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第三話 主、契約する。

 闇夜に響く咆哮。目の前に現れし聖獣はまさにとてつもない威圧を放っていた。外皮は赤錆色の鱗が覆い、四肢は太く、輝く四本爪、尾も力強く振られ、巨大な羽は威嚇するかのように広げられ、長い首と屈強な顎が二つ、双頭のドラゴンだ。召喚した者も驚きを隠せない。


 何分なにぶんいきなり襲いかかって来るのだから。


 「止まれ。」


 第一王女ケリーは剣を抜き大声で静止を促す。さもなくば切り伏せんと。だが剣の腕に覚えのある彼女でもドラゴンと対峙するのは初めてだ。はたして目の前のドラゴンに敵うのだろうか。そんな気弱な疑念を振り払い彼女はにらみを利かせる。


 途端、ドラゴンの頭が目の前で止まる。


 そのドラゴンの額には小さな宝石、制御術式の基礎部分となる水晶真珠クリアパールが付いていた。どうやら彼女の第一声に従ったようである。だがその眼はこちらを睨みつけている。敵意は無くしてはいないようだ。こう見てみるとあまりいい気分とは言えないな、と彼女は思いつつ、




 大きく後ろに跳び。





 ドラゴンのあごが空を噛む。



 相手は双頭のドラゴン、その額に制御術式が組み込まれているのであればもう一方は、


 いや、水晶真珠クリアパールは確かに組み込まれている。となると考えられるのは。


 「みんな、静止を命じるんだ。」



 皆が止まれと命令するとドラゴンは静止した。





 「これはどうなっているんだ、ローナ。」


 「うるさいなぁ、怒鳴らないでよね。見てのとうり、頭一つずつで契約しちゃってるみたいなんだよね。まぁ、両方の頭が制御可能でよかったじゃない。」


 「それだけじゃないいきなり牙を向けてきたぞ、今もまだ狙っているじゃないか。」


 「まぁ、向こうからは友好的なわけないしねぇ。餌だと思ったんじゃない、ケリーねえさん肉付きいいし。」


 「ふざけるな。」


 いくら命令を聞くといってもそうしなければ牙を向けてくる者を従えるのは無理だ。どこで余計な問題を起こしてもおかしくないし、反撃を狙うにきまっている。


 「でも、なんだかよだれも出てますし、本当にお腹が空いているのではないでしょうか。」


 「そうか、そうすればいいのか。」


 マルグリットのつぶやきを聞くとローナはドラゴンの前に立ち、



 「呼び出してすまないけど、こっちも用があるの。私の部下になりなさい。そうすれば食糧の心配はしなくてよくなるからね。わかったら首を縦に振りなさい。」


 ドラゴンは一方の首を大きく縦に振った。


 まさかこれで問題ないのだろうか。


 「ほら、ねえさんも早く。」


 見てみるともう一方の頭も敵意は無くただこちらを見ている。ローナのように頼めばこちらも首を大きく縦に振った。




 









 「そうそう、二人はどうだったの。」


 「えっと、その、あそこに。」


 そうフェリシアが指さすときわに置いていた道具箱の後ろに猫がいた。わずかに頭を出しこちらをうかがっている。どうやら警戒しているようだ。


 

 「とりあえず、頼んでみなよ。」


 「うん、わかった。こっちに来てくれない。」


 そうすると猫の顔が引きつりこっちやって来た。やはり無理やり命令に従わされてるようだ。しかしそんな事よりも際立っていることがある。



 なんとまさかの二足歩行。しかもお腹には他の獣の毛皮でできたような簡単な小物入れを下げていた。こいつはいったいなんなんだ。


 「えっと、あの、わたしの言葉がわかるかな。」


 猫は何とも言えない鳴き声を出した、いやしゃべったのだろう。しかし、肯定か否定かわからない。


 「命令が聞けるんだから問題ないって。」


 「そうだよね、じゃあ私の部下になって頂けませんか。」



 沈黙した。悩んでいる、いや訳が分からないといった感じだ。先程のドラゴンにしても召喚される聖獣は元来魔獣が多く現れた時、向こうからやって来るはずなのに偶然巻き込まれたかの様だった。もともとそうなのか、それともローナが何か仕組んだのか・・・。


 「そ、そうだ。おいしい食べ物あげるから。」


 反応無し。


 「毛並もきれいに整えてあげるから。」


 微動だにしない。


 「マタタビもつけるよ。」


 うんともすんとも言わない。これでは駄目だな。


 「ところでマルグリットはどうだったんだ。」


 「いえ駄目でした。」


 そう言って指さす先にはドラゴンの足。どうやら儀式そのものが壊れたみたいだ。結局、召喚できたのは半分の二体だけとは。





 「いやいや、召喚は同時だったんだから失敗はしてないって。」


 ローナがそう言ってドラゴンの足に近づく。なんにしてもドラゴンに踏み潰されているのだ。無事ではないだろう。だが、気がかりではあるのでケリー自身も近づいて行った。


 


   頑丈なる足

   赤錆色の鱗

   すねは力強く

   足には鋭い

   爪爪手爪爪

 そして踏みつける大地は割れている

 

 どうも爪の間に何か見えた。明らかに手だ。しかも人間のものだ。人払いを済ませている以上誰かが入り込んでくることはまずない。となれば・・・。


 「とにかく城の中に連れて行くぞ。人目につかないようにだ。」


 やはりローナには任せるべきではなかった。そう、後悔するケリーであった。

 いろいろ呼びましたね。実は即席で考えているものも。まぁ後々重大な役になるでしょう。

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