分からないよ
コーヒーを持って会議室にはいると、彼が話かけてきた。
まだ会議室に人が居ないことが幸いだろう
誰かに二人きりの姿を見られたら、婚約者が何か言ってくるかもしれない。
「久しぶりだな。」
『久しぶり。まさか先輩がこの会社にいるなんて知らなかった』
「俺は最初から此処だったから…。千里、」
久しぶりに呼ばれた名前に胸がドキドキする。
諦めるなんてできてない証拠だ。
「ごめんな。」
『ごめんって…』と言いたいが、口が動くだけで声がでない。
なんで、ごめんって謝るのだろう。
謝るくらいなら、言い訳をしてほしいのに
「俺は千里に許してほしいなんて言わないけど、ずっと千里のことを愛してる」
『ッ…』
婚約者がいながら、愛してるなんて言われても分からないよ。
どうして、婚約者のことを教えてさきれなかったのか、なんでまだ愛してるなんて言えるのか
婚約者のことが好きだから、私と別れたはずなのに。
コンコンコン
「課長、この資料ですが…」
会議で使うであろう資料をもった、男性が入ってきた。
「ああ、ありがとう。机に並べといて、コーヒーは此方において下さい。」
聞きたいことは沢山あったが、他の人が入ってきたことにより話は終了した。