-3- 就職活動はもう二度としない
「皆知ってると思いますが、ライディーン・デュランダルです!今日からこのパーティーに
加わってもらうことになりました」
「気軽にライドって呼んでくれ」
懇親のピースサイン。
レンガ造りのパーティーの所有するハウスの中、
案の定の冷めた雰囲気が立ち込めた。
「帰っていいか?」
「まちなさい!」
自分のウィットに富んだ事故(自己)紹介を無視しやがってとやさぐれていると
一人の屈強な、如何にも重戦士といった身なりの中年男が挙手をする。
「団長、発言良いだろうか」
「ええ、かまいません」
ヤツの名前はローガン。国中で重戦士この人有りと他国にも知らしめるほどの有名であった。
ライドが作戦を伝える際に主にやり取りをしていた前線での要兼作戦指揮等まさに「将軍」
と称されるに相応しい人物であった。
「俺達はライドの立案した作戦や勇者デュランダル一族の手記の情報に助けられてきた」
重苦しい雰囲気の中、男は立ち上がる。
「だが、それとパーティー加入とは別問題だ。」
まるで自分が敵であるかのように強い眼差しを向けられる。
「我ら“ウィクトーリア”はゴールドタグ。レベル70以上と厳しい条件を
常に更新し続けたメンバーのみがい続けられる精鋭のはずだ。
ついて来れなかった者達は支援パーティーに回っている。
彼と“ウィクトーリア”との専属軍師契約ならわかるが・・・いきなり入団というのは反対だ。」
セレスがぐうの音も出ないほどの図星を突かれる。
「ぐう・・・」
「お前俺の心読めるの?」
セレスを見つめると何か言い訳を探そうとアタフタしている。
流石に同情心が沸きライドが挙手をする。
「とはいえ、俺も同意見だ」
「ライド!」
セレスは涙ぐんだ眼でライドを見つめる。
彼女が自分を無理やり連れてきた理由もわかってはいたライドは頭をかき
「一回俺を連れて行ってくれないか」
と、仕方なく発言。
「何?」
「アンタらの足手まといにはならない、いや役に立つことを証明すればいいんだろ?
なに、ダメだったらそれはそれで諦めがつくさ」
「役になら既に立っているさ。お前の立てる攻略作戦で我々の侵攻は非常にうまくいっている」
男はチラリとツインテールの女を見る。
「メンツの問題・・・ってことね」
女は明らかに不機嫌そうな顔で爪を噛み、貧乏ゆすりを止めようともしない。
貧乏ゆすりをしすぎて机がかすかに揺れている。
「オーケイ。あんたらのパーティーに同行する形で俺もパーティーを作る」
セレスは驚いた表情でこちらを見る。
「ライド・・・いいの?」
「乗りかかった舟だ。もうダンジョンに行くことに依存はねえよ。
てか、そんなこと聞くくらいなら勝手に人様の印を持だすんじゃねえ」
「・・・ありがとう!」
ライドはニヤリとほくそ笑み机をたたく。
「・・・よし!じゃあこのパーティーとは契約解消だ。最速記録じゃないか?」
「あ、そこは大丈夫です。私達のパーティーは複数パーティーでも
契約できるカンパニーとして登録してありますから」
「ちっ」
「逃・げ・ら・れ・な・い・で・す・よ・?」
「わたくしは大・大・大・大反対ですわよ!!」
話が落ち着きかけたかと思った矢先にツインテの女が大爆発。
「誰だっけ、ドリ・・・えーっと・・・あれだ。ドリル的な名前なのは覚えてるんだが・・・」
「テトラ!ですわ!!テトラ・シューティングスターですわよ!!!」
ペンがライドの頭にぶつかる。
「物は大事にしろよ」
「こんなフケツ男!生理的に無理ッッッですわ!!」
「え、俺ってそんなイメージなの」
ボリボリと頭をかく
「そういうところですわ!!気色悪い!ああ、もうフケがこちらにも飛んできますわっ!」
「昔は泥だらけになりながら一緒に遊んだ仲じゃねえか。あとその口調も相当変だぞ。
えーっと・・・ドリラ」
「テトラ!!!!!!ですわ!!!!!!!」
テトラは髪を逆立てる勢いで怒り狂っている。
ライドは昔から名前を覚えていないネタでイジリ続けてきたのだがそのせいか相当嫌われていた。
「こっっの…!!ああ!もう無理ですわ!いくらお姉さまの提案とはいえ
〝ぐうたら〟ライドと一緒なんて!」
「だから、俺は近くでアンタ達の支援をするだけだって。カリカリしすぎだろ。あの日か?」
「うわっ気持ち悪いッ!」
怒り散らすテトラをセレスは抑え、
「と、とにかく。ライドはパーティーメンバーを集めてください!
あなたの実力を見れば皆納得するはずです。」
「買いかぶりすぎだ」
「ふん!どうせ貴方と一緒に行く冒険者なんているはずないですわよ!」
「なにおう!俺だって友達の一人や二人…」
「いないでしょう?アーハッハハ!」
「見てろよ!髪の毛とぐろ巻きグソビッチが!」
捨て台詞を吐きハウスを飛び出すと、後ろの方から「あの野郎ぶっ殺してる!ライドォオ! 」と
ドスのきいた女の声が聞こえてきたので、全力疾走でその場を離れた