-5- 幼馴染を騙した
途中で自分のパーティーに帰還したセレスと別れライドはギルドハウスに来ていた。
「おい!ライトニング」
クエストボードを眺めるライトニングが振り返る。
「ライド!貴様ッ!」
「まて、一時休戦だ」
拳を振り上げたライトニングは頭の上にクエスチョンマークを浮かべる。
「なんだ、金ならないぞ」
「違う違う。お前ってパーティー所属してないよな」
「…ああ。どいつもこいつも見る目がなくてね。まったく。
いや、この大魔導士ライトニング様にビビって誘えないのかも…」
「ああ、妄想はいいから。」
「なんだと!?」
ライトニングはシルバータグの中での実力は並、ではあった。
シルバータグは一般的な冒険者であれば数年から十数年の研鑽をへてたどり着くポジションだ。
その中でどんなパーティーにも属していないとあれば引く手あまたなはず。
通常であれば。
彼の場合実力が自尊心に追いついておらず、若干の妄想癖もあり、
自頭も残念なためギルドの中では〝変なヤツ〟でもっぱらの評判であったため、一時的な
パーティー契約意外はどこかに属するといったことは“できていなかった”。
「ライトニング、ああ!ライトニング。なんてことだ!」
わざとらしくライドは頭を抱える
「なんなんだライド。気色悪いぞ」
「いやな、お前も知っての通り俺とセレスは幼馴染だ。」
「そうだな」
ライドは体を気色悪くクネクネと捩らせる。
「俺とライトニングもグループが違えど幼少から一緒に遊んだ仲だろ?
おまえともまた、幼馴染じゃないか」
「そ、そうだな」
イキナリ予想外の話題にライトニングはハトが豆鉄砲を食らったような顔をしている。
「何故俺は幼少期にお前たちをまとめて遊ぶことができなかったのか!
それさえできていればお前とセレスは今頃…」
「今頃…!どうなっちまうんだ!」
ライトニングが話に興味を示し始めたと見るや否や
「恋のキューピッドを是非してやりたい!今!一度!
だが、お前の情熱がイマイチ伝わってこねえんだ!」
「何!?僕がセレス様にかける想いを馬鹿にしてんじゃねえ!」
ライトニングまた拳を握る
「まて、落ち着けって。お前の思い、まず…ラヴレターで伝えてみねえか?」
「ラヴ…レター?」
一枚の紙を取り出す。
「そうだ。お前のその情熱をこの紙にぶつけろ!」
「しかし…なんで手紙なんだ。僕文才なんて全くないぞ」
「考えてもみろ、多忙なセレスだぞ?その情熱を口で伝えるタイミングがあると思うか?」
尤もらしい理由をこじつけライトニングの拳にペンを握らせる。
「たしかに…そうかもしれない」
「そうと決まれば善は急げだ!」
「おお…おう!ライド!お前たまには役に立つな!」
「ハッハッハ、そうだろうそうだろう」
「拝啓、セレス様…っと」
「うわ、お前字汚ねえな」
「うるさいな!こういうのは情熱だろ?!」
ライトニングがノリノリで恋文を書き終える。
「できた!」
「ああ、素晴らしい出来だったぜ。涙が止まんねえよ」
わざとらしく目頭を押さえ、ライトニングの手を硬く握り締める。
「よし、ライトニング。お前の想いは、しかとこの俺が見届けてやる。」
「お前…ふっ…ライド。お前が親友想いなのは10年前からわかってたぜ!」
「何言ってんだよ、今更。ほら。最後に差出人の名前をかけよ」
ピラリと、一枚の紙を渡す。
何の疑いも持たないライトニングは即座に名前を書き終えると
「よし!お前に僕の気持ち!預けたぜ!」
「まかせろ!」
ライドはその用紙をもちライトニングの首を引っ張る
「いででで!何するんだよ!」
ギルドの受付まで引っ張り
「こいつ、パーティー申請で」
「はぁ!?なんでだよ!!!」
「パーティー組めなくて困ってたじゃねえか」
「いやそうだけど!僕が今更ブロンズタグと組むわけないでしょ!!」
「またまた〜」
「またまたじゃないよ!」
ああ無情、書類はどんどん運ばれて行き
「おめでとうございます!パーティー参加処理が完了しました!
ライドさんはパーティー名を考えてきてくださいね!」
ライトニングは白目を向いて倒れた。