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後編 ぬい活令嬢の同盟は、祭典の陰謀までかわいく暴く


 春祭り当日、王都は朝から浮き立っていた。

 広場には花飾り。通りには色布。屋台からは甘い香り。

 大通りでは楽師が音を鳴らし、子どもたちが走り回り、令嬢たちは新調したドレスの裾を揺らしている。


 そして、そんな祭りの熱気に負けないくらい浮かれている令嬢が一人。


「見てちょうだい、ラファエル! 花冠つき祭典限定ぬい、並べ終わったわ!」

「朝一番の仕事がそれなの、あなたらしいですね」

「最高傑作よ!」

「朝から五回は聞きました」

「だって本当だもの」


 ルシア・エストレラは満面の笑みで、特別ペル会の会場を見回した。

 離れの中庭から隣室まで広げた会場には、色とりどりのぬいたちが並んでいる。


 地方ごとの衣装違い、花冠つきの祭典仕様、騎士風、商人風、令嬢風、小鳥刺繍入りお守り袋、ぬい用の小さな椅子まである。


 かわいい。

 とにかく、かわいい。


「お嬢様、入口側の流れ、整えました」


 アナがてきぱきと札を並べて言う。


「ありがとう!」

「招待客用の名札は色別に。一般参加の方は中庭側へ誘導します」

「素晴らしいわ」

「あと、お茶は奥に下げてあります。混雑したらすぐ出せます」

「アナ、今日も完璧ね」

「ルシア様の『楽しい』を守るのが仕事ですので」


 その隣で、マルティーナが最後の見本ぬいにリボンをつけていた。


「ルシア様、祭典限定の花冠、やっぱり右に一輪足して正解です」

「でしょう!」

「でも量産向けは二輪で」

「そこは譲れないのね」

「可愛さと現実は両立できます!」

「好き!」


 パブロは会場全体を見渡し、帳面を閉じた。


「搬入も滞りなし。北通り経由の荷も無事です」

「北通り」


 ラファエルが小さく繰り返す。

 その視線の先では、ハビエルが壁際で腕を組んでいた。


「何か?」

 ハビエルが淡々と問う。

「……いえ」

「言いたいことがある顔ですね」

「あなたもでしょう」

「ええ。最悪の予感しかしません」

「同感です」


 二人が同時にため息をつく。

 そんな空気をまるごと無視して、ルシアは花冠ぬいを両手で持ち上げた。


「さあ! 今日は特別ペル会よ! かわいく、楽しく、推しを語って、お茶も飲んで、仲間も増やすの!」

「目的が多い」

「お祭りだから!」

「その一言で全部押し切らないでください」

「無理かしら?」

「無理です」

「まあ」


 ルシアはちっとも気にせず笑った。


     ◇


 特別ペル会は、開始早々、大盛況だった。


「まあ、かわいい!」

「この花冠、すごく祭典らしいですわ!」

「地方衣装ぬい、こちらの刺繍も違うのね」

「見て見て、この子のマントだけ取り外せるの!」

「マルティーナ様、天才!」


 令嬢たちが歓声を上げ、商家の娘たちが見本帳をのぞき込み、騎士見習いたちは妙にそわそわしながら熊ぬいの前で立ち止まる。


 中庭ではお茶会、奥では簡易相談会、隅ではアナが新規参加者をうまく席へ流し、パブロが受注票をさばいていた。


 ルシアはその真ん中で、今日も今日とて絶好調である。


「推しを再現するなら、袖の長さが大事なの!」

「袖の長さ!?」

「袖の長さは第一印象を大きく左右するの」

「説得力がすごい……」

「こちらの方は、紺色に銀糸がおすすめね。あっ、でも実際の推しは、笑うと少し優しい目元になるでしょう?」

「な、なぜ分かるんですの!?」

「好きな相手だからよ」

「恋愛マスター……!」

「ぬい活マスターよ」

「そこだけは絶対譲りませんね」


 イネスがその横で、新しく来た令嬢たちに声をかけていた。


「大丈夫、最初はみんな恥ずかしい思いをするの。でも作り始めると止まらないわ」

「本当に?」

「本当よ。わたくしがそうだったもの」

「イネス様がそう仰るなら……」

「あと、ルシアの前だと、不思議と好きな相手の話をしても平気になるの」

「まあ……」

「ええ。たぶん魔法じゃなくて、空気ね」


 その言葉を、少し離れた席で聞いていた商人たちが笑う。


「空気で人の口が軽くなるなら、商売に苦労はしませんよ」

「でもここ、ほんとに話しやすいんですよね」

「分かる」

「そういえば南の倉庫街、今日も朝から変でしたよ」

「また?」

「祭典用の荷って話ですけど、封の仕方が雑で」

「へえ」


 さらに別の席では、使用人たちがこんなことをこぼしていた。


「王宮側、今日は出入りがいつもより多いらしいですよ」

「お祭りだものね」

「でも、東門側の警備がまた変わったって」

「三回目じゃない?」

「そんなに?」

「しかも、その時間だけ北通りの検問が薄くなるらしいです」


 ルシアは相変わらず、そんな話をふんふんと聞き流しながら、新作ぬいの裾を整えていた。


「検問が薄いなら、荷物が通りやすくなるわね」

「……」


 隣にいたハビエルの目が、すっと細くなる。


「もう一度」

「え?」

「いま、何と」

「荷物が通りやすくなるわねって」

「その前」

「東門の警備が変わる?」

「その後」

「北通りの検問が薄い?」

「……」


 ハビエルは無言になった。


 そこへ、パブロが帳面を持って寄ってくる。


「北通り経由の荷。南の倉庫街。夜間の王宮出入り」

「つながりましたね」


 ラファエルが低く言う。


「ええ。しかも最悪の形で」


 ハビエルが答える。

 ルシアは小首をかしげた。


「何かあったの?」

「ありました」

「まあ」

「『まあ』ではないんです」

「でも教えて?」

「……北通りの検問が薄くなる時間に、南の倉庫街から荷物が流れる。東門の警備変更で、王宮側の目も逸れる。祭典の混雑に紛れれば、何でも運べる」

「何でも?」

「武器でも、偽の王宮旗でも、火種でも」


 ハビエルの声が低くなる。


「祭典の最中に混乱を起こし、それを王家の失策に見せかける。そういう手です」

「まあ……ずいぶん感じが悪いわね」

「ええ、感じが悪いんです」


 ルシアは少し考え込んだ。

 考え込んだが、その顔はあくまで穏やかだった。


「つまり」

「はい」

「北通りと南の倉庫街を押さえて、王宮側の出入りの時間を読めばいいのね?」

「……そうですが」

「簡単だわ」

「簡単?」


 ハビエルが聞き返す。


「だって、もうあちこちに仲間がいるもの」


 その一言で、そこにいた全員が止まった。


 ルシアはきょとんとした顔で周囲を見回した。


「北通りには、パブロのお知り合いの商会があるでしょう? 南の倉庫街には、あの綿を運んでくれる行商の奥さんたち。王宮側はアナのお友達。東門の警備変更は、イネスのお兄様経由で聞けるし、騎士見習いの子もいるわ」

「……」

「あと、祭典会場なら、今日ここに来てる人たちだけでもかなり見られると思うの」

「……」

「ね?」


 ルシアはにっこりした。


 パブロが、まず顔を覆った。


「お嬢様」

「なあに?」

「それ、普通は『情報網』って呼ぶんですよ」

「まあ。ペルーチェ同盟のこと?」

「そこが恐ろしいんです」


 ハビエルは額を押さえた。


「なぜ、本人だけが何も分かっていないんだ……」

「分かっているわ!」

「何をです」

「みんな、すごく頼りになるってこと!」

「……」


 それを言われると、誰も否定できなかった。


     ◇


 そこからの動きは、驚くほど早かった。


「イネス!」

「分かってるわ。社交界経由で、今日の招待客と抜ける予定の家名を洗う」

「ありがとう」


「マルティーナ!」

「会員用の目印、急いで分けます! 北通り組は青、南の倉庫街は黄、王宮側は白!」

「すてき!」


「いま色分けの可愛さを褒める場面ですか?」

「大事でしょう?」

「大事ですけど!」


「アナ」

「はい。侍女仲間と使用人仲間に回します。『怪しい荷』と『見慣れない馬車』を見たら、花冠の向きで合図、で」

「さすがだわ」

「祭典ですから、花飾りは不自然じゃありません」

「完璧ね!」


「パブロ」

「北通りと倉庫街の流れを押さえます。荷札と商会印を見れば、どこが噛んでるか絞れます」

「頼もしいわ!」

「商人ですので」


「ラファエル」

「あなたから離れません」

「まあ、うれしい」

「喜ばないでください。護衛です」

「でも頼りにしてる」

「……知っています」


「ハビエル」

「王宮に走ります。正式な部隊を動かすには証拠がいる。ですが、あなた方の断片情報で十分絞れる」

「気をつけてね」

「言われなくても」

「でも、お茶は戻ってきたら飲んで」

「そこはぶれませんね」

「もちろんよ」


 ルシアはそこで、ぱんと手を打った。


「では、特別ペル会第二部よ!」

「第二部?」


 ラファエルが眉をひそめる。


「ええ。みんなで祭典を楽しみながら、()()()()変な人たちを見つけるの」

「ついでが大きすぎるんですが」

「だって、お祭りを中止にしたくないもの」

「……」

「かわいいぬいも、楽しいお茶会も、ちゃんと守りたいでしょう?」


「……ええ」


 答えたのは、意外にもハビエルだった。


「そういうことなら、私も異論はありません」


 ルシアは満足げに頷いた。


「よかった」


     ◇


 祭典の通りは華やかで、そして混雑していた。


 その中を、花冠やぬい用リボンや、小さな会員印をつけたペルーチェ同盟の仲間たちが、何食わぬ顔で動き回る。


「北通り、青い荷札の箱が三つ。見慣れない商会印です」

「南の倉庫街、荷運びの数が多すぎます。しかも、布と綿のはずなのに重い」

「王宮側の裏門、夜間出入りの許可札を持った馬車が、昼にも来ています」

「東門の警備変更、予定より早いです!」


 それらは全部、花冠の向き、リボンの色、祭典用の小袋に入れた短いメモで、するすると集まってきた。


 マルティーナの色分けは分かりやすく、アナの伝達は速い。


 パブロは荷札から偽装された商会印を割り出し、イネスは誰がいつ祭典の席を外す予定かを洗い出す。


 そして、ハビエルはその情報をもとに、王宮側の人員を最小限で正確に動かした。


 ラファエルはルシアのすぐ後ろに付きながら、要所で仲間へ指示を飛ばす。



 その中心で、ルシアだけが相変わらずだった。


「この子、祭典の屋台にも連れていけそうね」

「いまはぬいの携行性を語っている場合ではありません」

「でも大事よ?」

「否定はしませんが!」

「あら、見て。あそこの馬車、箱の積み方が揃ってないわ」

「……」


 ラファエルが即座に視線を走らせる。

 確かに不自然だった。

 飾り布の箱にしては、下の段だけ重さが違う。


「ハビエル」

「分かっています」


 ほどなくして、北通りで止められた馬車の中から、祭典装飾に偽装した煙玉と王宮紋に似せた旗が見つかった。


 南の倉庫街では、火種と混乱用の腕章。

 東門側では、警備の隙を狙って入り込もうとしていた反王派の手の者たち。


 全部が、一気につながった。


「本当にやるつもりだったのね」


 イネスが青ざめて言う。


「祭典の最中に騒ぎを起こして、王家の警備不備に見せる気だったのでしょう」


 ハビエルが短く答える。


「ひどいわ」

 マルティーナが顔をしかめる。

「せっかくのお祭りなのに」

「ええ。本当に」


 そこでルシアが言った。

「感じが悪いわね」


「その感想で済ませるんですか」

 ハビエルが思わず振り向く。


「だって本当でしょう?」


 ルシアは花冠ぬいを抱えたまま、少しだけむっとした顔をしていた。


「楽しい日に、好きなものを楽しむ人たちを巻き込むなんて、全然かわいくないわ」


「……」

「だから、止められてよかった」


 その言葉に、皆が一瞬だけ黙った。


 ルシアは本当に、そこにしか怒っていなかった。


 王宮だの派閥だの権力争いだのより先に、楽しいものを壊されそうになったことに。


 でも、それがたぶん、彼女の強さなのだ。


     ◇


 事件は、その日のうちに片がついた。


 祭典は一時ざわついたものの、大きな混乱にはならなかった。


 ハビエルの動かした王宮側の部隊が要所を押さえ、パブロの商人網が怪しい荷の流れを止め、アナたちの伝達が抜けを埋めた。


 イネスが招待客と貴族家の動きを押さえ、マルティーナの色分けと目印が連絡を乱さず回した。


 ラファエルは現場で二人ほど取り押さえたうえで、ルシアを無事に守り切った。


 そしてルシアは。


「お帰りなさい。お茶、まだあたたかいわよ」


 離れでそう言っていた。


 ハビエルが戻ってきた時には、本気で疲れた顔になっていた。


「あなた、本当にここで待っていたんですか」

「ええ」

「怖くなかったんですか?」

「ラファエルがいたもの」

「途中から現場にいたんですが」

「じゃあ、みんながいたもの」

「……そうですか」


 パブロが椅子に崩れ落ちる。


「終わった……」

「お疲れさま」

「お嬢様」

「なあに?」

「本当に、ご自分が何をしたか分かっています?」

「特別ペル会を開いて、みんなでがんばって、感じの悪い人たちを止めたの」

「ざっくりしすぎです」

「合っているでしょう?」

「合ってはいますが……!」


 イネスがへなへなとテーブルに突っ伏した。


「わたくし、今日ほど社交界の噂好きでよかったと思った日はないわ……」

「すてきな才能よ」

「その褒め方でいいのかしら」


 マルティーナはふと、壁際に積んだ色分けリボンを見て、胸を張る。


「やっぱり意匠は大事ですね!」

「ええ」


 アナが真顔で頷いた。


「可愛くて分かりやすいのが一番です」

「方向性が一貫してるな……」


 ラファエルが呟く。


 そこへ、エストレラ家の執事が慌てた様子で入ってきた。


「ルシアお嬢様。王宮より使いが」

「まあ?」

「今回の件について、お礼と、事情確認をしたいと――」

「事情確認?」


 ハビエルは遠い目をした。


「来ましたか」

「ええ。あと、諜報部の方も同席して欲しいと」

「諜報部?」


 パブロが顔を上げる。


「もしかして、私たちのこと?」

「ええ」


 執事は困ったように微笑んだ。


「王都で最も早く異変を掴み、最も自然に連絡を回し、最も速く全体像へ辿り着いたのは、どこの正式な機関でもなく……」


 そこで一瞬、言い淀んだ。


「……ペルーチェ同盟、であったと」


 部屋がしん、と静まる。



 次の瞬間。


「まあ!」


 ルシアだけが、ぱっと顔を輝かせた。


「いつの間にか、ペルが有名になっていたのね!」

「そこ!?」と全員が揃って言った。


 ルシアは嬉しそうに続ける。


「すてきだわ。王宮の方にも、ぬい活が広がるかもしれないもの」

「広げる気なんですね」


 ハビエルは死んだ魚のような目で言う。


「当然よ」

「やめてください。これ以上、国家中枢まで巻き込まないでください」

「でも、かわいいものが好きでも良いじゃない!」

「その理屈で国家機密に近づかないでいただきたい」

「まあ」


 ラファエルは片手で顔を覆った。


「……頭が痛い」

「大丈夫?」

「あなたのせいです」

「わたくしのせいなの?」

「絶対にそうです!」


 けれど、その口調は少しだけやわらかかった。


     ◇


 数日後。

 王都では祭典成功の話と一緒に、奇妙な噂がひそかに広まっていた。


 ――ぬいぐるみを愛する集まりが、反王派の企みを潰したらしい。

 ――令嬢と商人と侍女と騎士見習いの集まりが、正式な諜報部より早かったらしい。

 ――ペルーチェ同盟は、表向きは手芸とお茶会、裏では王都最強の情報網らしい。


 もちろん、話はかなり盛られていた。


 だが、完全な嘘でもなかった。



 そしてその頃、当のルシアはというと。


「地方衣装ぬいをもっと増やしたいの」

「増やさなくていいです」


 ハビエルが即答する。


 なぜか彼はまた離れにいた。

 監視のためだと言い張っているが、すでに誰もまともに聞いていない。


「祭典で人気だったでしょう?」

「人気でしたね」


 パブロが帳面を見ながら頷く。


「特に北方刺繍風と港町風は伸びそうです」

「ほら!」

「ほら、じゃありません」


 ハビエルが言う。


「あなたは一度、今回の件を振り返るべきです」

「振り返ったわ」

「どのように」

「やっぱり、好きなものを好きって言える場所は大事だなって」

「……」

「それと、花冠の一輪増しは正解だったわ」

「そこですか」

「そこよ」

「もう駄目だ……」


 イネスがくすくす笑いながら、新しい布を広げる。


「でも、ルシアらしいわ」

「でしょう?」

「ええ。だから、みんなついてくるのよ」

「まあ、うれしい」


 マルティーナは新しい型紙を見せる。


「会員用ぬいの目印、今度はもっと自然に入れられます」

「待ってください」


 ハビエルが顔を上げる。


「それは何のために?」

「可愛さのためです!」

「あと分かりやすさ」


 アナが補足する。


「可愛くて分かりやすいのが一番なので」

「その分かりやすさが問題なんですが」

「でも便利よ?」


 ルシアが言う。


「だって、仲間が見つけやすいもの」

「ええ、それを世間では――」


 ハビエルはそこで言葉を切り、諦めたように首を振った。


「……いえ。もういいです」


 ラファエルは珍しく、小さく笑った。


「諦めましたか」

「ええ。あなたはよく平然としていられますね」

「慣れました」

「どこまで」

「全部です」

「強いですね」

「護衛ですので」

「その答え、便利ね」


 ルシアが楽しそうに笑う。


 部屋には、今日もお茶の香りが満ちていた。


 机の上には布、糸、リボン、小さなぬいぐるみたち。


 令嬢も、商人も、侍女も、騎士も、諜報部員までいる。


 誰もが好きなものを語り、笑い、時々ついでのように重要なことまで話してしまう。



 そしてその中心で、ルシアはいつも通りだった。


「さあ、次のペル会もがんばりましょう!」

「何をがんばるんです」


 ハビエルが聞く。


「もちろん、かわいくて楽しい会にすることよ!」

「……それだけですか」

「それだけよ?」

「そうですか」


 ハビエルは頭を抱えた。

 ラファエルは目を閉じた。

 パブロは笑いをこらえ、イネスは肩を震わせ、マルティーナとアナは元気よく頷いた。


 ――この人たちは、何なんだ。


 きっと王宮でも、諜報部でも、いま同じことを言っているだろう。


 けれどルシアだけは、そんなことを少しも知らずに、今日も楽しそうにぬいを抱きしめる。


 好きなものを好きだと言える場所。

 かわいいを大切にできる時間。


 そのついでに、なぜか王都の秘密まで集まってしまう、不思議でにぎやかな同盟。


 そうして、ペルーチェ同盟は今日もまた、ぬい活仲間とお茶を飲み、推しの話に花を咲かせながら、誰にも気づかれないまま――いや、もうだいぶ気づかれているけれど――のんきに、楽しく、強く広がっていくのだった。


<おわり>


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