表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/330

第4話 ~ 魔界漫才はよそでやってくれる ~

弾3章第4話です。

まさかの伏線回収w

「オレたちが生み出した、だと……」


 プリシラは怨念めいた顔で、ギッと宗一郎を睨み付けた。


「そうよ」

「オレがモンスターを自力で倒したからか?」

「違うわ。そんなの些細な事よ。想定にはなかったけどね。……まさか自分の世界の人間が、モンスターを自力で倒すとは思わなかったけど」

「じゃあ……」


 宗一郎は困惑するだけだ。

 全く心当たりがないからなのだが、プリシラの顔はさらに不機嫌になっていく。


「あなたたちがイベントモンスターって呼んでるものね。たぶん、あなたたちは私の差し金とか思ってたんでしょうけど、私から見てもあれは予想外の現象なのよ」

「なに!?」

「さっきも言ったけど、私がいじったのはレベル、ステータス、復活、ゴールド……現実世界に転用が出来そうなゲーム要素を抽出して、オーバリアントを回していたの。イベントモンスターなんてまどろっこしいものなんて作るはずはないわ。そもそもモンスターを倒すための力だしね」

「なら――。何故、イベントモンスターがいるのだ?」


 プリシラは長く息を吐いた。

 熱くなりはじめた頭を冷やすように……。


「だから、あんたたちのせいだって言ってんの!」

「全く身に覚えがないぞ。オレたちが何をしたと――」

「あの~」


 おずおずと手を挙げたのは、フルフルだった。


「さっきから“オレたち”って言ってるスけど……。フルフルも含まれるんスか?」

「当然よ。むしろ諸悪はあなたにあるっていっても過言ではないわ」


 今度はフルフルを睨み付けた。


「え? ええええ? フルフル、何もわかんないッスよ! 身に覚えがないッス!全然……。ねぇ、ご主人……」


 主人はジト目で睨んでいた。


 明らかに疑っていた。


「ちょ! ご主人! なんスか! その猜疑心の塊みたいなまなこ(ヽヽヽ)は!」


 宗一郎はフルフルの肩に手を置いた。


「とっとと吐け……。何をした!!」

「ひぃいいいい!!! フルフル、ご主人の従順な下僕なのにぃ!!」

「心配するな。貴様に対する信用度などゼロどころかマイナスだ」

「なんスか! その日本の金利みたいな評価は!」

「さあ……。吐け! さもなくば、聖書を48時間に渡って読み聞かせてやるぞ」

「ぎゃああああああ! ちょっと待つッス、ご主人! 本当にフルフルは何も知らないんスよ! そもそもご主人は、目の前の女神と従順な下僕の言葉……どっちを信じるッスか!?」


 宗一郎は首を回す。


 片や頬杖をつき、ムスッとした顔でこちらを睨む女神。


 片や手を組み、天使のように顔を輝かせた悪魔。


 勝負は一瞬だった。


「…………」


 宗一郎は女神を指さす。


「なんでッスか! さっきの感動の再会はなんなんスか! フルフルの涙を返して下さいよ」

「……だいたいお前、オレに隠しごとをしてないと言い切れるか!?」

「フルフルは一切やましい事はしてないッス。せいぜい、ご主人が寝ている時の寝顔を写メで取ったり、添い寝したり、たまに淫夢とか見せて精液とか吸い取ったりしてませんから!」

「信用できるかああああああああああああ!!!」


 パンパンと手が叩く音が聞こえる。

 プリシラだ。


「はいはい。そこまで……。魔界漫才はよそでやってくれる」

「「誰が魔界漫才だ(ッスか)!!」」


 2人は声を揃えた。


 プリシラは前髪を掻き上げて、気を取り直す。


「まあ、その子がわからないのも無理はないわ。私もこの状況の発生源に至るまで気付かなかったしね」

「発生源?」

「最近、ようやく発見してね。……やっとからくりに気付いたのよ」


 そしてプリシラは、1機の携帯ゲーム機を取り出したのだった。


「あ゛あ゛!!」


 とんでもない大声を出して驚いたのは、フルフルだった。


 プリシラが出してきた携帯ゲーム機を指さす。


 埃と泥にまみれた本体の画面は沈黙しており、おそらくもう壊れて動かなくなっているのだろう。


「フルフルのゲーム機!!」


 素っ頓狂な声で叫んだ。


「お前、スマホどころか携帯ゲームまで!」

「いやいや、落ち着くッスよ、ご主人! 思い出してほしいッス!」

「何を!?」

「ご主人が異世界に行く時の話ッス。話数で言うと、第7部分の『行くッスよ! ご主人! 異世界へ!』を思い出してほしいッス」

「お前、何言ってんのだ?」


 部分? そしてそのサブタイみたいな台詞はなんだ?


「ご主人があるみ様と喋ってて、暇だったからRTAやってたッスよ。某RPGの!」

「あ!」


 宗一郎は思い出した。


 異世界に行く際、一度フルフルに急かされた時、ゲーム音か何かが聞こえてきていたような気がする。


「いや――。待て。それとどう関係がある。今のオーバリアントと」

「そうッスよ! ソースを教えてほしいッス!」

「まだわかんない? あんたも魔術の端くれでしょ。どうやってこの異世界に来たのか、忘れたわけ?」

「異世界に来た?」

「呪術も魔術も一緒でしょうが……」



                “あ?”



 思い……出した……。


 あの日、あるみに語った事を。

 その魔術の理論を。



“魔術において、その体系、術式、真名は重要の要素だが、もっとも重要なことは人間の概念イメージを総括する要素を押さえることだ”


“そうした概念イメージを、儀式の中に組み込むことが、魔術にとってとても重要なことなのだ”



「私の呪術もその理論において構成されている。……私の概念イメージはもちろん“ゲーム”よ」

「まさか……」


 宗一郎の背中を流れる冷や汗の量が、次第に多くなっていく。


 やっと気付いたか、というようにプリシラは「はあ」と息を吐いた。


「そのまさかよ。……この世界にかけたられた呪術の設定に、あんたの悪魔が持っていたゲーム機の内容が加算されてしまったのよ」


 目の前のコンソールを叩く。

 よく見ると、それは巨大なアーケードゲームだった。


 …………………………………………………………………………………………。


 2人は沈黙した。


 ぐうの音も出ないとはこのことだろう。


 確かにプリシラのシステムは、いくつかの欠陥がある。

 カカやヤーヤの例がそれだ。


 だが、確かに危うさはあったが、バランスがとれていた事は、宗一郎も評価はしていた。


 その危ういバランスを根底から蹴飛ばしてしまったのは、宗一郎たちだった。


 そしてオーガラストとの一戦。

 多大な犠牲を出した原因も、自分にあったということになる。


 知らなかったといえば、確かにそうだろう。


 しかし、それを見て見ぬ振りが出来るほど……。



 宗一郎の意識は低くなかった。



「これでも私を倒そうって思うなら、どうぞご勝手に……」


 打ってこい、と言わんばかりに、腕を広げた。


 しかし、先ほどまで向け続けていた敵意を、宗一郎は収めた。


 ずっと臨戦態勢だった拳を下ろす。


「わかった。今はお前を裁かないでおこう」

「今は……ね。あんた、自分が何しでかしたかわかってるの?」

「お前こそわかっているのか? 元凶は貴様だろう。そこに偶然、我々が関与してしまっただけだ。言ってみれば、オレたちは被害者であって、過度に責任を負う立場ではない」

「…………」

「だが、見て見ぬ振りはできん。放っておくと、どうなるかわからんし、貴様を殺して、呪術を完成させるわけにもいかない。……だから、今は(ヽヽ)は生かしておいてやると言っているのだ」

「チッ」


 女神は舌打ちを隠さなかった。


「それで? お前……。オレの身体を使って、何をしようとしていた?」


 ずっと最初の質問に戻る。


 どこかの王と謁見する光景。


 城外に出て、モンスターと戦闘し、敗れる様を思い出す。


「わかったわ。……その代わり、今後は私の指示に従ってもらう」

「承服出来る指示ならばな」

「ホントむかつくわ。……あんたと私は絶対に馬が合わないわね」

「そいつは光栄だ」


 ふん、と鼻を鳴らして、宗一郎はプリシラを睨んだ。


問題の『プロローグⅢ ~ 行くッスよ! ご主人! 異世界へ! ~』はこちらになります。

http://ncode.syosetu.com/n7907dd/7/


明日も18時更新です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作はじめました! よろしければ、こちらも読んで下さい。
『転生賢者の最強無双~劣等職『村人』で世界最強に成り上がる~』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ