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これはゲームの話。
でもリアルでもあった。
ゲームであるから、勝と、負けが存在していた。
それはリアルが絡むと、命のやり取りが色濃く出てきた。
あの溶岩に落ちたら、私は死ぬのだろうか。
それだけじゃない。
今まで通った天井からの飛び降りも、足元の溶岩も。
それから、キラプトルが私に向いて吐いてくるブレスも。
食らったら、どうなるのだろう。
だけど、試してみたいと思わない。
失敗したら、取り返しがつかないこと起こってしまうかもしれない。
これは、生きている人間同士の命のやり取り。
つまりは、戦いと何ら変わりない。
ベルトランドというゲームで、私は4人のプレイヤーの一人になった。
選ばれた最後の一人になって、私はキラプトル城に来ていた。
そして最後のボスであるキラプトルの……祥万と戦う。
この戦いの後に、彼はどうなるのだろうか。
そんなことを考えては、この大きなハサミを振るえない。
私は、つり橋の奥に来ていた。
手には、大きなハサミが握られていた。
腕の力で下から移動した私に、キラプトルが追いつけなかった。
巨体のキラプトルは、まだつり橋の上。
「静、先にたどり着いたか」
「私は、このゲームを終わらせたい」
つり橋は、一本の縄が杭でつながっていた。
一本の縄を着れば、すぐにつり橋が落ちる仕掛けだ。
「ごめんね、私はあなたを満足させる女じゃないから」
「そうだよ、ようやく落としてくれ。このゲームは君の勝ちだ」
「最後に教えて。
6月のあの日、私が告白したとき……あなたは私のことをどう思っていたの?」
「覚えているよ、試合に負けたあの日だね。
場所は確か部室の前、君は僕に会いに来た」
「状況はいいわ。あの日から私のことは、好きだったかどうか?」
「嫌いじゃないけど、好きでもなかった」
「そう、それなら安心したわ」
私は、大きなハサミを両手で握った。
「私はやっぱり、あなたが好きになれない」
私は迷うことなく、大きなハサミで縄を切り捨てた。
切られた瞬間、つり橋は力を失って溶岩に落ちていく。
つり橋が落ちると、つり橋にいるキラプトルも落ちていく。
その瞬間、祥万の声で「ありがとう」と聞こえていた。
それが、彼から聞いた最後の言葉だった。




