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小さな私の物語  作者: 葉月 優奈
一話:小さな女子高生の初恋
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私の名前は、『黄柳野(つげの) 静』。

愛知県県北にある県立高校に、通っている普通の高校生だ。

どこにでもいる高校1年生で、着ている黒ブレザーも学校の制服。


そんな何の変哲もない、私は小さくなっていた。

なぜかはわからないけど。


私が今いる場所は、私が通う学校の水飲み場。

大きな窓も、小さくなったので理解できた。


私がさっきは知っていたのは、水飲み場のシンクだ。

銀色の壁や床、激流もシンクの中での出来事だった。

つまり私は、今も学校の中にいたということになる。

ようやく、今の状況を理解していた。


小さくなったのは見えるもの全てが、大きく見えた。

それもそのはず、私が小さくなっているのだから。

今のところ、手洗い場には人はいない。

蛇口を締めずに、誰かがそのまま離れたのだろう。


それと、もうひとつに不思議なのがさっきの光の声。

声のあと、私は驚くほどの跳躍力があった。

普通の女子高生で、運動は得意なわけでもない。

むしろ苦手な私だったけど、あんなジャンプ力があるとは思わなかった。


いや、それも小さなことと関係があるのだろうか。

さっきの光の声の主は、あれ…いない。

窓が開いて風が、吹いていた。

光の球らしきものが、その風の流れに乗って飛んでいったようだ。


(あの光の球は、一体?)

不思議な光の球は、私の視界から消えていた。


私の体が小さくなっていることを理解して、周囲を見回した。

蛇口も、石鹸もいつもよりずっと大きく見えた。

校舎の汚れとか、小さくなるとよく見えた。

でも、私が小さくなるとか現実にそんなことが起こるのだろうか。


(うー、思い出せない)

なぜ、私が小さくなったのかいまだにわからない。

それに、どうしてここにいたのかも記憶がない。


あるのは、朝この学校に来るまでの記憶。

だけど記憶がない中で、ここに来ていた。


(でも、このままじゃいけないなぁ)

スマホを探すも、スカートのポケットにスマホがない。

服は小さくなっているけど、スマホがないと安心できない。

現代っ子の私には、情報が必要だ。


(そういえば、スマホがない)

ブレザーの中をくまなく探したけど、見つからない。


(うーん、教室か。とにかく一階に戻らないと。

ここって、おそらく3階よね)

そばにある窓から、下を覗き込んだ。


かすかに空いている窓は、風が吹きつけていく。

近づくだけで、光の球のように吸い寄せられてしまう。


(高いなぁ。落ちたら即死かな)

窓の反対側、シンクの淵に歩いていく。

シンクの淵から、下を覗いた。


廊下の地面が、かなり高く見えた。

小さくなったのか、シンクの下はとても高く見えた。


(こっちも高いけど、死ななそう)

シンクしたから、覗き込んだ私はなんとなくそう思えた。

どちらも、とても高い。

高いけど三階とシンクの下では、高さが全然違ってみた。


(あのジャンプ力があれば、なんとかいけるかな?)

恐怖はあった。

高いし、飛び越えたことがない。

それでもさっき空を飛んだようなジャンプ力を、私は目の当たりにして体感もした。

体は震えていて、足も震えるが両手でパシッと叩く。

そのまま私は、覚悟を決めた。


(まあ、行かなきゃ始まらないよね。

ここにいても大きくならないだろうし。

なにより、情報がたくさん欲しい)

私は勇気を出して、シンクの下から飛び降りた。

それが、小さな私の奇妙な冒険の始まりだった。



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