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何故、こんな事になってしまったのだろうか.......

番人に鞭で何度も打ちつけられながら、オレはそんな事を考えていた。

オレは我が国の為、我が王の為、自分の全てを投げ打って尽くしてきたと言うのに......

決して......決して.......我が国を、我が王を裏切った事など無かった筈なのに......

オレは自分の疑問の答えを自らの中から導き出そうとしていた。

しかし、牢屋の番人に何度も何度も鞭で打たれ、身体のあちこちの皮が破れ、

そこから血が滴り落ちて自分の意識も消えかかっている為、頭がうまく働かない。

番人「おいおい、寝てるんじゃないだろうなぁ......

   元勇者さまだけあって、叫び声の一つも上げないだもんなぁ......

   全く......面白くないったらありゃぁしない......」

牢屋の番人はそんな事を呟き、牢屋の中にある拷問道具を見回した。

何故だ.......何故.......こんな事に......

オレはその疑問の答えを導き出す事ができないまま、牢屋の番人の拷問を受け続ける事

しかできなかった。



王は王の間に戻ると玉座に座り、肘掛けに肘を着いて自分のコブシに頬を当て、

側近の宰相に向かってこう呟いた。

 王「......これで良かったのだな?」

宰相「その通りでございます......

   今やカルナシスの我が国での人気は相当なものです。

   カルナシスを慕う兵も多く、彼を王にと望む者は増えるばかりでございます......

   このままでは、兵が反乱を起こし、本当に彼が王となる日も遠くはない......

   ......と私は感じております。」

 王「しかし......」

宰相「王よ......カルナシスが居ては、我が国は危ういのです。

   そして、王の命も......」

王は宰相の言葉に沈黙し、そして低く唸る事しかできなかった。

そして数秒後、王は深く溜め息を着き、宰相に向かってこう答えた。

 王「もうよい......少し......我を一人にしてくれ......」

全ての者が王の間から去り、一人となった時、王は自分の頭を抱えて蹲り、

 王「カルナシスよ......我を......我を許してくれ......

   我は......我が身かわいさにお前を......お前を裏切る事に......」

と呟いた。



夢を見た。

美しい女性だった。

彼女は、オレの両頬に手を当て、愛おしそうな目を向けて、何かを呟いた。

しかし、彼女の声がオレには聞き取れなかった。

オレ「キミは......誰だ?」

オレが彼女にそう聞くと、彼女は少し悲しそうな顔をして、オレの頬から手を離した。

女性「ああ、あなた......私のあなた どうか忘れないで

   私は何があっても あなたの傍にいる事を

   ああ、あなた......私のあなた どうか忘れないで

   私は何があっても あなたの味方であるという事を」

彼女の言葉がオレの耳に届いたが、彼女はそのまますぅ〜っとオレの目の前から消えた。

そこで、オレは体中に痛みを覚え、目を覚ました。

番人「勇者さま......何で寝ちゃうのかなぁ......

   寝ちゃったら意味がないじゃないか......」

どうやら、オレは牢屋の番人に水を掛けられたらしい。

鞭で打たれてあちこちの皮膚が破れているオレには、ただの水ですら激痛を伴うものとなっていた。



数日後、オレは処刑台への道を歩いていた。

オレの疑問に答えてくれる者は何処にもいない。

もう、オレはここで処刑される、ただそれだけだ。

あれから何日経ったのだろうか......喉も枯れて声を出す事もできない。

首と手を首枷で拘束され、両足には重い鉄球が鎖で繋がれ、更に首枷に繋がった鎖

を牢屋の番人が引っ張っていた。

何日も飲まず食わずで、更に拷問を受け続けていたオレには、体力など殆ど残ってはいなかった。

結果的には、常人ならば1分も掛からないであろう処刑台への道程を、

ゆっくり、ゆっくりと歩く事しかできなかった。

時折、牢屋の番人がオレと繋がった鎖を引っ張りながら、

番人「ほらほら......勇者さま......

   そんなゆっくりな歩き方じゃぁ陽が暮れてしまうよ?

   それとも、処刑台への時間稼ぎをしているのかな?」

とオレに話しかける。

しかし、オレにはもう答える体力も、歩く体力も殆ど残ってはいない。

時折、崩れ落ちそうになりながらも、オレは処刑台へと歩を進める。


周りには、この国の住人が処刑台へと歩くオレを見てヒソヒソと何かを話したり、

「裏切り者!」「罪人め!」と罵声を浴びせたりする。

何故だ......何故......こんな事に......

せめて......せめて、オレのこの疑問だけには答えて欲しい......

しかし、誰もオレの疑問に答えてはくれない。


そのまま、オレは牢屋の番人に引っ張られながら、処刑台へ歩いていく事しかできなかった。


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