表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その魔術師は、レベル1でも最強だった。  作者: 延野正行
終章 異世界最強編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

322/330

第83話 ~ ラストバトルといこうではないか ~

どうぞ皆様がお好きなラスボス曲を流しながら、

お楽しみ下さい。

(※ 個人的にはロマサガ2が好み)

 ルナフェンの瞳が光る。

 魔法瓶よりも遙かに太い腕の筋肉が盛り上がった。

 肩を覆っていたパットが弾け飛ぶ。

 瞬間、魔王の身体が大きく膨らんだ。


 廊下の天井を突き破る。

 尚もルナフェンは肥大していった。


 顎を大きく張り出し、頭から生えていた角はサーベルのように伸びていく。

 胸は城門のように鋼鉄に進化し、同時に腹もせり出した。

 漆黒の翼は羽根をまき散らしながら、さらに横へと広がっていく。

 ついに廊下の壁をぶち抜いた瞬間、床は自重に耐えきれなくなっていた。


 轟音を立てて、廊下が崩れる。


「まなか姉、逃げろ!!」


「宗一郎くん!!」


 ローランに向かって、風の魔法を打ち込む。

 王女は吹き飛ばされ、廊下の奥へと消えていった。


 一方、宗一郎とルナフェンは、真っ逆様に落ちていく。


「くっ!」


 宗一郎は魔術を使う。

 足にパズズの力を集約した。

 風の力は、すべての衝撃を吸収する。

 ふわり、と天使のように降り立った。


 宗一郎は顔を上げた。

 かなり落とされたらしい。

 天井が見えない。

 どうやら城1階の大広間のようだ。

 明かりはなく、薄暗い空間が広がっていた。


 ガンッ!!


 突如、一緒に落ちてきた瓦礫が弾け飛ぶ。

 宗一郎は振り返った。

 ゆっくりと巨体が持ち上がる。

 臭水のような匂いが立ちこめると、暗闇の中でポッと炎が輝いた。


「――――ッ!!」


 さしもの現代最強魔術師も息を飲んだ。


 それは巨大な竜だった。

 曲刀のような牙。

 ただ立っているだけなのに、床に食い込んでいく鋭い爪。

 腹は大きく、その気になれば山すら飲み込めそうだ。


「ふおおおおおおおおおおおおおお!!」


 吠声を上げる。

 何層にも重なった音の層が、瓦礫を弾く。

 周囲の大柱すら吹き飛ばしてしまった。


 ばっと翼を広げると、より体躯の大きく見えた。


 ギョロリと紅蓮の瞳が動く。

 宗一郎を睨み付けた。


「それがお前、真の姿というわけか……」


 宗一郎が尋ねる。

 ルナフェンの声が、直接魔術師の頭に響いた。


『そうだ、勇者よ。旧女神(プリシラ)風にいえば、そういう仕様(ヽヽヽヽヽヽ)ということらしいがな』


「なるほど。あいつらしい……」


『さあ、勇者よ』



 ゲーム世界のラストバトルといこうではないか……。



 宗一郎は肩を竦めた。


 まったく……。

 どいつもこいつも……。


 メメタしすぎる(ヽヽヽヽヽヽヽ)だろう!!


 竜となったルナフェンが、吠声を上げる。

 それはまさしく開戦の合図となった。


 宗一郎は突っ込む。

 足にパズズの魔術を打ち込んだままだ。

 驚異的な速力に、ルナフェンはついていけない。


『小癪な……!』


 口内が光る。

 間髪入れず炎息を放った。

 薄暗い城内1階がたちまち紅蓮に包まれる。


 宗一郎は回避に成功していた。

 竜のサイドを取る。

 パズズの力を全力発揮!

 ミサイルのように飛び出す。


「アガレス……。かつての力天使よ。お前の打ち破る力を、オレに示せ!」


 宗一郎の拳が赤光に染まる。

 渾身の力を込めて振り抜いた。


 見事、ドラゴンの顎を捉える。


「なにぃ!!」


 宗一郎の顔が驚愕に歪んだ。

 タイミングも魔力の放出も完璧だった。

 防御されたり、バフがかかった様子もない。

 もし、これが竜種最強オーガラストであるなら、間違いなく吹き飛ばされていたはずだ。


 しかし、竜は立っていた。

 微動だにしていない。


 一瞬、ルナフェンと目が合う。

 瞼を細めた表情は、怒っているようでもあり、笑っているようでもあった。


 口内が光る。

 紅蓮の炎が宗一郎に向けられると、発射された。

 たちまち勇者は炎に包まれる。

 ダメージ判定がなされ、体力ゲージがみるみる減っていった。


「くっ!!」


 回避する。

 巨大な炎から抜け出した。

 一旦距離を取る。


『無駄だ、勇者よ。お前の魔術は我には効かぬ。考えてもみよ。アガレスは我が眷属。さらにいえば、我より下位の守護天使だ。その力が通じぬのは道理』


「本当にルシフェルなのか……」


 いや、そうとしか考えられない……。

 2度も天使クラスの魔術を防がれたのだ。

 これはまさに奇跡的な所業だろう。


 失楽園後のルシフェルの所在は、神学者の中でも意見が分かれるところだ。


 まさか異世界で本当に魔王をやっているとは……。


 いや……。

 今は、それを議論する場ではない。

 今やるべきことは、魔王を倒し、一刻も早くラフィーシャに追いつくことだ。

 何故、新女神を庇うのか、検討もつかないが……。


 宗一郎は道具袋から回復薬を取りだした。

 一気に呷る。体力ゲージが80%にまで回復した。

 魔術が無理であれば、答えは1つだ。

 ゲーム側の力を使って、叩き伏せるだけ。


 魔法を唱える。


 【鉄身鉄心(アトレイ)】!


 勇者固有の魔法だ。

 全ステータスに加え、弱体耐性も向上させる。

 上昇値、汎用性すべて――強化バフでは最強を誇る。

 だが、これに追随するほどの魔法があった。


 【竜族付与ドラゴニック・マテリアライズ】!


 すかさずルシフェルもバフ系の魔法を唱えた。

 その効果は【鉄身鉄心】と変わらない。

 魔王が使える固有魔法だった。


 この状態で、バフを剥がすのは、不可能だといっていい。

 封印系魔法に対する効果も、弱体耐性向上によって、かかる可能性はほぼ0%に近い。


 お互い後出来ることは――。


 正面から殴り合い。

 それ以外の選択肢はなかった。


 宗一郎は今一度床を蹴る。

 足にパズズの守護を纏っていた。

 スピードで攪乱しながら、大柄な魔王の視界に入ろうとする。


 ルナフェンは笑った。


『それも少々ずるいのではないか?』


 竜の指先が光る。

 瞬間、パズズの守護が剥がれた。

 これはゲーム側の魔法ではない。

 ルシフェルとしての力だ。


 宗一郎の動きが一瞬鈍る。

 好機とばかりに、ルシフェルは炎息を吐いた。

 火塊が散弾銃のように飛び散る。

 降り注ぐ炎弾を宗一郎は、なんとか回避した。


 パズズの力が剥がれても、勇者は攻勢の手を止めない。


 手を掲げた。


 【爆砕炎(ブラスト・ボドム)】!


 ルナフェンの顎の下付近が赤くなる。

 瞬間、収束した魔力が弾けた。

 大爆発が巻き起こる。


 任意の場所に炎弾を打ち込める魔法だ。

 汎用性こそ高いが、その威力は最強クラスの中では見劣りする。

 事実、魔王のゲージは5%しか減少しなかった。


 だが、宗一郎は突っ込む。


 勇者の狙いはダメージではない。

 ルナフェンの顎を上げること。

 それによって、炎息による反撃を封じることが出来る。


 2秒にも満たない間隙――。


 宗一郎にとっては、十分すぎる時間だった。


 【千歩(カット・ゾーン)】!


 消える――。

 1秒で竜の懐に潜り込んだ。

 すかさずスキル名を唱えた。


 【獣進連撃(ライオン・アタック)】!!


 攻撃行動がセットされる。

 宗一郎は剣を振り上げると、そのまま連撃技へと突入した。

 獣王の突進を思わせる一撃は、魔王の喉元を抉る。

 ダメージ判定が、ルビーのように強く輝いた。


『おおおおおおおおお!!』


 ルナフェンは押される。

 アガレスの力ですら押し切れなかった竜が、仰け反った。

 ノックバック判定だと気付くと、宗一郎はさらに押し込んだ。


 【剣嵐闘舞(ソニック・フルーレ)】!


 【双龍激斬(そうりゅうげきざん)】!


 連撃系の2連撃。

 ドラゴンの巨体が折れる。


 ――いける!!


 宗一郎はとどめといわんばかりに魔法を唱えた。


 【雷霆の陪審(トール・ハンマー)


 単体系雷属性最強魔法。

 大樹の根本を思わせるような巨大な光が降ってくる。

 そのまま魔王に叩きつけられた。


『うぉおおおおおおお!!!』


 魔王ルナフェンの悲鳴が、天空城ワンダーランドに突き刺さった。


終章第83話でした。

まだ続きます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作はじめました! よろしければ、こちらも読んで下さい。
『転生賢者の最強無双~劣等職『村人』で世界最強に成り上がる~』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ