敵の名はベーキングパウダー
これを読んでいる読者の皆様。ベーキングパウダーをご存じだろうか。
料理好きな人でも知らない人もいるだろう。なぜならこれは『ふくらし粉』であり、パンや焼き菓子を作る時に使う物である。
お菓子やパンなど店で買えばいい。日常の料理でベーキングパウダーを使う機会はまずない。私も今年に入って初めて買った口である。
そして買った瞬間から戦いのゴングが鳴った。
きっかけはバレンタインだからブラウニーを作ってみようと言う事だった。
長年計量きっちり、時間きっちり、温度きっちりのお菓子作りを、苦手だと思って避けてきた。しかし今年はなぜかやる気になった。ブラウニーの簡単で美味しそうなレシピを見つけたせいだろう。
イチゴの粒が残るぐらいの硬めなジャムを作り、型の底にしいて、上にはクルミ入りのチョコ生地を流し込んで焼く。甘酸っぱいイチゴジャムと、クルミの香ばしさに、ビターチョコの甘い誘惑。
このチョコ生地の中にベーキングパウダーが必要なので、113g入りの1缶を買ってみた。
このブラウニーは美味しく食べたのだが、ここで問題が。
ベーキングパウダーはお菓子1回作るのに、せいぜい小さじ1程度しか使わない。だから大量に余るのだ。かといって何年も持つ物ではない。開封後1年ほどで使い切らなければいけないらしい。
こうしてベーキングパウダーを消費するために、苦手だと思っていた焼物に挑戦し続ける事になったのだった。
料理を作りたいから材料を買うのではなく、材料を消費するために料理を作る。本末転倒である。
次に作ったのは『ヴィクトリアケーキ』。イギリスの伝統菓子で、日本では珍しい物だと思う。
日本人に馴染みのシフォンケーキだの、ショートケーキだのというものは作らない。
だってそう言う物は店に行けば、自分で作るより遥かに美味しいお菓子が売っているし、コストパフォーマンスも良い。
手作りだからこそ珍しい料理にしたい。
ヴィクトリアケーキは、スポンジ生地を焼いて、水平に2等分し、間にラズベリージャムを塗って、上に飾りで粉糖をかけたものだ。
これが粉の味がダイレクトに伝わってきて、素朴ながら実に美味しい。イギリス菓子らしく紅茶に良く合う。
日本人が好きなフランス菓子はバターが多いのでこってりしていて、紅茶が負けてしまう。珈琲の方が相性はいいと思う。
1回目を作った時はレシピ通り作って甘すぎたので、砂糖の量を減らして2回目を作った。相方にも、間にラズベリージャムを挟むから、土台は甘さ控えめな方が好評だった。
さて、ここで悲しいお知らせです。1週間でホールケーキ2個のヴィクトリアケーキを作って味見したら、3kg太りました。砂糖と炭水化物はカロリーが半端無い。
太るのは嫌だ!でもベーキングパウダーは着実に消費したい。
そこで今度はお菓子でなく料理を作る事にした。
次の料理は『ケークサレ』。フランスの伝統料理で、具の入った、塩味のパウンドケーキのようなものだ。
今回はベーコンとほうれん草を入れたチーズのケークサレ。チーズのコクが濃厚で、焼きたてはもちろん、冷めても美味しい。
おやつや軽食に、一切れごとに包んで人にあげるのもお勧め。
調子に乗って5〜6本作って、カットして配りまくった。中の具材をソーセージや枝豆、ニンジンなど色とりどりにすると見た目も綺麗だ。
しかしこれもチーズをたっぷり使ったり、バターや油などを使うので食べすぎは要注意。
そこで次に作ったのは『ソーダブレッド』。アイルランドの伝統料理で、本来は重曹を使うのだが、重曹の代わりにベーキングパウダーを使う。
もう閉店してしまった、お気に入りの紅茶専門店のご主人が作ったソーダブレッドは感動的に美味しかった。あの味を求めて作ってみた。
本当のソーダブレッドではバターミルクが必要。これは今ホエー豚などで有名な、チーズを作る過程で生まれるホエーの事です。
しかしバターミルクは日本では市販で手に入りません。無糖ヨーグルトで代用するレシピを見つけたのでそれで作ってみました。
材料は薄力粉とヨーグルトと塩とベーキングパウダーのみ。
作り方はシンプルに材料をまぜて、形作って焼くだけ。しかしなかなか奧が深い。
以前店で食べた時は外はかりっと、中はふんわり、粉の風味が香ばしく食欲をそそった。
しかし私が作った物は、外はかりっとしているが、中も固くて歯ごたえがありすぎる感じになってしまった。粉の香りも弱い。薄力粉も安いどこにでもあるようなものではダメなのかもしれない。
これはまだまだ改良の余地有りのようだ。
さてここまで4品、大量の焼き物を作ってきたが、おそるべしベーキングパウダー。まだ半分いくかいかないかぐらい。
まだまだベーキングパウダーとの戦いは続きそうだな……。ちょっと挫けそう。
ベーキングパウダーはもっと少量の使い切りタイプも売ってます。
私は知らなくてたっぷりサイズを買ってしまったようです。
お買い求めのさいは、量を要確認です。