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その魔術師は、レベル1でも最強だった。  作者: 延野正行
第4章 異世界冒険編

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第62話 ~ ちなみに頭に“美しい”をつけるのよ ~

第4章第62話です。

よろしくお願いします。

 燃えるような赤い髪。


 同じく赤い瞳。


 童顔の小さな顔と背丈が相まって、少年のように見えるが、放たれるオーラは歴戦の猛者のそれと同じものだった。


 帯剣はしておらず、高価な鎧だけが身なりの中で否が応でも目立っている。


 宗一郎は1度――いや、2度会っていた。


 1度はギルドで、2度目は牢屋で、だ。


 そう――いつも過剰ともいえる自信を漲らせ、「ししっ」と音が聞こえてきそうなほど、遠慮のない笑みを浮かべていた。


 率直言えば、忘れてしまいたいほどの鬱陶しい性格のキャラクター。


 しかし、その1度聞けば忘れられない肩書きは、決して生半可なものではない。



 冒険者最強……。



 ギルドが確認している最高値――Lv190を保持する唯一の冒険者……。


「ミスケス・ボルボラ様とは俺様のことだ!」


 ぐっと親指を突き出し、自己アピールをする。


 ――モノローグ長くないか……。


 辟易しながら、宗一郎は肩を落とす。


 そう――。


 ライーマード。そのギルドで出会った自称冒険者最強ミスケスが、突如宗一郎の前に現れたのである。


「どういうことだ、プリシラ」


 と睨むのだが、追及を遮ったのは当のミスケスだった。


「おいおい。プリシラちゃんを責めるのはお門違いだぜ。だいだい、それは俺様の台詞だ。なんでお前がここにいるんだよ」


 ムカッ……。


「俺様はプリシラちゃんとただ仲良くデートしてただけだぜ。そこになんでお前みたいなレベル1がいんのかって聞いてるんだよ」


 ムカッ! ムカッ!


 従者であるフルフルはともかくとして、普段はむやみに敵意や殺意を向けない宗一郎の顔が、どんどん紅潮し、歪んでいく。


 怨念めいた眼差しを向けたのは、ミスケスではなく――やはりプリシラだった。


 女神もただ黙っていたわけではない。


 はあ、と息を吐き、銀髪をかき上げた。


「ミスケス……」

「なんだい、プリシラちゃん」

「少し黙れ!」

「え?」


 ミスケスの顔が一瞬にして青くなるどころか氷漬けにされたかのように固まる。


「それと私のことをちゃん付けで呼ばないで」

「じゃ、じゃあ……。なんていえば」

「そうね。……ご主人様でいえば、いいわ。――ちなみに頭に“美しい”をつけるのよ」

「わかりました。美しいご主人様」

「うむ」


 プリシラは深く頷く。


「お前、そういう趣味があったのか……」

「別に……。でも本気でいうとは思わなかった」


 つまりはミスケスがバカだったということだ。


「で――。改めて聞くが、なんでこいつが……」

「あ! お前、それ!!」


 いきなりミスケス(バカ)が声を上げた。


 宗一郎が持つ剣を指さしている。


「【ピュールの魔法剣】じゃねぇか!!」

「ピュールのまほうけん?」

「なんだ? 知らねぇのか? これだからレベル1は――」


 ムカッ! ムカッ! ムカッ!


 次、何かむかつくことを言ったら、殴ろう!


 宗一郎は固く心に決めた。


「ピュールっていう鍛冶屋のおっさんが錬成した魔法剣だ。この世に10本しかないっていわれてて、激レアの武器なんだぜ」

「ほう。特徴は?」

「職業、レベルとわず、誰でも使える。けど、攻撃力は最強クラスっていう噂だ」

「オレでも使えるというわけだな」

「そうだ。だけどもったいねぇなあ。一定レベルの人間が使うと、長距離の魔法を撃ち放題って聞いてるんだけどな。なあ、それ――俺にくれよ」


 ミスケスは手を出す。


 宗一郎はプリシラを見つめた。


「ダメに決まってるでしょ」

「――だそうだ」


 レア品などに興味はない。

 だいだい……。なんで、そんなものをプリシラが渡したのか、宗一郎にはいまだ理解できていなかった。


「えー。なんでだよ、プリ――美しいご主人様」


 ――本当に続けるつもりなのか、その呼び方……。


「あんたはもっといい武器を持ってるでしょ」

「持ってるけど、売れば金になるし」

「売るつもりだったのか」

「ああ……。おかげさまで今、文無しだしな」


 そう――。

 そもそもここにミスケスがいるのがおかしいのだ。


 宗一郎が確認したところによれば、ファイゴ渓谷に【太陽の手(バリアル)】を持ち込んだ冒険者のほとんどが捕まった。


 このミスケスも例外ではない。

 本来なら、今ごろ牢屋の中のはずだ。


「改めて聞くが。お前――なんでこんなところにいる?」

「それは美しいご主人様に聞いてくれよ」


 宗一郎はプリシラに向き直った。


 何故かドッと疲れた様子の女神は、無垢なピンクの唇を開いた。


「こいつを牢屋から連れ出したのは、私よ」


 素直に白状したあと、プリシラは話を続けた。


「その理由を語る前に、今回オーガラスト討伐における私の考えを述べさせてもらうわ」

「お前の考え?」

「ずばり! レベル戦を挑む」

「――――!」


 宗一郎は眉をひそめる。


 かまわずプリシラは説明を続けた。


「さっきも言ったけど、今回は念には念を入れて、オーガラストを倒そうと考えてる。つまり、宗一郎(あんた)がいつもやってるやり方じゃなくて、ゲームに沿ったやり方を通そうってこと」

「それはいいけどよ、美しいご主人様」


 思わぬ方向から疑問を呈されて、プリシラの眉がぴくりと動く。


 いい加減、呼び方がうざく感じてきたのだろう。


「レベル戦を挑むのはいいけど、俺たち200万もダメージ与えて倒れなかったんだぜ。単純にレベル戦を挑んで勝てるのかよ」

「たまにはまともなことをいうのだな」

「あ゛あ゛!! 俺はいつもまともなことしか言ってないぞ、こ゛ら゛ぁ゛!!」


 ミスケスは宗一郎に顔を近づけ凄む。


 2人の視線の間に火花が散る。

 ――かと思いきや、宗一郎は全く相手にせず、涼しい顔をしていた。


「もっとも疑問だけど、多分大丈夫よ。今回はちゃんと勇者がいるからね」

「こいつがいた討伐隊も倒せなかったんだろ?」

「ああ……! もう! ややこしいわね。とりあえず、今はその疑問は横に置いておきなさい」

「へーい」


 明らかに不満顔だった。


「今回は俺が勇者の設定になってるから、オーガラストは倒せるといいたいのだろうが……。果たしてそううまくいくか?」

「それも未知数……。出たとこ勝負するしかないでしょ」


 オーバリアントで女神といわれている存在にしては、やたらとアバウトな作戦に、宗一郎はただ息を吐くしか出来なかった。


 プリシラは話を戻す。


「だけど、あんた1人じゃあ倒せないでしょ」

「そこで冒険者最強(こいつ)の出番か」

「そ。さっきギルドに寄って、私とミスケス(こいつ)と、宗一郎(あんた)のパーティー申請はしておいたから」


 パーティー申請をしておかないと、仲間が与えたダメージに自分が与えるダメージを蓄積することができない。


 仲間が側にいても、申請をしなければ、ソロ攻略しているのと一緒なのだ。


「ミスケスは馬鹿だけど使えるわ。冒険者最強もレベル190も伊達じゃないし」

「そうだぜ。俺ぐらいになれば、野良のオーガラストぐらい1人で倒せるんだぜ」


 偉そうに胸を反らす。


 ――馬鹿って言われているのに気づいてないのか、この冒険者最強……。


「私とミスケスが削るから、とどめはあなたにお願いするわ」

「それも念には念を――か」

「そ。勇者がとどめを刺さないとね」

「そのための剣か」

「あんたのレベルじゃ。傷1つつけられないからね。多少は攻撃力をアップさせておかないと。それとも今から、レベルを上げる? 私なら、レベルMAXにだってしてあげられるけど……。」


 プリシラはニヤリと笑う。


 意地悪い顔を払いのけ、宗一郎は言った。


「今さら、レベルなんて上げてられるか」

「そういうと思ったわ。変なとこで頑固よね。あんたって――」

「ほっといてくれ」


 首を振る。


 いちいち苛つかせる女神だ。


「これでわかったでしょ。こいつを連れてきた理由。そしてオーバリアント討伐の私のプランが」

「わかったにはわかったが。随分と俺が思い描いていたよりも厄介だな」

「前みたいにワンパンで倒そうなんて短絡的な考え方をしてるから、そう思うだけよ。ゲームの世界とはいえ、きちんと戦略と装備を調えないと、雑魚でも負けちゃうんだから」

「気のせいだろうか。……ローレスの周りの雑魚に、何も考えず突っ込んでいって、ゲームオーバーになった元OLで、今は女神をやってるゲーマーがいたような気がするのだが」

「あ、あれはちょっと運がなかっただけよ」

「ほう……」

「なあなあ。ちょっと聞きたいんだが……」


 手を挙げたのは、ミスケスだった。


「さっきからレベルをMAXとか女神とかいってるが……。あんた、本当はなんなんだ?」


 と睨む。


 宗一郎はプリシラにそっと顔を近づけると、囁いた。


「お前、こいつになんて言って連れ出したんだ」

「オーガラストを倒すの手伝ってっていっただけよ」

「じゃあ、お前が女神ってことは?」

「教えるわけないでしょ。恥ずかしいじゃない。女神が女神ですぅなんて……。なんか合コンで自己アピールしてるイタい女みたいじゃない」

「そこか!」


 思わずツッコんだ。


「で――。どうするんだ? 女神だってばらすのか?」

「嫌に決まってるでしょ。ただでさえ、ご主人様とかいわれているのに」

「お前の頭はニワトリ以下か! お前が言わせたんだろ?」

「ああ、そうでしたわね。わるぅございました。……ともかく、絶対女神なんて言わないでよ。金輪際!」

「はいはい」

「なんだよ。俺をのけ者にするなよ」

「「うわぁ!!」」


 2人の間にミスケスが入ってくる。


「で? 本当はあんた何者なんだ?」

「ゆ、勇者から説明してもらうわ」

「オレか!!」


 ミスケスはじっと睨む。

 酒に酔ったかのように目が据わっていた。


 宗一郎は咳を払う。


「ミスケス。こいつは名前が一緒なだけで、自分が女神だと思っているイタい女なのだ」

「あんた、なんてこと言ってるのよ!!」

「まあ、それなら仕方ねぇな」

「あんたも納得してんじゃないわよ!!」


 こうして宗一郎は女神と冒険者最強を引き連れ、オーガラスト討伐に赴くことになった。


というわけで、オーバリアントで考えられる限りの最強メンバー組んでみたw

この中に、ロイトロスとか入れても面白かったかもしれません。


ちなみにミスケスはこの前のお話に出てきたのは、ここで登場してもらうためでした。


明日18時に更新します。

よろしくお願いします。


※ 本日『異世界の「魔法使い」は底辺職だけど、オレの魔力は最強説』を21時に更新します。

  よろしくお願いします。



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