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赤いダチョウは、足が長い。
小さくなった私たちより、少しだけ大きかった。
それでも数センチ程度の小ささではあったのだが。
赤いダチョウの背中には、乗っていた二人。
一人は、勝先輩。
黒ブレザーに、ズボン。
ダチョウの手綱を持って、操っていた。
そしてもう一人、勝先輩の後ろに座っていた女子がいた。
そう、マネージャーの香流だ。
私に火の玉を放ってきた女は、険しい顔で勝先輩にしがみついていた。
二人を乗せたダチョウのような生物が、アスファルトの地面を進んでいく。
私と水主を、そのまま素通りしていった。
私の長い髪と、水主のサイドポニーが風で揺れた。
「あれって?」
「シュトラオスだね」
「シュトラオス?」
「ベルトランドの乗り物。
まあ、ペットみたいなものっで卵を探して仲間にするとこうやって乗せて……」
「説明している場合では、ないでしょ。
一気に抜かれたのよ、私たち!」
赤いシュトラオスに乗った勝先輩と香流はどんどん、先に進んでいく。
向かう先は、もちろん野球部の部室だ。
あのシュトラオスがたどり着いた瞬間、私は祥万に会うことができない。
「それにしても、あの二人がプレイヤーね」
「そうよ、あの二人より先に部室にたどり着かないといけない。
しかも、二人とも野球部の人だから」
「へえ、なるほどね」
水主は、感心した様子で見ていた。
でも、なんだか楽しそうな顔もしていた。
「ちょっと、水主。聞いているの?今はかなりマズイ状態なのよ。
香流たちに追い抜かれていて、このままだと……」
「だったら、あたしたちも素直にシュトラオスを手に入れればいいんじゃない」
「それって?」
私が疑問を口に出すも、水主はすぐに動いていた。
背中にはリュックサックを背負っていた彼女は、一本のハンマーを取り出した。
水主は周囲を見回すと、サッカー場のほうに向かっていく。
「ちょっとそっちは?」
「こうなったら、敵をいっぱい狩りまくるのよ。
静も協力してくれるよね」
水主は、ハンマーを持ちながら怪しく微笑んでいた。
私は、サッカー場に降りていく水主についていくしかなかった。




