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小さなころから、水主はよく見ていた。
水主とは、いつも一緒にいた。
小1、小2と同じクラスだったので彼女のことを、尚更よく理解していた。
朝は何を食べたのか。
得意な強化や苦手な教化とか。
そして、何より彼女が一番大好きな男子のタイプも手に取るように知っていた。
「ねえ、あの中に好きな子がいるの?」
「ええ、ううん、いないいない。加賀君のことじゃない」
「やっぱり加賀君、なんだ」
否定する水主が、かわいらしい。
顔を真っ赤にして、私に手を振っていた。
水主は、加賀君が好きなのか。
男子グループで行動している、少しやんちゃな男の子。
イケメンというより、小太りな男の子。
グイグイと引っ張っていく感じで、積極的な男子だ。
まあ、ちょっと下品なところもあるのだけど。
周りの男の子を従えている、恰幅のいい男の子。
「へえ、水主は加賀君タイプも好きなんだ」
「いいでしょ、好きになったんだから!」
こう見えて水主は、惚れやすい女の子だ。
小1の彼女だけど、すでに好きになった人は3人目。
子供っぽい男子が、彼女の好みだ。
だけど好きになった水主は結局、付き合うことがなかった。
「どんなところが、好きなの?」
「ワイルドな…所」
確かに、豪快なイメージのある男の子だ。
加賀君は、私のタイプではないけど。
それでも、水主を見ている顔がとても赤い。
まさに水主は、恋する乙女の表情だ。
「ねえ、告白はしたの?
加賀君は、女の子とあまり一緒にいる印象がないから。
チャンスは、かなりあると思うけど」
「加賀君は、男子からの人気があるし」
「でも、女子人気とは関係ないでしょ。
本当に好きなら、正直に気持ちを打ち明ければいいのに」
「それは…だめ!」
加賀君が、目の前にいるわけでもない。
少し遠くで、男子と談笑しているだけだ。
それでも、そんな彼を遠くから見ている水主は、完全に惚れていた。
そんな惚れやすい水主が、幼い私には理解できなかった。
「あたしは、ただずっと彼を遠くで好きなまま見ていたいだけなの。
そんな彼に、憧れているのだから」
「フーン」あの頃の私は、恋に興味がなかった。
「でも、私は水主を応援する。
何か必要なことがあったら、なんでも言って。
私も協力するから、水主の恋に」
「ありがとう、静」
水主は、私の手を力強く握っていた。
水主は今、恋をしている。
幼なじみとして、私は彼女の愛を協力することになった――




