表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その魔術師は、レベル1でも最強だった。  作者: 延野正行
終章 異世界最強編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

293/330

第54話 ~ ゲーマーの執念を舐めてもらっちゃあ困りますなあ ~

サブタイ見るだけで、宗一郎とフルフルのコンビが帰ってきた気がするw

 右腕が疼く。

 自分の身体から残りわずかな魔力が吸い出されていくのがわかった。

 接続する魔力の波形でわかる。

 おそらくクローセルだろう。


 悪魔化をし、どうやら暴れ回っているらしい。


 城へはフルフルの力を使って飛んできた。

 その折りに、下で海戦が見え、マキシア軍旗がなびいているのが見えた。

 たぶん、ライカがいる。

 それをクローセルが守っているというわけだ。


 正直にいえば、今すぐにでも城を飛び降り、助けにいってやりたい。


 だが、そんなことをすれば、ライカに怒られてしまう。

 きっと彼女なら「勇者としての務めを果たせ」と叱咤するだろう。


 今は部下を信じるしかない。

 幸いクローセルは優秀。

 海戦ともなれば、最強の悪魔ベルゼバブすら圧倒できる実力を持っている。


 問題は、宗一郎の魔力が持つかどうかだ。


「ご主人……」


 いつも元気なフルフルが心配そうに目を細めた。


 主人の状況は手に取るようにわかっている。

 少ない魔力でなんとか3体の悪魔を顕現させているのだ。

 1体は現在、真の姿をさらし交戦している。

 今、意識を切らせば、下で戦うライカが危機に陥る。

 ここに来るまでも、魔力を使った。


 華々しく登場はしてはみたものの、宗一郎の身体はぼろぼろだった。


「心配するな。もうすぐベルゼバブも応援にかけつける。まあ、その前に城を攻略してしまうかもしれんな」


 口角を上げる。


 あくまで宗一郎は強気だ。

 契約悪魔としては、主の言葉を信じるしかない。


『威勢のいい啖呵を切った割りに、お顔が優れないようね、勇者様』


 声は頭上から降ってくる。

 天を仰いでみたものの、人らしきものはいない。

 深い闇が広がっているだけだ。


「ラフィーシャか」


『ようこそ、我が天空の城へ。しかし……少々ノックとしては乱暴すぎるかしら。城門を壊さなくとも、歓迎しましたのに』


「呼んでも返事がなかったのでな。挨拶の代わりとして受け取ってくれ」


『全く減らず口ね……。その強気はどこから来ているのかしら』


「お前こそ、その強気をいつまで続けられるかな。俺が来たからには、お前の野望をくじいてみせるぞ」


『うふふふ……。これを見ても、そんなことをいえるのかしらね』


 地響きが聞こえる。

 城の奥の影が揺らいだ。

 巨大な影、小さな影、様々な形の影がゆっくりと近付いてくる。

 地面を揺らし、涎を垂らし、吠声を漏らす。

 獣臭が鼻を突いた。


「モンスター……」


 そこにいたのは、かつてオーバリアント全土に生息したモンスターたちだった。


 かつてない大軍勢が、勇者一向に迫ってくる。


 だが、それを見て色めきだったのは、ゲーム狂の悪魔だった。


「うっほ! やった! もう1回遊べるドン!」


 フルフルは嬉々としてモンスターに突撃していく。

 どうやら痴女悪魔には、経験値にしか見えていないらしい。

 大剣をどこからか取り出す。

 空中で一回転しながら、大上段から振り下ろした。


 ガンッ!


 攻撃を受け止めたのは、リザードブルというモンスターだった。

 リザード系の最強種。

 大蜥蜴でありながら、2本の足で立ったモンスターは、フルフルの大剣を容易く受け止める。

 そのままフルフルごと振り回し、放り投げた。


 轟音と共に、悪魔は城の壁にめり込む。


「およよ……?」


 瓦礫の中から顔を出す。

 パチパチと瞬いた。


『ふふふ……。なかなか強いでしょ、私の城の守護者たちは』


 ラフィーシャは高笑いを決める。

 空気がビリビリと震え、ひどく耳障りだった。


『その子たちのレベルは300を超えてるのよ』


「――――!」


『私が強化したの。余談だけど、最近流行ってるのよ、強化魔法って。私は女神だからね。これぐらいの芸当は問題なく行えるわ』


「…………」


『で? あなたたちのレベルはいくつかしら。ちょっとは強くなったみたいだけど、レベル300のモンスターに勝てる? ……ふふ。無理でしょうね。モンスターは私がすべて引き上げさせたもの。モンスターを倒さなければ、経験値を得ることはできない。それが旧女神が残したゲーム世界のルールなんでしょ?』


 ラフィーシャがいうことはすべて正しかった。

 モンスターがいなくなったことは僥倖だ。

 しかし、それによってレベルアップが不可能になっていた。


 唯一モンスターが残っていた【エルフ】へ続く【旅の祠】は、宗一郎の手によって破壊されている。

 実質、オーバリアントでレベルを上げることは不可能になっていた。


 だが――。


「ぷっ」


 宗一郎は突然吹き出した。

 肩を震わせ、くつくつと笑う。


『どうしたの、勇者? 気でも触れたのかしら』


「いや、俺は正常だ。ただちょっと、な。随分、お優しい女神だと思っただけだ」


『なんですって?』


「レベル300のモンスターに勝てるだと? それはお前の目で確かめるんだな」


 宗一郎もまた駆けだした。

 モンスターの群の中に飛び込む。

 旧女神からもらったピュールの魔法剣を抜き放った。

 フルフルと同じく大上段から振り下ろす。


 剣線が縦に閃いた。


 わずかに遅れ、リザードブルの身体に赤い光線が輝く。

 致命判定がされると、そのまま消滅した。


『なに――』


 珍しくラフィーシャは息を飲んだ。


 さらに宗一郎は周りにいたモンスターに襲いかかる。

 剣を振り回し、確実に屠っていく。


 すべて一撃判定。


 弱点への攻撃だけで達成できるものではない。

 モンスターはラフィーシャが手塩にかけたレベル300のモンスター。

 体力も桁違いに多い。

 にも関わらず、宗一郎を前に飴のように消滅していった。


 つまり、これは勇者の攻撃が桁違いに大きいということだ。


「何をさぼっている、フルフル。こっちへ来て手伝え」


「あは……。演出ッスよ、演出」


 瓦礫を吹き飛ばし、フルフルが参戦する。

 再び大上段から大剣を振り下ろした。

 先ほど受け止めたリザードブルが再び手を掲げる。


 だが、今度は違う。


 腕ごと一緒に切り裂いた。

 さらにぐるぐると大剣を回すと、周りのモンスターを1度に消滅させる。


 宗一郎だけではない。

 フルフルの攻撃力も桁違いに強い。


 ――何故だ?


 ラフィーシャは分析した。

 すでにモンスターはオーバリアントにはいない。

 経験値を得られる場所などなかったはず。


『そんな……。馬鹿な!』


 つい叫んでしまう。


 むふふふ……口角を上げたのは、フルフルだった。


「訳がわからないッスか、ラフィーシャたん。でも、ゲーマーの執念を舐めてもらっちゃあ困りますなあ」


『一体、どうやってレベルアップを』


「簡単だ。モンスターを倒してレベルアップした」


『だから、そのモンスターはどこにいたのよ!?』


「ふ……。それはお前の面前で説明してやろう」


『ふざけるな! その前に消し炭にしてやる!』


 ヒステリックな声が響いた。


 直後、再び地響きが起こる。

 各種のモンスターを蹴散らし、城の奥から現れたのは、因縁の相手だった。


「キシャアアアアアアアアアアアッッッッ!!」


 鋭い吠声が、天空城砦に突き刺さる。

 大きな羽根を広げ、長い首をもたげた。

 両足に鋭い爪。さらに赤黒い皮膚は、岩石のような鱗がびっしりと生えている。


 オーガラスト。


 かつて宗一郎とライカたちを苦しめた竜系のモンスターだ。


 その竜の口内が赤黒く光る。

 得意の炎息をフロア一杯に吐き出した。


 宗一郎は道具袋から盾を取り出す。

 如何にも炎属性が強そうな形状をした盾は、【炎帝の盾】という。

 旧女神プリシラからもらったものだ。


 その効果を使い、宗一郎はオーガラストの炎息を完封する。

 いかにレベルアップしているとはいえ、ゲーム上の性質を覆すことは出来ない。


 オーガラストはムキになって、炎息を強めるが効果は皆無だ。


「行くッスよ!」


 その間に、フルフルが背後に回り込む。

 一対の羽根を切り飛ばした。


 突然、襲ってきた灼熱の痛み。

 溜まらず、オーガラストは仰け反った。

 悲鳴を上げながら、悶える。

 しかし、それもわずかな時間だった。


 竜の目に映っていたのは、1人の人間だ。


「終わりだ!」


 宗一郎はピュールの魔法剣を薙ぐ。


 竜頭に赤い判定が灯った。

 次の瞬間、オーガラストは断末魔の叫びを上げる。

 大竜はもんどり打ちながら、消滅した。


 まさに一瞬の出来事だ。

 竜種最強のオーガラスト。

 しかも、女神の強化付き。

 当然のことながら、かつて宗一郎たちが苦戦したオーガラストよりも遙かに強い。


 だが、あっさりと倒してしまった。

 無傷でだ。


 宗一郎は剣を払う。

 口角を上げて、新女神を挑発した。


「さあ……。次は誰が相手なんだ?」


最新作『アラフォー冒険者、伝説になる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~』が、7月10日に発売が決まりました。

Amazonでも予約が始まりましたので、よろしければ……。

ツギクル様などで、スペシャルサンクスキャンペーンをやっていますので、

そちらもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作はじめました! よろしければ、こちらも読んで下さい。
『転生賢者の最強無双~劣等職『村人』で世界最強に成り上がる~』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ