-7- 就職活動が苦手なら自分で会社を立てればいいじゃない
「えーっと」
ライトニングの顔を見る。不機嫌。
ミストの顔を見る。上機嫌。
「じゃ、これから最後のメンバーの紹介に行くから」
「はああああああああああ!?」
「なんだ、ライトニング君」
「だ・か・ら、僕は君たちと組むメリットがないんだって!
最悪、ライドだけならいいさ。腐れ縁だし、シルバータグのパーティーに
いても邪魔にはなんないだろうし。だけどこいつはなんだよ!
さっき冒険者登録し終えたばかりだっていうじゃないか!」
「長いぞ」
「聞けぇ!?」
「そんなこと言ったら俺も登録したの今週だぞ」
「お前はいいの!」
幸せそうにパンを齧るミストを指さす。
なんだかんだ、ライトニングとはしょっちゅう殴り合いの喧嘩をしていて
力量が本能的にわかっているのだろうか、彼は謎にライドを評価していた。
「ダークエルフ捕まえて何考えてるのかわかんないけど
お前が普通に冒険者やる気になったならランク上げは協力
してやるからさ、あんなやつとは手を切れよ」
と耳打ち。
「なんだ、あんなやつって」
「お前…エルフ族ってのはなぁ、ひょろっちい奴ばっかりで冒険者では全然見ないぞ。
商人とか薬師なら見るけどさ」
「ふぅん」
ライドはミストを眺める。
「ミスト」
「なんだ!ライド!」
キラキラという眼差し、ここに来るまでの結論として「親友」ポジションに落ち着いて
くれたのは幸いだが、一生付きまとわれそうな雰囲気をビシビシと感じている。
「コイツを納得させてやってくれ」
「ああ!」
言った瞬間投げナイフでライトニングのもみあげを切り裂き、矢がローブを壁に打ちとめる。
「死ぬわ!!!」
「どうだ、なかなかの物だろ?ははは」
「何があった!?」
ライドの目が笑っていないことの方が気になるライトニングであった。
「う・・・腕があるのは認めるよ、でもこんな急造チームで、
しかも“カオティックゲート”の攻略だろ?無理に決まってるって」
「でもセレスの同行だぞ」
「おい、ライド」
真剣な表情のライトニング。
「なんでそれを言わないんだよ~!行くにきまってんじゃん!」
でれでれと急に体をくねらせる。
「うわぁ」
「気持ち悪い」
二人で冷たい目線を浴びせる。
「よし、じゃあ最後の一人を紹介するからついて来てくれ」
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「ライトニング君までは予想していたが…本当にあと一人連れてくるとは」
マーリンが驚いた顔でこちらを見る。
「約束通りパーティーを組んでもらうぞ」
「仕方あるまい。」
「コイツはマーリン。何かと俺が世話になってる魔術師だ」
「この人が…“あの”マーリンか」
ライトニングの表情がいつになく真剣になる。
「なんだ、知ってたのか」
「そりゃそうだ!魔術師の世界にいる者なら誰だって知ってるさ。
大魔導士マーリンの孫、その全てを受け継いだと噂だからね」
「ふぅん」
目の前の女性は椅子に腰かけ、だらしなくのびるチェーンをいじっている。
「御爺様の功績がおおきすぎたからな。私などまだ未熟の身さ」
眼鏡を外し前髪をかきあげる。
「僕は本人がなんと言おうとマーリンさんに僕は敬意をもっているよ」
と珍しくライトニングは真面目モード。
「おい、やりにくいぞ。ライド」
マーリンに引っ張られる。
「おい、マーリンさんと知り合いだったなんてなんでもっと早くおしえてくれなかったんだ」
ライトニングに引っ張られる。
ミストはその光景を「?」と可愛らしく見守っていた。
「それで、名前は決まっているのかね」
三人は顔を見合わせる。
「え、ライドが考えてるんじゃないの」
ライトニングからもっともな意見。
「何も…思いつかねえッ…!」
「何ィー!?」
「どうせそんなところだとは思ったよ、ほれ」
マーリンは紙を各人に渡す。
「適当に一つ書け。投票の多かったものにすれば良いだろう」
「俺・・・マジに何も思いつかないんだが」
「無理にでもひねり出せ」
五分ほど時間が過ぎ
「よし、では読み上げるぞ。一枚目『ライド団』…ライド君思考放棄し過ぎだろう」
「え、俺そんなの書いてな…」
「儂のやつだな」
「どんだけ俺の事好きなんだよ!」
「でへ」
「いや、怖いから!」
ミストのその瞳が狂気を帯びている気がした。
「二枚目…『ディスティニーライダー②シンカイオー①←情報不足 ☆事前に情報屋チェック』」
「馬の予想じゃねーか!」
「ライドが外すから…自分でやるしかなくて。」
「賭け事のことしか頭にねーのか!」
ライトニングの集中力のなさは致命的だった。
「三枚目…私のだな。『フェニクス』というのはどうだろうか」
「おお・・・ようやくマトモな。どういう意味なんだ?」
「意味も何も、生物の名さ。不死鳥だよ」
「ああ、伝説は聞いたことがあるが、実在するのかねえ」
「そこは問題じゃないよ、「再生」や「炎」といった縁起の良さがあるだろう。
それに私たちには何かと赤に関連するものが多いようだしね」
「そうか?」
「ほら、ミスト君の赤い瞳。ライトニング君はメインの魔術が炎と雷だ。
私は赤を基調とした服が好きだし、ライド君は…血が赤い」
「雑だろ」
「意味なんて後からついてこればいいのだよ」
サラっと躱し
「ライド君のは…へえ。『邪龍隊参卍上テッペン』・・・なんだこれは」
「え、かっこいいだろ?」
「え?」
「さて、ではこれは却下として、皆どれがいいか選んでくれ」
「え?」
「僕は『フェニクス』ってのでいいよ」
「儂はライド団が・・・」
「よし、過半数だではチーム『フェニクス』ここに結成だ」
「え?」
ライドは目が点のままだった。