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その魔術師は、レベル1でも最強だった。  作者: 延野正行
第1章  帝国最強編
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第7話 ~ 主従の関係というのは、時として一線を ~

第7話です。

よろしくお願いします。

「いやー。ご主人も言う時は言うッスねぇ」


 客間に通され、2人っきりになると、フルフルはケラケラと笑った。


 ごつんっ!!


 重たい音が客間に響く。


 フルフルは大きなこぶが出来た頭を抱えた。

 宗一郎は拳を握り込んでいる。その瞳は真っ赤に燃え上がり、心なしか口からは白煙が上がっていた。


「誰のせいだと思っているのだ、この悪魔め」

「そんなに怒らなくてもいいじゃないッスか……。フルフルは精一杯やったッスよ」

「お前は、ほーとかへーとか言いながら、写メ撮ってただけだろうが!」

「てへぺろ」

「誤魔化すな!!」


 もう一度、悪魔の頭に拳骨が振り落とされる。

 マジ頭割れるッス、と言いながら、フルフルは蹲った。


 宗一郎は客間を見渡す。

 下手なホテルのスイートルームよりも、豪勢な部屋だった。


 天蓋付きのベッドに、暖炉。

 木製の柱の補強には鉄ではなく金が使われている。

 陶磁器のような滑らかな白の茶器一式。それが置かれたテーブルも磁器で出来ているようだった。

 ソファや椅子にも職人のこだわりが見て取れる。


 おそらく他国の要人用の部屋なのだろう。

 色々あったが、もてなすつもりはあるらしい。


 さすがに盗聴、盗撮の類いはないだろうが、宗一郎はカーテンを閉めた。


 テーブルには、先ほどメイドらしき女がお茶を用意してくれた。だが、一切手を付けず、宗一郎は話し始めた。


「お前はどう思う?」

「何がッスか?」

「この世界のことだ」

「なんだ。この歓待の仕方のことかと。男女一組に対して、ベッドは1つなんて何を考えてるんスかね」


 頬を染めながら、フルフルはしなを作る。


「真面目に答えろ」

「ぶー。……そッスね。フルフルは楽しいッスよ」

「お前はそうだろうな」


 大好きなゲームがベースになっている異世界だ。

 悪魔のフルフルにとってみれば、天国に相違ない。


「でも、出来すぎッスよね」

「……やはりそう思うか?」

「異世界に来たというよりは、ゲームの中に放り込まれた感じッス。フルフル、楽しいからいいですけど」

「同じことは、オレも思った。……しかし、これは現実だ」

「ところで、このステータスって、いつ付けられたんスかね」

「お前にも見えるのか?」

「もちろんッスよ」


 意外だった。

 魔術によって、異世界へと移動してきた宗一郎とは違い、フルフルは自分で呼び出した悪魔だ。


 そのフルフルにステータスを与えられていることは、予想外だった。


「おお!」


 突然、フルフルは小さく声を上げた。


「どうした?」

「ステータスのところをタッチすると、詳細に出てくるッスよ」

「なに?」


 試しに宗一郎もやってみる。

 本当に現れた。

 「体力」「魔力」「レベル」しか表示されていなかった枠が広がり、数値の羅列が増えた。


 体力  :  14

 魔力  :  05

 レベル :  01


 ちから :  08

 耐久力 :  05

 魔性  :  04

 素早さ :  04

 適応力 :  09

 運   :  02


「この『魔性』と『適応力』というのはなんだ?」

「たぶん、『魔性』というのは、魔法適応性みたいな感じじゃないッスか?」


 自分のステータスを見ていたフルフルは答える。


「んで……。『適応力』ってのは、扱える武器のレベルとかに応じてるんじゃないスか」

「さすがに、そこら辺は詳しいな」

「ふふん。これでもゲーマー歴40年のベテランっスから」


 悪魔は胸を張る。


「ジョブは《すっぴん》とあるな。これはわかる。無職ってことだな」

「なんかその言い方……。身も蓋もないッスね」


 主人の言い方に、フルフルは苦笑いを浮かべる。


「これって……。本当に神様の奇跡なんスかね。悪魔のフルフルとしては、少々バツの悪い力なんスけど」

「なんだ……。気付いてないのか?」

「何がッスか?」

「これは神の御業ではない」

「なら、何なんスか?」



「これは呪いだ……」



 …………。


 主人の答えに、さしもの悪魔も絶句した。


「おそらく高度に仕組まれた呪術の一種だろ。……専門外だが、間違いない」

「ご主人でもこの呪いは解けないッスか?」

「今は無理だな。《フェルフェールの瞳》で術者を見て、呪術の術式を暴くことが出来れば可能だが、自力での解呪は難しい」

「ご主人にも不可能はあるんスね」

「その言葉を今、口にするな」

「あい」


 三撃目を恐れて、フルフルは頭を防御した。


「おそらくレベルアップシステムを授けたという女神プリシラも、神などではない。人間――しかも、我々のような現代人である可能性が高い」

「ゲームの概念がふんだんに取り入れられた世界ッスからね。……100%ではなくとも、8割ってとこスかね」

「むろん、断定はできん。だが、レベルやステータス、モンスターという言葉――その意味や使われ方から考えても、このオーバリアントから生まれたとは到底思えないからな」

「――となると、呪術師ってことになるッスかね。……いやー、ご主人。異世界に行くなんて初の快挙かと思いきや飛んだ伏兵が現れたッスね」

「意図してここに来たかどうかわからんがな」

「またまた負け惜しみを――痛てぇぇ!!」


 フルフルが頭を防御する前に、主人の拳骨が飛んできた。


「お、女の子のグーで殴るなんて……。親にも殴られたことないのに」

「お前は悪魔だろ!」

「ところで、魔術と呪術ってどう違うんスか?」


 悪魔が訊くか――と思ったが、宗一郎は一応答えてやることにした。


「根本はさほど変わらないが、違いがあるとすれば、その使用方法だ」

「使用方法ッスか」

「魔術はある程度、自由にその力を振るうことができるが、呪術はその使用に制限を加えることによって効果が増す技術だ」

「ほうほう」

「たとえば、オレ達が外の世界からこのオーバリアントに侵入した。その行動を起こした代償が、このステータスシステムということだ」

「つまり、魔術が使い勝ってのいいエンハンスド・カービンだとすれば、呪術は設置型のMON-50破片式地雷ってことッスね」

「その例えはオレにはわからんが、その通りだといっておこう」

「話は変わるッスけど、成り行きであのマトーと戦うことになったッスけど、大丈夫なんスか? ご主人」

「問題ない。オレの強さはわかってるだろ」

「といっても、あっちの方がレベルは上っぽいスよ」

「何度も言わせるな。問題ない」

「じゃ~あ、ご主人。また話は変わるッスけど――」


 急に猫撫で声になる。するとフルフルは宗一郎の隣に席を変えた。


 そっと主人のたくましい太股に手を置き、顔を近づける。

 妙に色っぽいアングルを見てしまって、宗一郎は若干赤くなった。


「何をする気だ……」

「いや~、異世界へ来て、結構経ってるじゃないスか?」

「だからなんだ?」

「そろそろあっち関係が溜まってるんじゃないかな~と」


 お茶を飲んでいたら吹きだしていたところだった。


「な、ななななな何を言っているのだ、お前は!」

「え~。だって、このところご主人、ご無沙汰でしょ。自慰(マス)だってしてないみたいだし」

「何故、お前がそんなことを知っている!」

「そりゃあ、ご主人の悪魔ッスから……。悪魔としては契約者の実りある性生活の改善を――」

「誰も頼んでない!」

「異世界へ来て、姫騎士に、姫幼女に、ほら……メイドとかもいたじゃないッスか。さっきお茶とか持ってきてくれた娘とか、結構レベル高かったッスよ。ああいう人事って、皇帝が決めたりするんスかね。そして後宮とかに囲ったりして」


 悪魔の囁きというよりは、悪魔の妄想が止まらない。

 宗一郎を誘惑するどころか、口から涎を垂らしながら自活をはじめた。


「だからぁ……。その、溜まった精を吐き出しちゃいましょうよ」


 太股をずっとさすっていた手が、宗一郎の股間に伸びていく。


「や、やめんか!」


 つい手が出て、悪魔を突き飛ばす。

 しかしフルフルは攻性を緩めない。尻尾をうまく使って、宗一郎の首をからめとる。自分の豊満な胸へと引き寄せた。


 思わず胸を揉んでしまう。

 驚くほど柔らかかった。


 フルフルは官能的な声を上げた。


「じゃあ……。フルフルの溜まった精を吐き出すのを手伝ってください」

「この淫売悪魔め。いい加減に――」


 ドアがおもむろに開かれた。


「なんだ。開いているではないか……。ノックをしたのだが、……へんじ、が、なか……た…………から――」


 ………………………………………………………………。

 ………………………………。

 ………………………………………………。


 スッゴく気まずい沈黙が流れた。


 入ってきたのは、ライカだ。

 顔を真っ青にしながら、立ち竦んでいる。


「おお! ライカ。3Pするッスか!?」

「いや、私はその…………遠慮しておこう…………」


 姫騎士は、ゆっくりとドアを閉めようとする。


「待て! ライカ! これは誤解だ!」

「いや、まあ……。その主従の関係というのは、時として一線を――」

「それが誤解というのだ。聞け!」

「なんだ? もしかして、どうやってフルフル殿を手込めにしたのか、私に聞けというのか?」

「お、お前こそ何を言っているのだ」

「それを私に聞かせてどうしようというのだ! はっ! まさか私にも、その甘い言葉で誘い、官能世界へと導こうとしているのか。クッコロ!」

「おお! 生くっころッスよ! スマホスマホ! ああ! しまった! スマホ、折られたんだったあああああ!!」

「だが、その宗一郎殿が望むというのであれば、その……聞かないこともない」

「だから何を言っているのだ。ああ、もううるさい! 悪魔!」

「ぎゃひいぃぃいぃぃいいいいいい!!」


 皇帝が住まう居城に、混沌の三重奏が響き渡った。


サブタイを「ライカ。3Pするッスか!?」にしようかスゴい悩んだ。


明日も18時に更新します。


※ 日間ランキング70位まで上がってました。

  10位ずつ上がってたのに、一気に70位まで来てて、

  泡拭いて倒れそうですw


  そしてとうとう1000pt到達です!


  まだ投稿して1週間もしてないのに驚いてます。

  皆さま、ありがとうございます!!


  そして前作も1000pt超えてました。

  この作品から入っていただいた方に伸ばしてもらったのかな、

  と推測しております。

  ちょっと連載をストップさせてもらってますが、

  4月には不定期ながら進めさせてもらいますので、

  もうしばらくお待ち下さいm(_ _)m

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