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なろう主人公の孫  作者: 叫べチーズ
1章
16/42

-1- トーナメントなんてオラワクワクすっぞ

辺りには夥しい死体の数。

立っている者も満身創痍。


『嗚呼、何度夢見たことか、現世うつしよ


禍々しく黒く光る剣が煙に包まれる。

その光は皆の命の灯火を消し去るが如く。


『終わりだ、我が膏肓、断ってみせよう』


「避けて!ライド!」

突き飛ばされ視界にあるのは腹を切り裂かれ、馬に蹴飛ばされ

ぼろ雑巾のように蹴り飛ばされるセレスの姿。


「セレ、ス・・・」


戦車に乗る悪鬼。

迫る絶望。


「止めろぉおおおおオオオオオ!!!!!!」


――――

――――――――――――

――――――――――――――――――――



ライドは今日も今日とて鍛錬に励む。


「ライド、次のクエストはどうするんだ」


何故か隣でスクワットをしているライトニングが尋ねる。

ふんっ、ふんっと汗を撒き散らし鬱陶しい。


「そうさなぁ」


あれ以来、ライドたちは“カオティックゲート”の攻略には行っていない。

“ウィクトーリア”に対してあそこまでのタンカを切ったが、本気で攻略を

考え始めた彼はパーティーでの立ち回りの強化に力を入れる方針に切り替えた。

テトラには思い切りバカにされたが、セレスは満足そうだった。


約一ヶ月、小規模なクエストをこなす日々が続き、ライトニング以外の全員がブロンズタグ、

レベル15前後の評価となった。


「いつになったらシルバータグになるんだか」

「え?」


ライトニングが素っ頓狂な声を上げる。


「試験受けないとあがるわけないだろ」

「そうなのかよおおおおおおおおお!?」


チーム“フェニクス”緊急会議が、マーリン宅で執り行われた。


「どうやらシルバータグになるには試験があるらしい」

「へえ、そうなのか」


そもそもシルバータグってなんだ?おいしいのか?といった反応のミストと

全く興味がなさそうなマーリン。


「どうやら今週末に試験があるらしい・・・」


無言。


「お前らも受けるんだぞ?!」

「えっ!?そうなのか!?」


ミストは驚き、マーリンは話を聞いてすらいない。


「どうやら親切な俺はお前達の試験も申し込んだらしい・・・」

「おい、勝手に何を」


ようやくマーリンが反応する。


「聞こえてるんじゃないか」

「机の後ろで騒がれれば嫌でも聞こえるよ」


ライドは申込書の控えを二人に渡す。


「ライトニング、試験の内容って何なんだ?ペーパーテストなら

俺一生ブロンズタグだぞ」

「う~ん、僕の時はクエスト形式だったな。定期的に発生する

イービルウルフの討伐で討伐数、上位何名かが合格、みたいな」

「その後にタイマンのトーナメントが用意されてたりしないだろうな」

「ハハ、ないない。漫画じゃあるまいし」


――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――

――――――――――――


「一回戦!ライディーン・デュランダル 対 ソレント・フルーティオ!」

「あの野郎帰ったら殺してやる」


週末、タグの昇格試験のためライド一行はギルドへと出向くと、今回の昇格試験は

申請者全員によるトーナメントであり、上位5名が合格となると伝えられた。

ライトニングはトーナメント表を見た瞬間、事態を察しいつの間にか雲隠れしていた。


「親友ー!がんばれー!」


外野からミストの声。いいよな、あの二人は戦闘能力からして突破間違いなしだろう。


「ルールは事前に説明があったとおり急所一発、他三発の被弾で負け、時間切れで両者負け

武器は事前に申請があった木武器の使用、魔術、弓術は模擬用の着色弾の使用だ」

「ああ」

「相違ないわ」


相対する相手の獲物は弓。

一対一で距離さえ詰めればこちらの有利だろう。少し悪い気さえする。


「では、開始!」


ライドは木刀を構え“鎌鼬”を構え一気に近づく。

同時に相手側の散弾速射に横ステップで回避。

あっという間に距離をとられる。


「しまった!」

「弓術士と思って油断したわね!」


一方的に降り注ぐ矢に足をやられる。

侮っていた。

自分の鍛錬の結果をここで発揮したい、習得した技を見せたい。

その気持ちの先行に戦闘の土台に自分が立てていなかった。

そして何よりも相手を弓術士一人だと油断。


ゆっくりと後悔させてくれる時間などあるはずもなく次の攻撃が襲い掛かる。


「落ち着け」


一発一発射線を読み確実に避けるがいっこうに近づける未来が見えない。

外野からの声が聞こえる。


「アレが伝説の勇者の孫だってよ」

「あのデュランダルの?パッとしねえな」


周りの声に精神を持っていかれる。


「ちゃんと戦う気が」


ソレントが跳躍し何かを詠唱している。


「あるのかしら!?」


フィールド全体を覆うような水性のカッターの攻撃。

威力自体は大したことがないのだろう。

しかし、目の前の未知の攻撃、足がすくむ。


今までのライドの戦いは準備に準備を重ねた確実な勝利。

未知の敵とは直ぐ離脱。

それが絶対原則であった。


「くっ!」


上着をとっさに自身の上に投げ


「【エンチャント】!土!」


上着に“土”の魔力。


「甘い甘い甘い!!」


カッターの軌道が上から来るものと考えたライドのわき腹を裂き、塗料が付着する。


「私がどれだけシルバータグにあこがれてここに立っているかわる?」


優勢の余裕だろうか、相手が話しかけてくる。

ライドは上着を捨て、様子を伺う。


「なんだあれ、だっせぇ」

「本当に伝説の孫かよ」

「全然ダメだな」


惨め。

今すぐ逃げ出してしまいたい。


祖父の伝説と比べられ続けた父。

その父は祖父に及ばないながらも最強を追いかけ続けた。

その父から生まれた今の俺は・・・。


不甲斐なさや惨めさがライドの戦意を奪う。

木刀から手を離し


「ライド!!」


いつも無表情の彼女の怒った視線。


「わかってるさ・・・オラァ!」


手放した木刀を蹴り飛ばす。


「諦めたか!」


あの時の奇を衒っただけの、“俺だけの”必殺技。

ライドが風と共に駆ける。

襲い掛かる矢をあてずっぽうでかわす。

表情が引きつる相手の顔。

悪いな、勘だよ。と心で呟く。

とっさに翻すその身


【エンチャント】来タレ疾風


声に出さなくても、心に思うだけで“技”を出せる。

その特性こそ彼の


乱ルル木ノ葉ガ如ク。一ノ剣


鎌鼬オラアァアアアアア!!」


彼に与えられた“グローリー”“隠匿インビジブル”。

派手にソレントは吹き飛ぶ。


会場が沸く。


「ハッハッハ、もっと褒めたまえ」


「勝者!ソレント!!」


べっとりと腹あたりに着色されたシャツ。


「そりゃそうか」

「ライド!大丈夫だったか?」


ミストが近づきライドの腹をさする。


「うひゃひゃ、やめろ恥ずかしい。ペイント弾だって」

「あの女・・・ライド、儂が必ず敵をとってやるからな」

「お、おう・・・がんばれ」


いまいちミストの扱いに悩んでいるライドであったが

最近では、おせっかいお姉さんと弟のような関係となりつつあった。


「さっきは悪かったな。みっともない所を見せて」


本を見つめるマーリンにライドが言う。


「・・・復活」

「え?」

「敗者復活戦があるだろ、必ず次は勝て」


本を閉じ、ライドの胸に本でポンと叩く。


「ああ」

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