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小さな私の物語  作者: 葉月 優奈
三話:小さな女子高生の戦い
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私はスマホを持っていないけど、水主はスマホを持っていた。

それはとても小さなスマホだけど、ちゃんと操作ができた。

小さな体の水主は、スマホを操作して私に見せてきた。


「それって?」

見えたのはパソコン画面と同じ、ベルトランドのゲーム画面。

ベルトランドのゲームだけど、背景は私たちの通う学校だ。

そこに、ドット絵の主人公が走り回っていた。


「ベルトランド、スマホゲームよ。

昔からあるゲームで、横スクロールアクションゲーム」

「それは、知っている」

勝の説明で、私たちはそのゲームの世界の登場人物になった。

小さな体も、それが原因だ。

広くなった学校のステージを、走り回るゲーム画面だ。


「このゲームは、学校が舞台なの。

あたしたちが通っている学校なのよ、すごいでしょ」

「でも、どうして?」

「あたしがファンなのは、乾先輩が作ったゲームよ」

「作ったゲーム?」

パソコン画面に出ている学校が、舞台の横スクロールアクション。

見た目はドット絵のキャラが走っているけど、キャラの姿が変わった。


「これは私?」

「私だけじゃない、いろんなキャラが参加しているの」

キャラの姿かたちが、私のドット絵だ。

ほかにも水主の姿も、ドット絵に変わったりもしていた。


「水主は、なんで祥万のゲームのファンなの?」

「ねえ、中2のころの夏のことを覚えている?」

「えーと、門脇君が好きだったころ……だっけ?」

門脇君は、水主が最後に好きになった男子生徒。

不良の男子生徒で、夜には暴走族と遊んでいた噂の男子。


冬には、休学になったけど門脇君は彼女がいた。

水主は、恋をすることもなく惚れただけで失恋してしまった。


「そう、門脇君が好きだったころ。

でも、夏休み前に振られて……その頃に海外に行ったの」

「ああ、水主の家は夏休み、イギリスに行っていたのよね」

「うん」

「そこで目覚めたのよ」

「何に?」

「ⅤRのアクションゲームに」

水主は、はっきりと言い放った。

それを見て、今の現象を感じてはっきりと理解した。


「もしかして、水主の好きなものって」

「乾先輩の作るゲームよ。

彼は、ネットでいくつもアップしていたから」

それを聞いた瞬間、安堵して腰が抜けた。

緊張が切れた私は、大きくため息をついた。


「じゃあさ、水主は祥万のことが?」

「別にあんな塩顔、全然好きじゃないわよ。

そもそも、あたしは顔で好きになったりしないし。

内面を見ているのよ、内面」

「はは、そうね」

言われてみれば祥万は、確かに水主のタイプじゃない。

さわやかイケメンの祥万と、真逆の見た目だ。

だけど、彼の顔を見て内面も初めて見られた。

それは、私にとっては意味のあるようなものにも思えた。


「ねえ、静」

「何?」

「このゲームって、ほかにもプレイヤーがいるんでしょ」

「いるけど……」

そんな私たちのそばから、ドドドっと何かが近づいてくる音が聞こえた。


それは、人間の足音ではない。

巨大に見える、学生が姿を見せているわけでもない。

サッカー場には、きれいな芝が見えているも授業中だから人もいない。


背後から近づく不思議な足音に、振り返るとそこには一匹のダチョウが姿を見せていた。

そして、ダチョウには二人組が乗って走っていた。



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