-14- チーム“フェニクス”結成
三日の修行を乗り越え、ライドとライトニングは無事慢心相違でパーティー会議に出席を果たした。
「知ってはいたけど・・・予想以上にぼろぼろだな。君たち」
マーリンが気の毒そうにこちらを見る。
「親友、汗臭いぞ」
「ん・・・?ああ、三日風呂に入ってないな。そういえば」
「会議の前に入ってきなさい!」
セレスにギルドから蹴りだされる。
「なんでアイツいるんだ?」
「セレス様のいるところに我有り・・・だ!」
「いや、俺達の方が先にいただろ」
二人は早朝早々に公衆浴場を目指す。
「それにしてもしんどかったな・・・いや、これから
毎日修行していかないといけないのか・・・ジジィ・・・コンプレックス増やしやがって」
「ふん、貴様が立ち止まれば止まるほどこの大天才との差がメキョメキョと広がっていくだけ
なのだがな!」
「なにその気持ち悪い祇園。それにお前セレスに一勝してから明らかに調子こいてない?」
「ないとも、ウン」
「その口調やめないと馬の予想教えないぞ」
「ないですうっ!」
公衆浴場に着き、受付で金を払う。
「ふぅー・・・流石に気持ちいいな」
体を洗い湯につかる。
「ライトニング、お前何してるんだ?」
ライトニングは壁をじぃっと見つめている。
「ライド」
「いや、皆まで言うな。男なら・・・“わかる”!!」
そり立つ壁。
遠くから聞こえる女の声。
「いくか・・・?」
「モチロン」
どちらとも無く頷きあう。
「しかしどうやって・・・」
大浴場から眺める壁には支柱、そしてアーチ上のデザインの敷居に青空。
「僕達・・・飛べないかな」
「おいおい、流石の大魔術士様でもそれは・・・」
「ライドの鎌鼬・・・この三日のセレス様のシゴキで大分練度・・・増したよな」
「天才か?」
セレスは模擬戦の最中、風魔術の加護を受け高速移動と人間の限界を超えた動きを見せていた。
そう、ライドも何を隠そう(いまのところ)風魔術が最も得意であった。
「でもこの高さは流石に・・・」
すると遠くから声が聞こえる。
「ついてきてもらっちゃってごめんなさい。言ったら行きたくなっちゃいました!」
「おお・・・ここが・・・うわさに聞くはだかの人間同士がくんずほぐれ・・・」
「違うぞ!ちがう・・・ぞ・・・」
「マーリンさん、顔真っ赤ですよ?」
「俺に限界は無いと思う」
「よく言ったライド、アンタ漢だよ」
ライドは石鹸を片手に持ち魔力をリンクさせる。
「うおっ・・・石鹸・・・難しいなコレ」
「もっといいもの探すか?」
「いや・・・これでいくぜ」
ライドは石鹸を腰に据える。
「【エンチャント】風の加護・・・いけ!あ」
手から石鹸がすっぽぬける。
本能がそうさせたのであろうか、石鹸は予想以上の“切れ味”を増し支柱を切り裂いた。
壁が倒壊。
「おい!!死ぬ!!」
瓦礫が雪崩れライトニングが命からがら逃げる。
倒壊した壁の向こうに一糸纏わぬ三人の姿を補足したと思った刹那セレスの
高速の右ストレートがライドの顔を貫きライトニングの頭を踵落しがクリティカルヒットした。
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「さ、本題に入ろうか」
正座しているライドのひざには石畳がつまれる。
「あの、もう苦しいです」
「まだいけるってことですね?」
「おい!ミスト!親友だろ!止めてくれ!」
「親友以外の女の裸を見るなんてダメだ」
「それ親友超えてるだろ!」
視線が冷たく到底許されそうにはなかったのでこのまま仕方なく続けた。
「皆も知ってのとおり俺達の目的は“カオティックゲート”の攻略、あの上空までそびえる塔
百階が最上階とされてるアイツの踏破を目指す・・・こいつらのパーティーの援護だ」
セレスを指差す。
「ただ、俺修行初めて気づいちまった。やっぱ強くなっていくのは楽しい」
ライドは素直な気持ちを語る。
「俺はジジィの伝説がコンプレックスだった。
やれドラゴン族を一人で壊滅させただの、三国の争いを一人で収めただの。
ウンザリだった。そんな最強のジジィが挑んで敗れたあのダンジョンが心底怖かった」
「でも、こうやって修行して、何かに挑むのはやっぱ楽しいな。だから」
「それが女子風呂覗きですか」
「ゴメンナサイ・・・」
ライドは土下座する。
「で・・・たとえ伝説の勇者が敗れた難易度SSS級ダンジョンでも。最初に踏破してみたくなった!」
ライドは今までの恐怖を無理やり振り払い己を鼓舞するように叫ぶ。
「そんな目的に・・・変えちまってもいいか?」
「ふっ・・・僕をパーティーメンバーに引き入れた事を後悔させたりはしない」
「儂はもとよりアテもない、ライドにまかせるさ」
「ま、研究の一環とかんがえるよ」
三人のパーティーメンバーは各々、了承の意を示した。
「悪いな、セレス。やっぱ今日からライバルだわ」
「どうせこうなるってわかってましたよ」
セレスは満面の笑みでそういった。