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小さな私の物語  作者: 葉月 優奈
一話:小さな女子高生の初恋
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007

人間にとって、ハエはうっとうしい存在。

でもそんなハエの背中に乗るとは、思いもしなかった。

私を乗せたハエは、ふらふらと飛んでいく。


背中に乗せたままハエは、廊下をどんどん進んでいく。

歩くよりも、ずっと早くて楽だ。

こんなに小さいのにもハエの羽が、激しく動いていてハエの体を動かしているのか。

ずいぶんと近くで、ハエの速さを体験していた。


(でも、本当に跳躍力がバグっているなぁ)

圧倒的な高さで、飛んでいるハエさえも飛び越えてしまう。

私の跳躍力は、とにかくおかしい。

それでも、人間に飛び乗るほどの高さまでジャンプすることはできないようだ。


私を乗せたままのハエは、なぜか特別教室のほうに向かった。

少しためらいもしたけど、私はしばらくハエについていくことにした。


それにしても、ハエはもっと臭いと思っていたけどあんまり臭くない。

というか、ハエから匂いを感じない。

意外と無臭なのだと、小さく驚いていた。


(このあたりで、降りようかしら?)

5分ほど飛んだけど、階段は特別教室を目指していた。

向かう教室の階段とは反対側だけど、私はハエにしがみついて乗っていた。


飛んでいたハエは、どうやらある匂いに誘われてこちらを飛んでいたようだ。

見えたのは、調理実習室。

調理実習室の匂いに寄せられて、ハエがそのまま飛んで行った。


(それにしてもいい匂い)

調理実習室から漂うのは、甘い匂い。

何か、ケーキのような香ばしい匂いがハエの上でも嗅ぐことができた。


甘い匂いに誘われてハエは、そのまま調理実習室に入っていく。

調理実習室のドアは、微かに空いていた、

誰かが閉め忘れたのか、低空飛行になって隙間に入っていくハエ。


狭いところを器用に抜けるハエ。

だが、ハエが激しく動く中で私はバランスを崩した。


「おわっ、こっちじゃないって!」

だけど、ハエの上に乗っていた私はそのまま家庭科室の狭い入口の前に着地した。

細い隙間から、光と匂いが漏れた。


(結局、調理実習室まで来ちゃった)

おなかはすいていないけど、甘い匂いがしていた。


「授業を、しているのね」

調理実習室から、声が漏れた。

女の声が、多く漏れていた。


(ハエも行ったけど、私も行ってみるか)

なんとなく、そう思いドアの隙間に体を通す。

小さな体なので、簡単にすり抜けた。


ドアのわずかな隙間を抜けて、私は調理実習室の中に入った。

そして、明るい調理実習室に私は入ってきていた。



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