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小さな私の物語  作者: 葉月 優奈
三話:小さな女子高生の戦い
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大きくなれるのは、たった3分間。

制限時間は、あまりにも短い。

それでも、元の大きな体に戻るのには大きなアドバンテージだ。


目指す場所は、野球部の部室。

迷うことなく、私は職員玄関から上履きのまま外に出た。

アスファルトを、私は必死に走っていた。


私の通うこの学校は、かなり敷地が広い。

部活動に、そこそこ力を入れていて運動部にはいくつかの専用グラウンドがあった。

野球部もかつては名門だったらしく、その名残が学校内にあった。


祥万が野球部だったこともあり、野球部の部室の場所は分かっていた。

逆に言えば、部員でなければ広い学校の敷地を理解するのは難しい。


もうすぐ、三時限目が終わる朝。

雨上がりだけど、曇った空が見えた。


秋の空気と、太陽が出ていないことで外は少し寒い。

私が走ったことで追いつけなくなった光の妖精(ヘルフ)は、いつの間にか見えなくなった。


(水主に追いつけるか)

パソコン画面を見たのは、約10分前。

彼女が歩いていたのは、アスファルト。

野球部の部室の近く、グラウンド付近は砂利道。

つまりは、10分前はまだその近辺に来ていない。


(おまけに水主の体も小さい。10分前だから、ついていないと思う)

確証はどこにもない。

だけど、諦めるにはまだまだ早い。

3分間の大きな体で、距離をどれぐらい詰められるか。


(とにかく走ろう。私は、祥万に会うんだ)

気持ちは、変わらない。

ただ一人だけ、祥万に会うことができる条件だ。

祥万に会って、このゲームをやめさせて、私ははっきり伝えたいこともできた。

そのためにも、こんなところで終われない。


(持って、私の足)

足が痛い。

小さくなった時と違い、大きくなった私は疲れやすくなっていた。

体が大きくなって、体重も重くなったことで小さかった身軽な私の動きはなりを潜めた。

むしろ、運動が苦手な女子高生の私が走っていた。


「はあっ、はあっ」

荒い呼吸で、それでも私は走っていた。

カウントダウンの数字が、着実に減っていく。


職員廊下から、坂が下り坂。

上履きで走りにくいけど、靴に履き替える余裕はない。

私には、急いで走る目的があるんだ。

左手にグラウンドが見え、右に駐車場も見えた。


そんな中でも、私はどんどん先を目指す。

目的地を目指して、どんどん進んでいく。


(だめ、まだゼロにならないで)

カウントダウンの数字が1分…30秒、どんどん減っていく。

足が重く、体もだるい。

だけど大きくなれる時間は限られていた。


(3……2……1……)

私の制限時間が、とうとうゼロになった。


なった瞬間、私の体が光で包まれた。

体が小さくなって、そのまま私はアスファルトの地面で小さくなっていた。


「ダメか」

私は、呼吸を乱して両手で膝をついた。

小さくなった私は、顔が赤かった。

走りすぎて、苦しい私は必死に酸素を取り込もうとした。


(急がないと……いけないのに)

私が周囲を見回すと、近くにサッカー場が見えていた。

それと同時に、アスファルトの地面を走っている一人の小さな人間が視界に入っていた。



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