055
――4か月前――
祥万と一緒にいるときは、曇りの日がなぜか多い。
この日も曇りで、今にも雨が降り出しそうだった。
野球場では試合が終わって、片づけも行われていた。
私は、この日野球部の試合があるのを知っていた。
そして、私は覚悟を決めていた。
私をここに導いてくれたのは、一人の幼なじみ。
この日に告白をするのも、彼女が後押ししてくれたからだ。
(静は、一度はちゃんと恋をしなさい)か。
水主は、いいことをたまには言う。
背中を押してくれた水主は、少し遠くの女子トイレから私を見守ってくれていた。
私は、部活の勧誘会で彼を初めて見た。
その時から、彼の顔に心奪われた。
彼は、眩しいほどの爽やかイケメンだ。
今まで見たすべての人間で、一番かっこよかった。
だけど、私は不安の方がかなり強かった。
あれだけのカッコいい男子、ほかの女子が放っておくはずもない。
好きな人は、いるんじゃないか。
今まで、水主の恋愛を助けるためにいろんな男子を調べたことで自分の恋は臆病になっていた。
諦めようとした私に、水主は何気なくかけた言葉がこれだ。
水主にとっては他愛もない言葉でも、私にとっては大きな言葉になった。
そして、私は覚悟を決めた。
祥万が出ていた試合の結果は、負けてしまった。
落ち込んだ祥万は、間もなくして私の待っていた部室に出てきた。
ユニフォームから制服に着替えた彼は、当然浮かない顔をして出てきた。
一人だ、スポーツバックを持っているが。
「何?」
「あの、一年D組の黄柳野 静といいます」
「黄柳野さん?何か用??」落ち込んだ顔の祥万。
それでも、私ははっきりと彼の前に立った。
ここでの私は、意外なほどに度胸があった。
「乾先輩は、付き合っている人とかいますか?」
「いないけど」
「だったら、私と付き合ってくれませんか?」
私は、まっすぐに手を差し出した。
スポーツバックを持った祥万は、少しだけ考えるしぐさを見せた。
「そうだね。だとしたら、君に一つ試すけどいい?」
「うん、なんですか?」
「僕は今、負けて落ち込んでいる。
だからこそ、君には僕を励ましてくれる一言が欲しいな」
「いいよ。大丈夫」
私は、彼の前で大きく息を吸い込んだ。
そう、それは水主の失恋で水主を慰めることで慣れていた。
私は祥万に対して、口を開いた。
「試合見ていたよ」
「なにそれ?僕はね、今日は頑張って投げたんだ。久しぶりの先発だし」
「先発すごいじゃん」
「すごくないよ。
僕はあのピンチを、乗り越えられなかっかたら。すごく悔しい」
「悔しかったね」
「でも、そんなので励ましているつもりなの?」
「私なりには、励ましているよ。
だって乾先輩の苦労にできるだけ寄り添わないと、私はあなたのことを慰められないから」
「何それ、あははっ」
祥万は、呆れたのか笑っていた。
私もそれにつられて、笑顔を見せていた。
「ね、慰められたでしょ」
「君、すごいね。僕のことを、笑わせるとか」
「そう?乾先輩の笑顔は、かわいいですよ」
「へえ、いいよ。じゃあ付き合ってあげる」
祥万は、優しいまなざしに変わった。そして、私と彼は付き合うことになっていた――




