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その魔術師は、レベル1でも最強だった。  作者: 延野正行
第1章  帝国最強編
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第5話 ~ 幼女ッスよおおおお!! ~

幼女ッスよおおおお!! 


第5話です。

よろしくお願いします。

「姫騎士ライカ・グランデール・マキシア様――。凱旋!」


 高らかな声とともに、巨大な城門が引き上がっていく。


 城門の奥から現れたのは、多くの兵士や家臣、城に仕える給仕などだった。

 皆、大きく手を振り、あるいはホラ貝のようなものを吹いて、ライカの凱旋を祝福している。


 城壁の上からは、花吹雪が舞い、ライカの美しい金髪にかかっていた。


 対して姫騎士はぎこちない笑顔を浮かべ、手を振っている。

 同時に、宗一郎やフルフルに向けられたのは、猜疑の目だ。


「後ろの方たちは誰かしら?」「新しい奴隷でしょうか?」「それにしては変わった格好をしてらっしゃる」「でも、結構カッコいいかも……」「おお! 後ろの子。よく見ると胸デカい」「馬鹿! ライカ様の方がデカいだろ」


 となかなかの歓待ぶりだ。


「すまないな。皆には後で言ってきかす」

「気にはしていない。……それよりも人気があるのだな、姫騎士殿」


 物珍しそうに帝国の城を眺めている従僕に代わり、宗一郎が返事をした。

 ライカは気恥ずかしそうにしなを作る


「いや……。その――」

「別に皮肉ではない。君主の娘が家臣に好かれているのは、悪いことではない」

「わ、私は……今は騎士である身――と言いたかったのだ。そもそも姫騎士というのも、私のジョブであって……。姫というのは」


 どうやらまだ自分の身分を隠したいらしい。

 こっちは完全に、ライカがマキシア帝国の姫君であるということに気付いているのに。


 先ほど、ライカ・グランデール・“マキシア”と宣告していたことからも間違いない。


「ジョブとは……。固有のスキルを習得できる職業のことか? 例えば、戦士とか騎士、拳闘士――」

「さすがは勇者殿。そういう知識はおありになるのだな」


 ――やはり……。


 当てずっぽうで言ったのだが、予想通りの返答がかえってきた。

 これでは異世界に来たというよりは、ゲームの世界に迷い込んだと思う方が、理解が早いかも知れない。


 問題なのは、このオーバリアントが60年前まではこんな世界ではなかった――ということだが……。


 城内で歓待を受けながら、宗一郎は深く思考する。


「うほおおおおお! スゴいッスよ!!」


 ――フルフル、うるさい!




 城内に入ると一転して、静かになった。


 堅牢な石造り壁が両側にそびえ、赤い絨毯がしかれた長い廊下を歩いている。


 大きな城であったため、覚悟はしていたが、毎日ここを歩くだけで運動不足が解消できそうだ。

 歩くよりも、馬を走らせた方が効率がいいかもしれない。


 そんな時、角から1人の小さな少女が現れた。


「ライカお姉様!」


 ライカに飛び込んでいく。

 今までずっと緊張した面持ちだった姫騎士の顔がほころび、自分よりも濃いブロンドの髪を撫でた。


 年の頃は10歳前後といったところだろう。

 ぱっちりとした緑の瞳。顔はなんの化粧も施されていないのに白く、睫毛も長い。まだ誰も触れたことがないであろう唇は、桜の花弁のように淡く、手や足、胸の肉の付き方にはまだ女らしさはないものの、愛らしさが備わっていた。


 ピンク地のドレスは、容姿の可愛さに拍車をかけ、レースで出来た花柄は少女の好みをよく表していた。


 おそらく姉の凱旋に合わせて作ったであろう野花で編んだ花環も渡さず、姉の愛撫に甘えている。


「クリネ……。息災であったか?」

「はい! お姉様! クリネは元気です」


 言葉通りの声が返ってくる。


「こちらの方は?」

「ああ……。今から、陛下に凱旋したご報告とともに紹介しようと思っているのだが……。こちらは、プリシラ様が天界より遣わした勇者様だ」

「勇者……」


 ギュッとライカの裾を掴み、何か得体の知れないものを見るような目で、宗一郎を見つめた。

 この世界の住人にとって、よっぽどこのスーツ姿は違和感があるらしい。


「うおおおおお! 幼女ッスよおおおお!! 襲えぇええええ!!!!」


 ずっと城の作りに目を向けていたフルフルが、少女を見て叫んだ。


 懐からスマホを取り出すと、パシャパシャとシャッターを押しはじめる。

 何が起こったのかわからず、ライカとともにクリネは立ちすくんだ。


「ふほおおお! スゴいッス! 姫騎士の妹ッスよ。これはもしかして薄い本できるんスかね。オークにさらわれる妹。助けに行く姫騎士! 『妹を助けたくば、この場で脱げ!』と強制するオーク。そして無数のオークが姫騎士のぉおおお! 燃えてきたああ!! フルフル、燃えてきたッスよ!!!!」


「なら燃えろ!!」


 宗一郎はカスマリムの力を使って、フルフルの髪に火を付けた。


「あちゃああああ! アチ! アチ! アチアチアチアチイィィィィィィ!!」


 廊下で悪魔はのたうち回る。

 側にあった水の甕に突っ込む。じゅうと焼き肉が焼けるような音とともに、湯気を上げた。

 おそらく消化用の水だろう。まさしく今、役に立ったというわけだ。


「スマホは壊したはずなのに、何故元に戻っている!?」


「むふふふ……。甘々ッスよ、ご主人。セカンドバックアップを残しておくのは、悪魔としての――ぎゃあああああああああああ!!!!」


 セカンドバックアップも、再び宗一郎によって叩き壊されてしまった。


 何やらわからぬ機材を持ち出し、自分の周りを回った女性。

 その女性の髪を不思議な力を使って、燃やしてしまった勇者といわれる存在。


 クリネはどう反応したらいいかわからず、とりあえず自分を救ったと思われる勇者に視線を向ける。

 汚れを知らぬ視線に気付き、宗一郎は対応を迷った末、クリネの前で膝を付いた。


「下女が失礼をした。姫殿下……。私の名前は杉井宗一郎と申します。以後、お見知りおきを」


 我ながら猿芝居が過ぎたか、と宗一郎は思ったが、効果は絶大だったらしい。


 片目を開けて、クリネを見る。その顔を真っ赤になっていた。

 火照り感じる頬を手でおおい、ライカの背中に隠れる。

 宗一郎は立ち上がり、自分の髪を撫でた。


「嫌われてしまったかな?」

「クリネ。挨拶ぐらいしたらどうだ?」


 姉に促され、クリネはおずおずと姉の背後から現れた。

 ピンク色のドレスの裾を摘まみ、軽く腰と膝を折って頭を垂れる。


「クリネ・グランデール・マキシアと申します。あ、挨拶が遅れ申し訳ありません」


 まくし立てると、クリネはすぐ後ろを向き、ライカが止めるのも聞かずに走り去ってしまった。


「す、すまない。……普段はあんな子ではないのだが」

「気にはしていない。よくわからないものを恐れるのは、人間として当然のことだ」

「果たしてそれだけッスかね」


 キュポンと小気味よい音を立てて、フルフルは甕から頭を抜いた。


 柔らかな薄紫の髪が、英国のクラブチームで活躍するベルギー代表みたいな髪型になっている。


「もしかして、今フラグが立ったかもしれないッスよ」

「フラグ?」


 ――とにかくお前は喋るな……。


 ライカから質問を受けて、宗一郎は真剣に従僕の口を塞ぐ方法を模索し始めた。






 城内で、一際大きく、堅牢な扉が押し開かれていく。


 現れたのは神殿のような太い柱、金糸が結われた赤い絨毯、いくつも飾られた帝国の国旗、そして諸侯とおぼしき正装した大人たちの姿だった。


 そして絨毯の先……。


 2、3階段を上った壇上に設えた黄金の玉座。

 そこに座る人間は、頬杖をついた姿勢で、鋭い眼光を飛ばしていた。


 圧倒的な覇気は、宗一郎は今まで出会ってきたどんな人間よりも強い。


 ――これが帝政の頂点に立つ人間の凄みというヤツか……。


 帝国の人口がいかほどかは知らないが、日本の人口よりも多いことは間違いない。


 それほどの民意を束ね、たった1人で決断を下してきた国主。

 その重圧は、想像を絶することだろう。


 ライカが進み出ると、宗一郎、フルフルの順番で並んだ。


 中頃まで歩いて行くと、ライカは立ち止まって宗一郎にここで待つようにと忠告する。そのままライカは皇帝の方へと歩き出す。


 宗一郎が待つように言われた場所から皇帝まで、まだ距離がある。

 かろうじて皇帝の表情が窺うことができる間だ。


 するとライカは立ち止まり、片膝をついて頭を下げた。

 それに倣う。


 なるほど、と思った。

 これは皇帝の信頼の距離なのだ。


 思えば、両脇に居並ぶ諸侯の中には殺気だったものもいる。

 何かあれば斬る――そんな意思表示に見えた。


 もちろん、宗一郎にはそんな気はさらさらない。

 現代世界ならまだしも、異世界の大帝国と事を構えるほど、戦力の分析がすんでいない。


 ――ただ……向こうがその気なら別だがな。


 現代最強魔術師は、ひっそりと笑みを浮かべた。


少し中途半端ですが……。


明日も18時投稿です。


※ 一昨日、いきなりPVが5桁をいって喜んでたら、昨日は15000を超えて踊り狂ってます。読んでいただいた方本当にありがとうございます(T_T)

  日間も昨日の夜の時点で122位と上がってました。

  たくさんのブックマーク、評価をいただき重ねてお礼を申し上げます。

  今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m

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