027
それは、私の中でやっぱりというべき人物だ。
香流も、勝先輩も、よく知っている人物。
三人に共通していて、野球部関係で、私の知り合い。いや私の彼氏。
「祥万っ!」
出てきたのは、『乾 祥万』。私の彼氏の顔だ。
テレビ画面越しの彼は、相変わらずのイケメンだ。カッコいい。
だけどテレビに映る私の彼は、怪しく微笑んでいた。
いるだけで女子の心を奪ってしまう、魅力という名の魔力を込めた祥万の爽やか笑顔。
腕を組んだ冷めた顔で、香流は見ていた。
「乾君、これってあなたもこのゲームに絡んでいたの?」
「ああ、そうだよ」
あっさりと祥万は、素直に白状した。
「だって、僕がこのゲームのマスターだから」
祥万は、悪びれる様子も謝罪をする様子もない。
このゲームの黒幕が、あっさりと正体をばらしてきた。
「でも、このゲームな何なの?
なんで私が小さくなってゲームに参加したの?」
「僕は準備をしたんだ。どこまでもリアルなゲーム。
僕の知っている人を、巻き込んで楽しんでいるようだね」
「ふざけないで、あたしたちを戻しなさい」
香流は、怒っていた。
勝も、くたびれた様子で首を横に振っていた。
「あのなぁ、俺たちはもうすぐ秋の大会もあるんだぜ。
今は、こんなゲームをしている場合じゃない」
「そうじゃないんだよな。
僕は、いろいろと疲れたんだよ」
「疲れた?」
「まあ、いいや。今は僕の気持ちはどうでもいい。
僕は今、とてもすがすがしい。
ゲームを作って、マスターになって最高だ」
「あの、だから」
「心配いらないよ。ゲームをクリアすればいいんだ。
これは僕が作った、僕だけのベルトランドだから」
「狂っているわ」
「そうだよ、僕は狂ったんだ」
祥万が、闇落ちしてしまった。
今見ている彼の顔は、私の知らない祥万の一面だ。
「祥万、こんなことはもうやめて」
「どうしてだよ?君だって楽しいだろ。
小さくなって、いろんな人間の裏の顔を見ただろう」
「それは…」
祥万の言葉に、幼なじみの水主の顔が浮かび上がった。
でも、一瞬考えこむ私をよそに話を続けていた。
「それより、君らにこれからラスボスを紹介するよ。
いやぁ、実装するのが大変だったんだよね」
祥万の言葉と共に、暗転した画面。
スポットライトがぐるぐる回り、一つの影に焦点が当たった。
当たったそこには、黄色い恐竜の姿が見えた。
「そう、こいつが『キラプトル』」
出てきた恐竜は、威圧感たっぷりで画面に迫ってきた。




