一触即発
生徒会長選挙まで残り1か月と迫った中、十紋次高校正面玄関には生徒会長立候補者を始めとした生徒会に立候補した生徒達の名前が貼り出されていた。
その中には橋下ナツミを始めとするスクールカーストのトップに君臨する生徒達の名前があった
正孝の名前はその中にポツンと記載されていて場違いの雰囲気を出していた
貼り出されている用紙の周りには多数の生徒が群がって各々思いの丈を口にする
大多数の生徒は「橋下ナツミが圧倒的な大差で勝つ」と言った正孝にとっては向かい風の声が挙がっていた
その様子を葵、正孝は少し距離を取りながら眺めていた
葵はニヤニヤと笑みを浮かべ、正孝は下を向き愕然とした表情を浮かべていた
そんな状態の正孝を終はなだめるかのように背中を軽く叩いた
その3人の前をある集団が通った
橋下ナツミ率いるトップ集団だった
橋下ナツミは葵と正孝を見るやいなや軽蔑の視線をし、嘲笑うかのように高笑いを挙げた
その後ろにいる宝塚京花は今にも襲いかかってきそうな勢いでこちらを睨み付けた
その2人の後ろから少し距離を取りながら歩いてきた戸上翔琉は無表情で前の2人の背中を見つめながら歩いていた
戸上の隣には遠田美咲が正孝を横目で見つめながら歩いていた
トップ集団が3人の前を通り越そうとした時、ふと葵が口を開いた
「ずいぶん余裕じゃないか橋下ぁ。」
「あら、どこのネズミかと思ったら自称情報屋の葵さんじゃない。屋上で乱闘事件に巻き込まれたらしいけど大丈夫ですかぁ?ブッサイクな顔が乱闘の傷でもっと無様に見えますよ?」
「お前こそ、小便臭いその臭いをどうにかしたらどうだ?ス○トロ趣味でもあるのか生徒会長候補」
お互いが眉間にシワを寄せながら罵倒し合う様子を周囲は静かに見ていた
「言っておくが、生徒会長になるのは名取だ!てめえみたいな器と胸の小さい女には無理があるってもんだ!」
「あなたこそ。万引き事件を起こした生徒についてくる人がいると思うのかしら。勝負は始まる前からついてるのよ」
万引き、という言葉に周りの生徒達はザワザワと騒ぎ始めた
「そういえばそうだ。名取正孝は万引き事件を起こしてる」「確かこの前の乱闘事件にも関わっているって」
周囲から正孝のあらぬ噂が流れ出す
その様子を見て橋下ナツミは不適な笑みを浮かべ口を開いた
「そうです、彼名取正孝君は過去に万引き事件を起こして周囲に多大な迷惑をかけた張本人です!名門私立十紋次高校にあってはならない、いえいてはならない生徒なんです!」
そのヘイトスピーチに周囲の生徒達は歓声に似た声を口々に挙げる
「私橋下ナツミが生徒会長になった暁にはまず、この前科持ちの彼、名取正孝君を退学処分にすることを約束します!また彼は先日起きた乱闘事件にも関わっていることがわかっています。
彼はこの名門私立十紋次高校にいてはならない生徒なのです!」
そう言って正孝を指さした
普通ならこんな発言は賛同どころかむしろ淘汰されるだろう
しかし現在の十紋次高校には先日の乱闘事件のこともあり名取正孝は全生徒及び全教員から敵として扱われていた
正孝はその言葉を黙って聞いていた
だが決して目線は橋下から外さなかった
その目を見て橋下は戸惑いの表情を浮かべる
「な、なによ。その反抗的な目は」
正孝は目線を外さないまま口を開いた
「やってみろよ、必ず勝つ。あと指を指すな。あと・・・」
「お前本当に小便臭いぞ」
そう言って正孝は橋下ナツミから背を向けて立ち去った
その後ろを葵と終はついていくように歩いていった
「く・・・いい!私が生徒会長になったらあなた達3人とも退学処分にしてやるから!」
3人は振り向かずその場を後にした
その背中を心配そうに見つめる視線がそこにはあった。