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小さな私の物語  作者: 葉月 優奈
三話:小さな女子高生の戦い
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――小1の春・家の前――

あの頃は、毎日が楽しかった。

私が、小学校に入ったばかりの頃の話。

小さな私には、一緒に通学していた仲のいい女の子がいた。


隣に住んでいて、家族同士も交流のある吉瀬家。

彼女の家で、赤いランドセルの私は待っていた。


小学校の私は、クラスで一番背が低い。

身長91センチという、とんでもない低い身長の私。

少しがない髪を二つに縛っていたかわいらしい女の子。


だけどその顔には、どこか怯えた様子が見えた。

ランドセルが、とても大きく見えていた。


(早く来ないかな)

玄関そばで、小さな私は待っていた。

少し待つと、隣の家の玄関が開く。


そして出てきたのは、短い髪の女の子。

赤というよりピンクかかったランドセルを背負っていた。

それこそ、私が待っていた彼女だ。


私は、幼いころからずっと一緒だった親友。

「おはよ、水主ちゃん」

「おはよう、静ちゃん」


いつも通りのあいさつを交わした。

一緒に出てきた保護者でもある、水主の母親にも私は挨拶をした。


そのまま水主と私が、一緒に学校に行く。

それが小学校から今も続く、私たちの日課だ。


一緒に登校しながら、周囲に住宅街を歩いていた。

そして学校で起こったこと、家族のことをお互いに話し合う。そんな仲だった。


「うん、昨日の動画見た?」

「あれ、ダンス動画。かわいかったよね」

小学生の私たちのマイブームは、ネット配信のダンス動画。

かわいらしいダンスや、カッコいいダンス動画を見て一緒にポーズをとることもあった。


二人でかわいく振り付けをして、登校中にポーズをすることもあった。

ポーズを決めながら、同じタイミングで談笑する私と水主。

二人で話し合うこの空気感は,他愛もないけど楽しかった。


「今日は、私のところでご飯食べるよね?」

「うん、パパもママも残業だって。

二人とも、夜が遅くなるから」

「お仕事が、忙しそうだね」

「それに比べて、静ちゃんはいいよね?

ママはいつもいるし、おばあちゃんもいるし」

「私のママは、『在宅』っていうので働いているみたい」

一応私の母も、ちゃんと仕事をしていた。

まだ小学生だから、その頃は母親の詳しい仕事の中身も知らない。

今でもわからないことが多いけど、『在宅』っていう言葉だけが知っていた。


在宅勤務の母と、祖母がいるので私の家は安全だ。

そんな私も水主も、どっちも一人っ子だ。

お互いの家族からまるで双子のように、育てられてきた。

それは近所のおばさんも、同じ心境なのだろう。


「あら、おはよう。静ちゃんと水主ちゃん」

「おはようございます」

元気にハモって挨拶をする私、そして水主。

通学路のおばちゃんは、にこやかなに手を振っていた。

そんな水主の中で、少しもじもじしている姿が見えた。


「水主、何か考えている?」

「うーん、あのね…」

水主は、顔を赤くしてもじもじしていた。

ここは、通りの大きな横断歩道。


そこには、小学生の一団が見えた。

小学生の一団の中から、一人の男子生徒を見つけて明らかに水主の様子が照れているようだった。



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