最近流行りの儀式。
思春期真っ只中の女子高生。
噂話やら都市伝説だとかが気になるお年頃で、この二人ももちろんそれに当てはまる。
霧島ゆずきと、平良さち。
二人は親友と呼ばれる仲で、誰がみてもそう口にする程に仲がいい。そんな二人の最近のブームは、オカルトチックな儀式を楽しむことだった。
小学生であるあるのこっくりさんだとか、キューピットさん。
そんな非科学的な儀式を執り行ない効果を検証する事に何故か楽しさを見出してしまった二人は、最近噂になっている儀式を試す約束をしていた。
用意するものは、特に無い。
だだ、落ちて行く夕日に向かって腕を伸ばし掌をかざし続ける。それだけだった。
夕日が沈むまでに願い事を思い浮かべ、強く望む。そうすれば願いが叶うらしい。
結果なんてほとんど期待していない、効果なんて全くなくてもいい。ただそれをすることを楽しんでいる彼女らは下校途中、錆びれ所々塗装の剥げた歩道橋の上で夕日を捕まえるように手をのばしていた。
じっと立ち並んで日がくれるのを待つ二つの影。
不審者とまではいかないが、不審な行動をしているのは確かである。
霞がかった空の色もやがて黒く塗りつぶされ、煌々と輝く星々が顔をのぞかせた。
腕を下ろし肩を回すゆずき。
腕を下ろし歩道橋にもたれかかるさち。
それは退屈だったとも取れる行動だけれど、口元だけは弧を描いている。もちろんそれは、悦楽によるもの。
「そういえば、さち。何、願ったの?」
愉快だ。
そう言っている表情で、ゆずきは尋ねる。
「なーいしょ!そういうゆずきこそ、何をお願いしたのさ?」
いたずらが成功した子供のような笑みを浮かべ、さちは質問を返した。
「もちろん、秘密だよ」
二人はどちらからともなく足を踏み出す。呼吸をする様に自然なそれは、歩調までもをシンクロさせた。
他愛ない日常会話をしながら去ってゆく二人の少女。
彼女らの願いはたった一つ。
『この関係がいつまでも続きますように』
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