの身体があれば傭兵団や正規軍がほおっておかない。

 なので団長は期待の大型新人を喜ぶ反面、どこかの反社会勢力の手先なのではないかと疑った。


 結局そこは俺がおっさんの身元保証を渋々したことで、どうにかなったのだけど。

 それも仕方ない。俺たち自警団の仕事は突発的な犯罪から市民を守ることで、外壁の向こうのモンスター討伐には消極的だった。


「何だと……貴様、もう一度同じことを言ってみろ。この俺のどこが(・・・)、Rキャラ以下のハッタリ筋肉ダルマだとぉっ?!」

「んなこと言ってねぇよっ!? テメェみてぇな自警団がいるわけねぇ、って言っただけだろよテメェ!」


 町の巡回を始めてこれで正午前、ヴァリハルトのおっさんは腹が減ったとぐずりだした。

 もう動けないとか、このままでは筋肉が分解されてしまうとか、とにかくしつこいのでファストフードを買うために俺はちょっと目を離した。


「おおっジェイ殿~、悪党を捕まえたでござる」

「テメェその体格で、こんなひょろいにーちゃんに媚びへつらってんのかよ! 笑えるぜヒャハハハッ……ハ、ハ……?」


 俺は両手にほかほかの焼き肉ロール(ロース)を持っていた。

 おっさんの方はその巨大な片手で、見るからに犯罪犯してますって感じのチンピラ野郎の顔面をつかむ。


「俺の前でジェイ殿を愚弄するとは、うぬは命が惜しくないと見える……頼む、地獄の官吏に伝言を伝えてくれ、この先ジェイ殿に害をなす者は、このヴァリハルトが地獄送りにするゆえ……」

「ひっ、止め、ウガァァァァーーッッ?!!」


 おっさんの凄まじい握力がチンピラの顔面を締め付け、片腕だけで相手の全体重を難なく持ち上げて、絞首刑にしようとしていた。

 俺の感想? 人を殺し慣れてる危険な(たたず)まいがおっさんからします。


「おっさん、それ以上やったら、餌行き」

「じぇ、ジェイ殿ぉぉっ、嫌でござるっ、餌行きだけは嫌でござるぅぅーっっ?!」


 超怖いSSRヴァリハルトがトラウマスイッチ1つでただのおっさんに戻った。

 人間死刑台から解放されて、チンピラは顔面と首を抱えてうずくまっている。そこそこ重傷。


「つーか、何やったのこの人?」

「スリでござる。お婆ちゃんからお財布を盗もうとした、生きる価値のないゴミクズだ……やはり殺すべきであろうかジェイ殿」


 ヴァリハルトのおっさんは怒りが高ぶると、ヤクザみたいに目をむく。

 ああ、これがヒロインだったらまだ萌えたかもしれないのに……。何でこんなのがヒロイン確定ガチャから……。


「んなことしたら自警団、クビだっての! というよりそのお婆ちゃんどこだよ?」

「それが不思議なのでござるがなぁ! 何か急ぎの用件があるのか、俺がそこの死に値するクズを捕らえると、すぐに立ち去っていったでござる」

「そうかよ……」


 この(おお)いなるおっさんとチンピラが目の前で揉め事起こしてたら、俺だって尻尾巻いて団の応援呼びに行くわ……。

 恐らくそのお婆ちゃんは、財布より命が惜しいと思ったんだろうな……。


 俺は焼き肉サンドをヴァリハルトのおっさんに手渡して、自分の分にかぶりついた。


「美味いでござるっ、ジェイ殿は心配りの天才でありますな! 脂身の少ない肩ロース、俺の好物でござる!」

「あんだけチャーハン馬鹿喰いしといてよく言うよ……。その財布、婆ちゃん探して返さないとな」


 俺のヒロインはおっさんSSR。豪傑を地で行くその生き様は、自警団なんて枠組みの中じゃ収まらないみたいだった……。


「これにてフリークエスト達成でござるな、ジェイ殿」

「その財布返してから言えよ……」


 おっさんから奪い取って、財布の中をよく確認してみても、身元を確認できる物は入っていない。


 孫とおぼしき5,6歳の少女の写真と、お守りか何かなのか小さな方解石が1つ、後は裕福だと断定できる額が入っているだけだった。



 ・


 ・


 ・



3話 自警団のJはマヌケを追っておっさんと旅立つそうです


 さすがの俺もバカかと思った。いや実際バカなんだろう、バカなんだ、あの主人公(ザ・ヒーロー)とか呼ばれる連中は……。


「ごめん、ちょっとわかんないです。団長、もう1度だけ言って……」

「ヒーローを追ってタブターン山に向かって欲しい。あの山に君臨するドラゴンロードは、この魔剣グラムがなければ傷一つ与えられない」


 昼過ぎ、宿の主人が自警団にある物を届け出た。

 魔剣グラムだ。ザ・ヒーローが泊まった最高級の部屋に置き残されていたらしい。


「嘘だろ……。何で忘れんだよこんな大事なものっ!!」

「それは私が聞きたいくらいだ。ま、というわけでな、君とヴァリハルトの叔父貴(・・・)が適任だと思ったのだ」

「うむ……他ならぬ貴様の頼みだ、力を貸してやらんこともない……。どうする、ジェイ殿」


 おっさんが自警団に来てより、かれこれ一ヶ月が経った。

 で、知らんうちに団長はおっさんと兄弟の杯を交わし、今では指揮系統がグチャグチャの三角構造になっている……。


 俺は団長に弱く、団長は叔父貴(おっさん)に弱く、おっさんは俺に弱い。そういう状態……。


「ありえねーだろ……」

「それがそうでもないでござる。近くにいるとわかるのでござるが、主人公は凡ミスが多いのでござる」

「頼む。ジェイ、君は誠実な人間だ。そして今、君の隣には頼もしい右腕もいる。君たちが適任だ」


 討伐に失敗すれば、タブターン山のドラゴンたちは激おこぷんぷんだ。

 周辺の村や町を襲っておぞましい被害が出ることになる……。不思議なことに、奴ら主人公からはその荒廃が見えないらしい。


「断る。主人公に敵だと認識されたら、俺たちは殺される」

「そのリスクにふさわしい報酬を用意した。ナヴィルさん、例のブツを」


 もう一度言う。俺のモテたいという願いは呪いだ。

 女性の、それも美人で胸が大きくて明るいナヴィルさんの名前が俺を激しくうろたえさせた。


「はいはーい、ジェイくんおひさ~!」

「ア、アウ、アウア……ナナナナ、ナヴィ、ル、サッ……」


 ナヴィルさんが隣の部屋から颯爽と現れて、俺のすぐ目の前に立った。

 ヴァリハルトのおっさん臭に慣れすぎた嗅覚を、甘い香水の匂いが刺激する。


 だけどなぜ、自警団の駐屯地で彼女が待ちかまえていたのだろう……。


「さっき流暢に話してたのジェイくんだよね? わー、マジで女の子だけが苦手なんだね~、あ、それで本題なんだけど、コレ見て」

「は、はうぁっ?! ソ……ソソソ、ソレ、ソレハ、しゅ、しゅぱーっ、れあっ、しゅ、しゅぱーっ?!」


 ナヴィルさんがある物を持っていた。

 忘れもしない、そのキラキラの輝きはSSRヒロイン確定ガチャチケットだ……。


 いたずらっぽいナヴィルさんがガチャ券を鳥に見立てて、つまんだまま空中を縦横無尽に飛行させると、俺はなすすべもなく共にフライトしていた……。


「ま、待つでござる……まさかそれ、ジェイ殿に……」

「欲しい? ねぇジェイくんこれほしー?」

「イルッ、イルイルイルイルイルッッソレイル!」


 それさえあれば、今度こそ俺だけのヒロインと出会える!

 いらないわけがない! ナヴィルさんに向けて俺は首をヘドバンさせた。


「じゃあお願いしてもいいかな、ヒーロー様への魔剣配達、ちゃんとできるよねジェイくん?」

「餌……餌……餌は、餌は嫌でござる……。ジェイ殿……ジェイ殿、我らがつちかってきた友情は……また、いつものように……」


 おっさんが何かブツブツ言ってたけど関係ない。

 俺にはそれが必要だ。女の子とまともに会話もできないこんな俺には、どうしてもそのヒロイン確定ガチャチケットが必要だ。


「やってくれるな、ジェイ?」

「何か餌で釣るみたいで悪いんだけどさ、マジで近隣住民に死傷者が出るレベルだし、お願い、ジェイくんならできるよ」


 断る理由なんてどこにもない。

 俺は頼みの綱のおっさんの背中を叩いて、どうにか社会人らしく依頼を受けた。


「ンーッッ!! ヤ、ヤル、トドケル、イク、マケン、オレトドク……!!」


 自警団のJはマヌケを追っておっさんと旅立つそうだ。



 ●



 元気のないおっさんを引っ張って町を出た。

 おっさんに持たせるとうっかりでさやを抜きかねないし、ロングソードとグラムの二刀流で俺は街道を歩く。


「おっさん? おっさんっ、ヴァリハルトのおっさん!」

「ぁ……おお、ジェイ殿ではござらんか。はぁ……晩ご飯はまだでござるか……」


「しっかりしろよ、何でそんなにテンション下がってんだよ?」

「だって……」


 当然だけど街道にはモンスターが現れる。

 だから城壁で町や畑を囲み、俺たちはその内側で暮らしている。


 で、今はその外側を、やたら目立つ巨漢を連れてほっつき歩いている状態だ。


「おっさん、前にも言ったけど俺はただのモブだ。情けない話だけど、この任務はおっさんが頼り、だからちゃんとしてくれよ」

「な、ならば……1つ聞いてもよろしいかジェイ殿……」


「そりゃいいけど」

「あの……あのでござるな……? さ、さっきの、SSRヒロイン確定ガチャチケット……を、このミッションが成功したら、使うのでござるな……?」


「当たり前だろ、ヒロイン確定だぞヒロイン! 俺みたいなやつは、もうヒロイン確定ガチャに頼るしかないんだ……」

「そんなことはないでござる。ジェイ殿はまだ若い、成長すれば自然と女性とも話せるようになるでござる」


 おっさんはそう言うけど俺には無理な気がした。どうあがいてもこの性根はどうにもならない。

 そしたら元気が無かったはずのおっさんが、俺の肩を励まし叩いてくれていた。


「それよりもジェイ殿……もし、もし本当のヒロインが現れたら俺は、俺はどうなるでござろうか……?」

「どうって言われても……」


 とにかくむやみやたらにでかいし、大食らいだし、浮き沈みが激しくて、ときどき野蛮だし、うん。


「その顔は餌にするつもりの顔でござる! 嫌でござるよっ、いくら用済みでも餌だけはっ、餌だけは許して欲しいでござるぅぅーっっ!!」

「またいつもの発作かよ……餌にするわけないだろ」


「はっ!? じぇ……ジェイ殿ぉぉ……っ! やはりっ、ジェイ殿はやさしいでござるなぁっ!」

「そんなことしたらおっさんとこうして話せなくなるしな。俺が女の子と全然話せないところを笑わないの、ヴァリハルトのおっさんくらいだし……」


 しかしその時だ。魔剣グラムを狙って待ち伏せしていたのか、ゴブリンとオーガの群れが街道に立ちはだかった。

 特に恐ろしいのは巨体を持ったオーガで、体躯はヴァリハルトのおっさんを越えている。


「おっさん……?」


 あの険悪で凶暴な眼差しでヴァリハルトのおっさんが敵軍を見る。

 これでもう1ヶ月の付き合いだ、今すげぇ機嫌悪いってことは確定だった。


「グラム、オイテケ……マケン、オイテケ……」

「おいうぬら、人が大事な話してるときに、だな……? なにガン首そろえて、ジェイ殿の許可なくそこに、突っ立っているであるか? カスはカスらしく這いつくばれ……さすれば命までは取らん」


 圧倒的に数で勝っているはずなのに、おっさんの殺意のこもった気迫が亜族たちをたじろかせた。

 しかしそれは群れ、中には恐怖心が麻痺している個体もいる。


 オーガの中で一番大きな個体がおっさんに巨大なウォーハンマーを振り下ろした。それに便乗してゴブリンのうち2体が動く。


「俺はッ大事な話をッしていると言っておろうがッ!!」

「いやあっちは聞いてない聞いてない、よっと……」


 腐ってもそれはSSR、おっさんはウォーハンマーの振りよりも先に、全長2m半近い重剣でオーガの巨体をぶった斬った。


 ゴブリンの方は問題ない、時間差でおっさんを狙ったそいつらは、ただの自警団のJが刀子(とうす)を急所に投げつけて片付けた。


「信じていたでござるジェイ殿、さあ共に荒野を歩まん!」

「荒野っていうより、草原地帯だけどなここ」


 とても敵わないとわかると、亜族の群れは一目散に逃げていった。


 俺のSSRおっさんはメチャクチャ強い。

 ミッションに成功すればヒロイン確定ガチャをもう一度引けるとわかっていても、おっさんの代わりがいるとはとても思えなかった。



 ・


 ・


 ・



4話 がんばれおっさん まけるなおっさん さよなら……おっさん


 旅路の果てに俺たちはようやく追い付いた。

 無ければ勝てないキーアイテム、魔剣グラムを宿に忘れていったマヌケどもに。


「あいつ何やってんの……?」

「うむ、よくぞ聞いて下さったジェイ殿。あれこそ主人公(ザ・ヒーロー)四十八手の奥義……寝落ちでござる」


「はぁぁっ?!」

「ヒーロー殿にもよるでござるが、だいたい8割方であのままサンドバックにされて死ぬでござる」


 主人公はタブターン山に登った。

 麓の町でそう聞いて、ここまでヒィヒィゼェゼェ息を切らしながら俺たちは必死で追ってきた。


 状況は最後のクライマックス戦だった。

 ワイバーンなどなどの下級竜族の死体が山ほど転がる平たい岩山に、薄紫の竜鱗を持つ巨大な、ロードドラゴンが血を一滴も流さずに大地の上に立っている。


 だというのに、主人公は戦わない、仲間に囲まれたまま棒立ちだ。

 選りすぐりのSSRの英雄たちは、主人公からの命令がなくなるとあるべき戦闘力を発揮できなくなり、次々と俺たちの目の前で倒れて行った。


「起きろよこのアホーッッ!!」

「無駄でござる。叫ぼうとも火であぶろうとも、あの状態のヒーロー殿はうんともすんとも言わんでござる」


 このミッションに失敗すると、近隣の町や村におぞましい被害が出る。

 おまけに俺はSSRヒロイン確定ガチャチケットを手に入れることができない。


「起きろっつってんだろ主人公(ザ・ヒーロー)!!」

「待つでござるっ、どうするつもりでござるかジェイ殿っ!?」


「どうもこうもねーよっ! あいつが死ぬ前に俺がボスを倒す!」

「おおっそれは名案……ではないでござろうっ、レベルの桁が違うでござろう!? それに本当にジェイ殿がモブなら……む、無謀は止めるでござるよぉ?!」


 だってこんな理不尽な光景があるか!

 戦わないでグースカピースカやってるやつを、円陣を作ってSSRの方々が半泣きで守ってるんだ!


 その中には女の子もキャラもいっぱいいる! やっぱり羨ましいモテたい、俺は絶対にガチャ券を手に入れるんだーっ!


「このままモテないまま死ぬくらいなら、俺はこの場で命をかけてやる!!」

「ジェイ殿っ、それさすがに短気が過ぎ――おい、貴様……ジェイ殿にそんな熱いブレスを吐くとはどういう了見だ! ジェイ殿はッ、死んだら復活できない御方であらせられるぞッ!!」


 ブレスをかいくぐり、邪魔なロングソードを投げ捨てて、俺は魔剣グラムを抜く。

 レベル差は歴然、当たったら死ぬ。だが当たらなければ何のことはない。


「あ、貴方はっ!? それは魔剣グラム……届けて下さったのですね! さあそれをヒーロー様に!」

「寝てるやつの力なんて頼りになるかよー! むしろ逆だ逆っ、貰ってくぞ!」


 まず俺は主人公のすぐそこに駆け寄った。

 必死で彼を守る勇敢で凛とした女の子が俺に気づく。その目の前で、俺は主人公から装備をふんだくった。


「なっ、何をするんですか貴方!? そんなっ、主人公(ザ・ヒーロー)様から装備を盗むなんてっ、止めなさい大変なことになりますよ!!」

「ヌハハハハッ、その手があったでござるかジェイ殿! ならば俺は血路を開かんっ、俺に続け英雄たちよ!!」


 装着完了、あらゆる能力値がざっと2桁アップした。

 あとはアレをグラムでぶった斬るだけ、俺はヴァリハルトのおっさんを追って突撃する。


「お前はヴァリハルト?! しばらくガチャから現れないかと思ったら、なぜそんなところに!?」

「笑止ッ! それは簡単なことよッ、餌にされ続ける人生に、終止符を打つために他ならん! ジェイ殿、ヤツの急所は頭の後ろである!」


 もうこうなったらやるしかない。

 装備をはがれて、丸裸で鼻ちょうちん膨らませてるマヌケの代わりに、強敵ロードドラゴンを倒すしかない。


 その時その場にいるあらゆる英雄とモブの意識が1つになった。

 この場で全滅したり、周辺の町々を破壊されるわけにはいかない。俺たちはこの世界に住む人間だからだ!


「ソイツは、何者だ……急に力が戻って、おおっ、これならいける……っ!」


 まだ動けるあらゆる英雄たちが、俺という代役の一撃をお膳立てしてくれた。

 のろまなモブに過ぎない俺を追い越して、ロードドラゴンの動きを命がけで止めてくれる。


「今だジェイッ! 俺の信じた、うぬの力を見せてみよッ!」


 それはケーキにナイフを入れるより簡単だった。

 動けなくなった敵の後頭部にしがみつき、ただ竜殺しの魔剣を突き刺すだけだ。


「ウオオオオーッッ、スーパーレアッ、確定ッ、ヒロインッ、ガチャァァァチケットォォォォーッッ!!」


 竜は生命活動を止めて崩れ去り、やがて地へと溶けて消えていった。

 俺はきらびやかなSSRの英雄たちからの賞賛を浴び、奪った装備をあるべき持ち主に帰して……。


「さて……帰ろうかおっさん。おっさんは帰ったらなに食べたい?」

「卵チャーハンを希望するでござる!」


 俺たちは元の町に帰った、もう使わないであろうキーアイテム、魔剣グラムをパクって。



 ●



「それじゃ、心の準備はいい?」

「う、うーっ!!」


 あのときあの場にいたSSRの女の子には普通に話せてたのに、帰ってみれば俺は元のヘタレだった。

 もしかしたらあの感覚を思い出せたら、俺は女の子たちと普通に話せるようになるんだろうか。


「それ、どっち……?」

「ジェイ殿は、やってくれと言っているでござる」


 ナヴィルさんが美人過ぎるせいもある。

 相変わらずの俺を彼女は明るく笑って、それから俺が差し出したガチャ券をあの時みたいに発動させてくれた。


 ガチャの虹色のエフェクトは、二度目からはもっとチープに見えてくる。

 美しいその世界にシルエットが浮かび上がり、そして……。


「え……えぇぇ……っ?」


 既視感に続く絶望を抱いた……。

 俺、これ知ってる……。だって、これって、アレじゃん……。


 え、なんで、なんでなんでなんで? なんでコレなの!? なんでだよ神様ッ、もう、なんで、もう…………もう嫌だぁぁぁーっっ!!

 輝かしいエフェクトが飽和し、もう正体がわかってる、全てがぶっとい存在が実体化した……。


『我が名はヴァリハルト……永久を流浪する鋼である……。今後ともよろしく、英雄殿……』


 ダブった……。

 SSRヒロイン確定ガチャで、ヴァリハルトのおっさんがダブった……。


「今後ともよろしく、じゃねーよっ! こんなでっかい大食らいっ、2人も面倒見れるかよぉぉーっっ!!」


「餌は嫌でござる!!」

「餌は嫌でござる!!」


 野太いヴァリハルトのおっさんの声がハモった。俺は膝を突き、頭を抱えて絶望した……。

 いや、希望はまだある……ガチャ券……ヒロイン確定、ガチャ券……また、探せばいいんだ……。


 無闇やたらに頼もしいSSRヒロインのおっさんと一緒に……。


 ●


 あ、例の財布をすられたお婆ちゃん、後日見つかりました。申し訳ないことに現れたヴァリハルトのおっさんに腰抜かしてたけど……。


 

GWを使って、100%混じりっけなしの遊び心で書きました。

書いててとっても楽しいので、もし反響が良ければジェイくんの切実なる願いがちゃんと叶うエピソードや連載版も書いてみたいです。

つまり何が言いたいかというと、ご支援と感想下さい。他の拙作の小説も読んでみて下さい、ぜひに、ぜひに。


※ご好評につき、続きの短編を鋭意製作中です

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[気になる点] 250万程度の課金養分的には期限切れチケは自動消滅するのが世の常という点くらいです。 まぁバグだからそこまでツッコむのは野暮だとは思ってますw。 [一言] これからのジェイ君とエンゲ…
[一言] 作者がノリノリで 主人公に更なる試練(おっさん)を与える未来が視える
[良い点] ニャニッシュからこちらに来ました! あっちはほっこり楽しいですが、こっちはうまくいかないところの面白さがあり連載してほしいなと思いました! そのうち別のおっさんも引くんじゃないかとか、完全…
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