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プロローグ ~ 最強を倒す準備は出来ているか? ~ (1)

初めましての方は初めまして!

前作をお読みになっていただいた方、お久しぶりです(ネタ)


新作はじめました!

よろしくお願いします。

「最強を倒す準備は出来ているか……?」



 声が響く。


 暗い闇。


 配管から漏れたオイルが、はっきりと固いコンクリートを叩く音が聞こえる。

 そんな静寂の最中。


 カツーン……。カツーン……。カツーン……。カツーン……。


 長靴が近づいてくる。


 粗雑なバリケードの奥には、世界に認定されたテロリストたち。

 顔を布で覆い、ギロリと大きな目を開いている。


 その数、“わずか”1000名強。

 手には、様々な銃器が握られていた。

 ど定番のAK47からMP5にFAL、MP16A1。PP-90なんて下手物まで引っさげているものもいる。

 まるで、世界の銃器見本市でもやっているかのようだ。


 むろん、そこに一片の華やかさもない。


 荒い吐息と、滴る汗。

 薄汚れた警告灯の赤と、人間の血管のように張り巡らされたパイプライン。


 後はひたすら緊張感が張り詰めた戦場だった。


 響く足音は1つ。


 揺れる影も1つ。


 たった1つの戦力に、1000名の猛者が立ち向かおうとしていた。


 赤黒い光に、人のシルエットが浮かぶ。


 一発のジェリコ941が開戦を告げる喇叭のように鳴り響く――。


 様々な特徴ある銃声が、密閉された空間を埋め尽くす。

 マズルフラッシュの華が咲く。

 熱を帯びた空薬莢が、地面に広がっていく。


 視界が白く覆われるまで、硝煙が立ちこめた。


 誰の指示もなく、銃声は止む。


 サイトから目を切り、皆は顔を上げた。


 1人の男がマスクを外し、バリケードから出て、様子を窺う。


「もう終わりか……?」


 慌てて、男は構えた。

 いまだバリケードの向こうにいるテロリストたちも倣う。


 硝煙の向こうから現れたのは、細身の東洋人。


 後ろに無理矢理なでつけた固い黒髪。茶色の虹彩は鋭く、唇から白い歯がこぼれている。

 ダークのスーツに、濃い赤のシャツを合わせ、首からは宝石が付いたペンダントをぶら下げていた。


 ひょろりとした細い体躯は、屈強のテロリストと比べて、如何にも一般人然としている。


 なのに、ズボンのポケットに手を入れ、軍用のごついブーツを鳴らして、さも平然と歩いてくる。


 誰かが「撃て」と合図した。


 再び銃火の華が咲く。

 連射音が響き、無数の弾が獲物に向かって飛んでいく。


 男はかわすわけでもなければ、防御するわけでもない。

 そもそも空間を埋め尽くす勢いで放たれた銃弾から、人間が生き延びる術など皆無に等しい。

 ただ注意しなければいけないのは――。


 それが人であればの話だ。


 銃弾が乱れ飛ぶ中、男が取った行動は……歩く――だった。


 やはりポケットに手を入れ、ブーツで固いコンクリートを踏み――近づく。


 銃弾は一発も当たっていない。


 漫画やアニメにありがちな――銃弾が曲がるということも、跳ね返るといったこともない。

 まして熱によって溶けることもなかった。


 ……ひたすら当たらない。


 懸命にサイトを合わせ、銃把を握っている。


 そんな努力を嘲笑うかのように、男は直進してくる。


「くそ!」


 悪態が聞こえた。

 バリケードの奥で、1人のテロリストが一際大きな銃器を取り出した。

 RPG-7。

 世界でもっとも有名なロケット弾発射機。


 それが、人間に向かって発射された。


 空気を切り裂き、ロケット弾が男に向かう。


 しかし、何故か男の横をかすめて、飛んでいき……。


 ドォオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンン!!!!!


 後方で爆発した。


 爆風が狭い室内に荒れ狂う。

 テロリストたちは、一斉に身を伏せる。

 1人バリケードから出た男も、反射的に目を伏せ頭を保護した。


 石油が尽きていたパイプラインに引火こそしなかったが、あちこちで火がくすぶっている。ひしゃげ、溶けた配管が、敗北を認めるように頭を垂れていた。


 瓦礫が崩れる音が止む。1人だけバリケードから出ていた男は顔を上げた。


 東洋人の男が何食わぬ様子で立っていた。

 白い歯を見せ、パリッとしたスーツはそのままで、ポケットに手を入れている。


 化け物を見るような目で見開くと、男はアサルトライフルが構える。

 東洋人は呟いた。


「易いな」

「?」

「最強のオレを、そんな銃火器程度で倒そうなど、易い努力というものだ」


 熱くなった銃身をなんの躊躇いもなく握る。

 あっさりとテロリストから銃を奪うと、しげしげと眺めた。


「K1Aってどこで手に入れたんだ?」


 ポイッと空き缶でも放るように、男は後方へと投げ捨てる。


「あああ……。うわああああああああああああ!!!」


 背を向けて逃げだそうとするテロリストに銃の嵐が突き刺さった。


 仲間が絶命したことに何の感慨もなく、銃弾は東洋人へと向かう。


 テロリストは必死だった。


 ここが最後なのだ。


 武器のオアシス。

 あらゆる銃火器、殺傷兵器が集まる唯一の場所。

 核だって備えている。


 すでに世界から武器というものは消えていた。

 人間を殺傷するために生まれたものは、すべての国において廃止された。


 そんなことは絶対あり得ない。

 常識とすら言える。


 しかし、目の前の東洋人はそれを達成した。


 杉井宗一郎。若干24歳。

 名前こそありふれていて、外連味がなく、かつ年の割には童顔の男は自らをこう自負する。



 現代最強魔術師――――。


 そして目標は「世界平和」――――。



 馬鹿馬鹿しい自称と目標を持つ男の手によって、本当に絵空事のようなことが実現してしまった。


 そして宗一郎はとうとう武器の最後の砦へと到達した。

 アフリカの奥地。砂漠のど真ん中。

 かつてはテロリストの本拠地。

 しかし各国の諜報員が、血眼になって探し当てることが出来なかった地下50メートルの小さな地下帝国。


 なのに、宗一郎は1時間前に公共の電波を使って、襲撃を予告し、つい数分前に辿り着いた。

 遠く日本から、近くの空港に辿り着くだけで10時間はかかる距離。

 それを1時間足らずでやってきた。。

 方法など検討もつかない。想像すらできないだろう。


 ただ宗一郎は目の前にいる。不敵な笑みを浮かべ――。

 それは紛れもない事実だった。


「いい加減うるさいな」


 階下の住人の音楽がうるさいと、苦情をぼやいているような言い方だった。


「お~い。フルフル」

「はいは~い」


 呼ばれて飛び出て、なんとやら。


 弾雨の中に、突如として現れたのは、少女だった。


 燦然と輝く金色の瞳に、褐色の肌。

 笑みを浮かべた唇から、小さく八重歯が見え隠れしている。

 燕尾服とスカートを合わせたような服を纏い、大きな双丘がきっちり谷間を作り、今にも飛び出しそうになっている。

 ツーサイドアップの薄紫の髪の根元からは、小さく角を生やし、つるりと曲線を描いたヒップから、先が矢印のしっぽが飛び出ていた。


 一見、人間のようにも見えるが、所々で超然とした特徴があった。

 そもそも銃弾が雨あられと降る中で、まるで台所から呼ばれた主婦みたいな気軽さで現れたことからして、もう普通ではない。


「蹴散らしてやれ」


 顎をしゃくる。


「えー、めんどい~」


 両手をだらりと提げて、フルフルはげんなりとした表情を作る。


「お前、オレの契約悪魔だろ? 主人の命令を聞け!」

「そうッスけどぉ……。こんな雑魚ぉ、ご主人がやっつければいいじゃないですか~」

「雑魚だからお前に任せるのだ。……オレには本命がいるようなのでな」


 テロリストが立てこもるバリケードの奥を見つめる。


「ええ……? めんどくさいなあ。……そもそもご主人は、因果をコントロールする馬鹿げた中二能力を持ってるんだから、こんなゴミ屑ちょいとやっつければいいですよ」

「中二いうな! オレの力は、きちんとした体系に基づいた魔術だ。お前も悪魔ならわかっているだろ?」

「わかってるッスよぉ。でもぉ、フルフルを悪魔とわかってるならぁ、もうちょっと悪魔らしい喚び出し方とかあるんじゃないッスかあ? たとえば『出でよ。72の悪魔にして、26の軍団を操りし伯爵よ』とかいう感じですよ」

「別にそんな文言がなくても、お前は喚べば出てくるだろ?」

「えぇ!? 気分の問題っスよぉ。気合い入るじゃないですか。そんなカッコいい感じで喚ばれたらぁ。なのに、ご主人と来たら、『お~い、フルフル』って。娘にお風呂に入るようにいうお父さんじゃないんですから」

「とにかく黙れ。一応、戦場だぞ」


 その通りであった。

 今、2人がのほほんと会話している間も、テロリストたちは一生懸命に弾を込め、サイトを覗き、銃把を握り込んでる。

 また打ち上げ花火みたいにRPG-7が放たれたが、壁や天井に穴が増えるだけだった。


「雑魚には用はない。オレが興味あるのは、オレを高みに連れて行く“もののふ”だけだ」

「はあ……。相変わらず意識高いッスねぇ」

「どうした? やるのか? やらないのか?」

「はーい。やりますよ」


 フルフルは手をかざす。

 二重の真円に二重の三角。周りに魔術文字が浮かんだ魔法円が浮かび上がった。


 そっと、言霊を唱える。


「我、悠久なる悪を貫く者。心臓を智と説く者よ。我の左手に宿りて、裁きの槍を伐たせ!」


 【雷天必撃】!


 落雷が爆ぜた。


 50メートルの地中をものともせず、青白い光がテロリストを包む。


 天井から伸びた光のツタは、一瞬にして男たちの身体を貫いた。

 獰猛な光は、高速で動く毒のように肉体を駆け抜け、テロリストの悲鳴すら奪う。


 5秒以上にわたって、放射された雷はフルフルの合図によって止まった。


 血が揮発したのか。男たちの体内外から白い湯気が立ち上る。

 一斉に持っていた銃器を取り落とすと、遅れて体を崩し、思い思いの方向へと倒れた。


 1000人強いたテロリストたちは、あっという間に無力化された。


 紫色のサイドテールを揺らし、フルフルは大きな胸を張った。


「どうですか? ご主人。……本気になれば、ざっとこんなもんですよ」

「あ、ああ……。それはいいが、さっきのはなんだ?」

「さっきのって、呪文のことッスか?」

「そうだ。そもそもお前は火と雷を操る悪魔だろ? そんなことをしなくても、ちょっと手を動かすだけでいいだろが! それにさっきの魔方陣っぽいのはなんだ? 無駄な魔力を使うな!」

「チッチッチッチッ! 甘いッスね、ご主人。演出ッスよ。え・ん・しゅ・つ。これぐらいやらなきゃ。人気者になれないッスよ!」

「悪魔が誰の人気者になるのだ! ……もういい! さっさと行くぞ」

「あ。ちょっと待って下さいよ、ご主人! んもう、エンターテインメントというのをまるでわかっていないッスねぇ」


 フルフルは頬をまん丸く膨らませ、先を行く主人の後を追った。


次は主人公の番です。


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先生の美麗なイラストにも大注目ですよ!


また出版を記念して、なろう様にてちょっとしたことをやろうと思っています。

時期がきたら、発表いたしますので、しばらくお待ちください。


是非ともシリーズ化したいお話なので、なろう連載作ともども応援よろしくお願いします!



※ 近況

  カクヨム様にも新作を投稿始めました。

  よろしければこちらも読んでやって下さい。

  https://kakuyomu.jp/works/1177354054880563884

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