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......



声が聞こえる......


 ああ、あなた......私のあなた どうか忘れないで


女性の声が......


 私は何があっても あなたの傍にいる事を


キミは一体.......


 ああ、あなた......私のあなた どうか忘れないで


誰......なんだ......


 私は何があっても あなたの味方であるという事を



......



一体何があったのだろうか.......

何故、オレは鎖に繋がれているのだ......

目を覚ました時、彼が最初に思ったのはそんな事だった。

朦朧とする意識の中、自分の状態を確認する。

左右の手は鎖に繋がれ、その鎖の先は暗い壁に打ち付けられていた。

何故、オレはこんな事になっているのだ......


ふと、彼の居る場所の外が騒がしくなる。

大勢の足音と話し声。

そのままの状態で目の前を見ると、そこには鉄の扉があり、

外の光が扉の上方にある鉄格子から漏れていた。

ギィィ......と鉄の扉が開き、数人の人が入ってくる。

そして、一番前に居た男がオレと目が合い、

 男「どうやら目覚めたようだな」

と声をかけてきた。

オレ「......何故......何故......オレが......」

喉がカラカラで、声を出すのも難しい自分の状態に気付きながらも、

辛うじてその言葉だけは発する。

 男「しらを切るのもいい加減にしろ! 罪人め!」

よくよく聞くと、その声は聞き覚えのある声だった。

オレは意識が朦朧としながらも、声の主の顔を見ようと顔を上げた。

そこに立っていたのは、オレが仕える国の王だった。

オレ「......王よ......王よ...... 私が一体......何を......」

 王「まだしらを切るか! 我を裏切り、我が国の乗っ取りを企てる罪人め!」

王のオレを叱責する言葉を聞きながらも、まだオレは状況を掴む事ができなかった。

オレが王を裏切る......? オレが国の乗っ取りを企てている.......?

何の事だろうか......

意識が朦朧としている為、頭が回らない。

懸命に記憶を辿ろうとするも、王の言葉に更にオレは混乱する。

 王「我が国を救った勇者と呼ばれるお主が、我を裏切るとは......」

オレ「私が......王を.......裏切る.......

   そんな事は......考えた事も.......ございません......」

王の言葉に対しての返事だけは辛うじて口にする事ができたが、

王は更に憤慨し、オレに蔑みの言葉をかけてきた。

 王「いい加減にするが良い!!

   お前が我を裏切り、我が国の乗っ取りを企てていた証拠は挙がっているのだ!!」

オレ「それは......何かの......間違いでは......

   私は......私は決して......我が王を裏切るような事は.......

   考えた事も......ございません.......」

オレの再三の否定に王は更に憤慨し、牢屋の番人の持つ乗馬用の鞭でオレの顔

を打ちつけ、声を荒げてオレにこう答えた。

 王「いい加減に自分の罪を認めよ!!!

   我が国を何度も救い、勇者とまで呼ばれたお前が我を裏切った事実だけでさえ

   我を落胆させているというのに、更に恥の上塗りをするのか!!!」

オレ「王よ.......我が王よ....... 私は決して.......王を裏切った事など......

   一度も......ございません.......」

オレの言葉を聞いた王は、更にオレの顔を鞭で打ちつけ、一つ大きな溜め息を着き、

オレにこう答えた。

 王「見損なったぞ、勇者......いや......罪人カルナシスよ......

   潔く罪を認めれば、楽に死ねたというものを......」

そして、王はオレに背を向け、この場所から立ち去ろうとした。

オレ「お待ち......ください......我が王よ......

   きっと......何かの.......間違いで.......ございます......

   どうか......どうか.......私の言葉を.......信じて.......ください......」

しかし、王は一度立ち止まり、オレの方を振り向いて怒りの目を向けた後、

牢屋の番人に「こ奴を懲らしめよ。」と指示して牢屋を出て行った。

オレ「王よ......我が王よ.......どうか.......どうか.......」

再度オレは王に向かって声を上げたが、王にオレの言葉が届く事はなく、

代わりに牢屋の番人がオレの前に立ち、卑下た目を向けてこう話した。

番人「嘆かわしいねぇ......勇者さま.......いや.......今は罪人カルナシスだね。

   王にはアンタの言葉は届かなかったようだ。」

オレ「何故だ......何故オレが......」

番人「王様も言っていただろう? アンタは国を、王様を裏切った罪人としてここ

   に繋がれているんだよ。」

オレ「何故.......何故......そんな事に......」

番人「さぁねぇ......オレはただの牢屋の番人だから、詳しい事は知らないさ。

   それよりも......王様の許しも出た事だし、楽しませてもらおうかな。」

番人は棘の付いた鞭を持ち、卑下た笑いを浮かべてオレを見下ろした。

そして、何度も、何度も、オレを打ち付けた。


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