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「ブレーキっ!」
勝先輩は、手綱を強く引っ張った。
赤のシュトラオスは、そのまま急ブレーキがかかって減速した。
香流たちが減速している間に、私たちは進む。
そのまま、スピードを上げて一気に抜き去った。
初めて野球部コンビから、リードを奪う。
私の紫のシュトラオスを苦々しく見ていた香流は、火の玉を放つ。
動きが止まった赤のシュトラオスから、しっかりコントロールされた火の玉が飛んできた。
だけど私は、手綱を使ってシュトラオスを動かす。
火の玉を何とかよけながら、それでもスピードは落ちない。
「どうしてよ、あんた達はなんで乾君に……気に入られているの?」
香流の嘆き。
香流もまた、祥万のことが好きだ。
でも私という彼女ができて、祥万は水主も気に入っていた。
そのことが、身近にいた香流にとっては許せなかったのだろう。
「どうして、どうして」
それでも、火の玉を次々と放ってきた。
香流は執念深く、勝もまた諦めていない。
「諦めるのは、まだ早いな」
再び、手綱を握った勝。
彼もまだ、しつこく追いかけてきた。
それでも、紫シュトラオスの速さから徐々に引き離していく。
「だったら、あの一手を使うしかない」
「あの一手?」
「彼女たちを殺してしまうかもしれないけど、いいか?」
勝は、香流に低い声であることを提案した。
物騒な会話をしていること知らない私は、紫のシュトラオスを走らせていく。
そして、遠くにかすかに見えていた。
野球場のホームベース側。
観客席バックネット側のすぐそばに、一軒のプレハブ小屋が見えた。
そこには、祥万が言っていた最後のダンジョン『キラプトル城』のある部室だ。
(やっと着いた、あとは……)
距離は、確実に離れた。
紫のシュトラオスは、赤のシュトラオスよりも早い。
だけど、水主はずっと後ろに気を付けていた。
「マズイ、相手は『わざ』を使ってくる」
水主は、私の後ろで叫んでいた。




