049
キラプトル城の奥で、溶岩の川をつなぐつり橋。
私の彼は、あり得ない場所に立っていた。
パソコン画面ではキラプトルと合体したようだけど、目の前にいる人間は違う。
黒のブレザー上下に、さわやかイケメン。
茶髪の短い髪は、甘いマスクで鼻も高い。
きれいな目をした男性は、とにかく女性を虜にしてしまう。
祥万の姿が、人間の形で出てきていた。
視聴覚室のパソコンで見た、祥万の声と同じ。
見た目も祥万の姿で、にこやかな顔はいつもの彼と同じだ。
「4人のプレイヤーの中で、まさか静が来るとは思わなかったよ」
「もう、やめてよ!祥万!」
私は叫んだが、祥万は穏やかな笑顔で私を出迎えた。
「君は、僕のゲームをどう思う?」
「何が言いたいの?」
「僕は、このゲームを完成させたいんだ。
このゲームは、まだまだ足りないところがあるのだから」
「完成?」
「ああ、完成だよ。
野球一筋だった僕は、ある日このゲームと出会った。
初めは、暇つぶしだった。
元々ゲームは得意というわけではないけど、ベルトランドをやっていると心が落ち着くんだ。
なんというか、強力打線を抑えるよりも今は楽しいかもしれない。
君も、野球のルールがよくわからないだろ」
「うん。野球もゲームも、よくルールがわからない」
「今の世の中は、複雑化しているんだ。
複雑だから、馬鹿が理解できずに暴走する。
そんな中でも、このゲームはいい。
とてもシンプルで、単純にスタートからゴールまで行けばクリアだ」
「確かにシンプルだった、私がここに来たのもあなたに会うため」
「だったら、楽しかったんじゃないか?」
「楽しくはない。あたしは、必死だったから」
首を横に振って私は、真っ向から否定した。
祥万はそれでもハイテンションになりながら、笑っていた。
「そんなことはない。僕は楽しかったよ」
「祥万だけ楽しくても、しょうがないでしょ。
これは、誰の何のためのゲームなの?」
「ゲームに理由なんかいるのか?
楽しければ、それでいいんじゃないのか?」
「ほかの人を巻き込んで、それはおかしいでしょ」
私の正論は、祥万に届かない。
祥万の心には、私の言葉は全く響いていない。
「いいかい。どんな良作も、最初から評価されたわけじゃないんだ。
クソゲーとして、酷評された中で……それでも生き残ったゲームが良ゲーなんだよ。
だから僕のこのゲームも、いつか評価される時が来る」
「よくわかったわ、祥万」
私は、首を横に振っていた。
祥万は、それでも目を細めて私をじっと見ていた。
「戦いが終わってから、はっきり言おうと思ったけど。
今から言うわよ。私はあなたが嫌いになった。
あなたのことを、これ以上好きになれない」
とうとう言い放った。
私の気持ち、パソコン室から見た彼に対する心変わり。
だけど、それを聞いた祥万はうつ向いたまま黙ってしまう。
「だからこれ以上、危険なゲームをやめさせて。
小さくなった人を、全員元に戻して」
「嫌いならそれでもいい、僕も君に全力を尽くせるから。
君を殺しても、心が痛まなくなるだろうから」
祥万が、怪しく笑う。
同時に、指を鳴らした。
鳴らした瞬間、祥万より少し大きな黄色い恐竜……キラプトルが姿を見せた。
キラプトルの登場の瞬間に、祥万の姿が吸い込まれていく。
祥万の体が、完全に消えてキラプトルの目が怪しく光っていた。




