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その魔術師は、レベル1でも最強だった。  作者: 延野正行
第2章 最強モンスター編
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第2話 ~ 大竜牙って書いてますよ! ~

サブタイ「お願いします。なんでもしますから……。」と悩んだ。


でも、さすがに内容がわからん。


第2話です。よろしくお願いします。

「フルフル殿……。スゴい顔であるが、大丈夫か?」


 出立の時間。

 泊まった宿のチェックアウトを終え、宗一郎、フルフル、ライカ、クリネは、村の入口に集まっていた。


 フルフルのやつれた顔を見て、ライカは声をかけずにはいられなかった。


「いやー。昨日、ちょっと激しいプレイが続きまして」

「プレイ!」


 ライカは思わず赤面した。


「お姉様……。プレイって?」

「く、クリネは知らなくていいことだ」

「……?」


 小首を傾げる。


「誤解を招くようなことを言うな。別に何もない」

「し、しかし、宗一郎殿……。昨日、寝ている時にフルフル殿のあ、あえぎ声のようなものが聞こえた気がしたのだが――」


 聞こえていたのか……。


 小さな宿場町だから仕方ない。

 苦情が来なかっただけマシだろう。


「気のせいだ。さっさと出発しよう」

「そ、そんなのか……」


 ライカは難しい顔をしながら、イメを引き、先導する宗一郎の後を追った。






「あれが、マキシア帝国とウルリアノ王国との国境にあるチマヌ山脈です」


 ライカは一度足を止め、指をさした。


 視界一杯に大きな山脈がそびえていた。

 白い雪をかぶった山々は、獣の歯のようにギザギザに尖っている。

 街道は剣呑な山へと向かい、切り込みが入った谷に続いている。


 まさに天然の要害。

 マキシア帝国が西へと領土拡大できたのも、チマヌ山脈があったからだろう。


 ライカの話では、マキシア帝国とウルリアノ王国は昔から不戦条約を結んでいるらしい。同盟というわけでもなく、お互い戦わないという約束だけをして、つかず離れずという関係をずっと続けてきた。

 両国ともおそらく戦うメリットがないと判断しているのだろう。

 そういう国の関係もあるのだな、と感心した。


「魔王の城というのは、そのウルリアノ王国にあるのか?」

「いえ。ここから南下したところです」

「なんだ? 直接向かえばよかったじゃないか?」

「魔王の城で1番近くの大きな町が、あそこしかないのです、宗一郎殿」

「町?」

「麓に町が見えるッス」


 フルフルが目の上に手を当てながら、声を上げた。


 確かに谷へと向かう街道の手前に、大きな町があった。

 城は見えないが、立派な石壁がぐるりと町を取り囲んでいる。

 おそらくマキシア帝国とウルリアノ王国の貿易の中継地点といったところなのだろう。


 思えば、先ほどから冒険者を連れた行商人たちが、やたらと多いような気がする。


「ライーマードと呼ばれる商業自治区です」

「自治区? 帝国に自治区なんてあるのか?」

「マキシア帝国とウルリアノ王国は通商条約を結んでおりません。だから、あの町を自治区として商人たちに開放し、ウルリアノ王国と交易させているのです」

「随分とめんどくさいことをしているのだな」

「帝国の中にも、通商条約を結べという声は多いのですが、肝心のウルリアノ王国が首を縦に振らないのです」

「それは何故だ?」

「対抗心と申しましょうか? 何かとあの国は、帝国を目の敵にするのです。それでもここ数十年以上、戦争はしたことがないのですが」


 ここまで来ると変わった関係だなと思う。

 ライカの態度にも表れているように、帝国の方はさほどウルリアノ王国を敵視していないように見える。


「やたらとクールで強い主人公に突っかかってくるライバルキャラ――みたいな感じッスね」


 フルフルのネタ台詞も、今日は的を射ていると思った。


「お姉様。ともかく町に入りましょう。……久しぶりにまともに湯浴みができそうです」

「なんだ、クリネ……。情けないぞ。なんなら、今から帝都へ帰るか?」

「か、帰りません。そんないじわる言わないで下さい!」


 姉の代わりにイメを引くと、クリネは大股でライーマードへと歩き出した。






 門で、軽い入国審査を受け、一行は町の中に入る。


「うっひょおおおおお!! 人が一杯ッスね!」


 360度どこを見回しても、人、人、人だらけだった。


「帝都とほどではありませんわ」


 と言ったのはクリネだ。

 まだ先ほどからかわれたことを気にしているらしい。

 むすっとした顔で、周囲を睨むように見つめている。


「確かに帝都ほどではないが、密度でいえば、こちらの方が多い。帝都の約半分ぐらいの広さしかないのに、人口はそれに匹敵するほどだからな」


 ライカが注釈を付ける。


「なるほど。多く見えるわけだな」


 宗一郎の目に引っかかったのは、帝都以上に並んだ露店だ。

 町のあちこちに店を構え、街壁にもずらりと並んでいる。


 帝都では露店を出せる場所が厳格に定められた上、申請も出さなければならないのだが、ライーマードでは全く規制がないのだろう。

 おかげでカカぐらいの子供まで、一端に声を上げて売り子をやっている。

 なかなか好評のようだ。


「ご主人! 何やってるッスか! 先に行っちゃうッスよ」


 フルフルの声が聞こえて、振り返る。

 仲間たちが先に言って、手を振っていた。


 少しボーとしていたらしい。


 ――ホームシックじゃないだろなあ……。


 宗一郎は今一度気を引き締めた。




 両側に立ち並ぶ露店を見ながら、宗一郎はライカに話しかけた。


「なあ、ライカ……。商人が多いのはわかるが、冒険者も多いのか?」

「うむ。……私もそれを考えておりました」


 形の良い顎に、ライカは手を当てる。


 宗一郎の前を、やたらと大きな剣を持つ戦士タイプの人間が2名、加えて神官、魔法士が横切っていく。

 さらに全身をフルメイルで覆った重装歩兵の一団。

 かと思えば、魔法士をばかり揃えた極端なパーティーもいる。


 ライーマードは確かに交易地だ。

 珍しい道具屋や、他では手に入らない武器防具を求めて買いに来るのはわかるが、商人の国なのに商人よりも目立って見える。


「うっひょお! ご主人ご主人! フルフル、これほしいッス!」


 まるで「おもちゃ買って!」とねだる子供みたいに、フルフルが指さしたのは、振り回すのもやっとな巨大な剣――というよりは棍棒だった。


「大竜牙って書いてますよ! うおおお! かっけぇえええええ!!」


 今度は本物の合体ロボを見た子供みたいに悪魔は目を輝かせた。


 大竜牙がその名の通り、竜の牙を1本引き抜いたような形状をしていた。


「おお! ねーちゃん! 目の付け所がいいねぇ! お安くしておくよ」


 軽快に声をかけてきたのは、武器屋の店主だ。


「ご主人!」

「買わんぞ」


 一蹴した。


「なんでぇ!? なんでぇ!? ご主人、宿経営を成功させた青年実業家じゃないスか」


 フルフルは宗一郎のズボンにすがりつく。


「経営権はとっくに手放した。そもそもお前は、武器を持ってるだろ。バスターソードは男のロマンじゃないッスか」

「え? もう……。とっくに飽きたんスけど」


 やだ。マジ、なに言ってんの。こいつ――ていう目で、フルフルは主人を見つめた。


「お願いします。なんでもしますから……。買って下さいよぉ」

「おい! ズボンを引っ張るな! 破ける!」

「ご主人! そこは『ん……?』って流れでしょうが!」

「訳わからんわ!」

「もう……。ノリが悪いご主人ッスね。仕方がない。身体を売るしかないか」


 ハア……。息を吐きながら、おもむろに装備を脱ぎはじめる。


「ねぇ……。店主……。フルフルのおっぱい触りたくないスか?」

「え? ええ?」


 戸惑いつつも、店主はこぼれるようなバストに釘付けになっていた。


「やめんか! 馬鹿者!」


 がつん!


 宗一郎の怒りの鉄拳が、フルフルの頭に突き刺さった。


「うおおお! 衝撃が頭を通って、背骨が歪んだッス」

「そこで反省してろ! 淫乱悪魔め。……すまないな。店主」

「あ……。いえ……。久しぶりにいいものを見たっていうか……。こっちは別に売ってもらっても――」

「あ――?」

「ああ、いやいや。何でもないよ。あははははは……」


 笑って誤魔化す。


「店主、1つ質問がある」


 仲間の1人が防具を脱いで店主を誘惑したというのに、ライカの声音はやたらと冷静だった。

 おそらくフルフルと過ごした日々が、彼女を強くしたのだろう。

 出会った頃であれば、クリネのように――向かいの露店の軒先まで退避するぐらい怯えていたはずだ。


 すまん、クリネ……。

 宗一郎は心の中で詫びた。


「やたらと武器の値段が高くないか? 帝都でもこの値段の半値程度だぞ。それに何故、対ドラゴン用の武器ばかりなのだ?」


 確かに……。

 値段などはわからないが、武器の名前を見る限り、対ドラゴン専用の武器ばかりだった。


 大竜牙に、ドラゴンキラー。

 ドラゴンスレイヤー、ドラゴンデストロイ、ドラゴンブレイカー。

 大龍壊棍というどう読んだらわからない四文字熟語の武器まである。


 防具も炎耐性が上がるものばかりが、揃っていた。


「なんだ、あんたらドラゴン討伐のためにやってきたんじゃないのか?」


「「「「ドラゴン討伐?」」」」


 宗一郎一行は声を揃えた。


ドラゴンと来ましたねぇ……。

果たしてどんなドラゴンなのか?


明日も18時です。

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