プロローグ
彼、吉田稔先輩とは高校時代にお付き合いをしていた。
学校一のカップルと言われ、周りに冷やかされながらも彼と一緒にいれるのが嬉しかった。
「もぅ、ラブラブすぎ!」
『だって、ずっと好きだったから』
稔先輩が教室まで迎えに来てくれるまでの時間はいつも、先輩の話をしていた。
「千里!遅くなってごめん、帰ろう」
『うん!夏海、また明日!』
「バイバイ!また明日ね」
だから、信じていた。ずっとこの関係が続くんだって
そう思っていた、高2の夏までは。
「悪い、千里。君とはもう付き合えない」
『え?』
「高校を卒業したら、婚約者と付き合うことになっているんだ。だから、千里とはもう付き合うことができない」
なんで?ーー
どうして、今なの?
2年生の夏なのに
大学生になっても、デートや旅行に行こうって話をしてたのに。
『どうしても別れないといけないんですか?』
「っ…千里、ごめん。」
『ッ…』
聞きたくなかった。
そんな話、でも私は好きだから別れるなんて嫌だ。先輩を好きになったのはずっと前。
私が中学生だった頃に、痴漢から助けてくれた。それから、何度か助けてくれる彼に私は惹かれていった。
だから告白をオッケーしてくれたときは、凄く嬉しかったし、彼も私を好きだと言ってくれた。
「千里、大丈夫か?体調悪いのか?」
「甘いもの、千里好きだろ?」
「もう遅いし、家まで送る。」
「俺も千里が好き、愛してるよ」
彼との幸せな時間はきっと忘れることなんてできない。
何度でも私は恋をする。
そして、大学生を卒業し就職した会社には、あの頃から大好きだった、忘れたくても忘れられない稔先輩が上司となって私の目の前に現れた。
なんて、神様は酷なことをするのだろうか。