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小さな私の物語  作者: 葉月 優奈
二話:小さな女子高生の真実
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023

赤いウサギは、もちろん私たちに合わせて小さい。

そして、はっきりと香流が言った『敵』という単語。

元々小さくなってから、いくつも奇妙なことが起こっていた。


あの真っ赤なウサギも、そもそも不思議な生き物だ。

かわいらしいウサギも、凶暴さを出して飛び掛かってきた。


突進して、群れで効率的に攻めてくるウサギ。

それでも、一匹のウサギがわずかに遅れた。


香流は、反応の遅れたウサギを見逃さない。

香流が火の玉を、放っていく。

放たれた火の玉は、群れからは離れたウサギに命中。


「これで三匹目」

香流は、また一匹ウサギを焼き尽くした。

半分の数になったウサギは、四つ足になって身構えた。

香流のことを、かなり警戒していた。


「まだやるの?」

凛とした顔の香流は、険しい顔で三匹のウサギに言い放つ。

ウサギは、香流の言葉を理解できない。

体を少し下げて、一斉に飛び出した。


「やるなら、容赦しない」

香流は両手を広げて、少し広げて合わせた。

そこから生まれたのは、三つの火の玉。

同時に香流の上には、赤い三匹のウサギ。


香流が作り出した火の球が、同時に飛び掛かるウサギに飛んでいく。

そのまま、火の玉が三匹すべてに命中。


同時に火が大きくなって、ウサギの体を焼き尽くした。

香流は背を向けて、私のほうを向いていた。


「まあ、こんなものよ」

「マジ、カッコいい」あこがれの目で私は、香流を見ていた。

頼もしい、一年年上の先輩。

小麦色の赤毛の先輩は、とても頼もしく見えた。

彼女の背後には、三匹のウサギが焼死体になった。


だけど、そのうちの一つが変化した。

それは、私の背丈はある大きな茶色の宝箱だ。

『¥』マークのレリーフがついた宝箱を、ウサギが落としていた。


「なに、これ?」

「敵を倒すと、たまに落とすのよ。

そこには、私の火の玉のようなアイテムが入っていることもあるわ」

「これが、そうなの?」

香流は、何でも知っていた。

¥マークが書かれた宝箱が、椅子のくぼみに置かれていた。


「ねえ、香流さん」

「なにかしら?」

「なんか、開けたい」

「いいけど、罠もあるわよ」

「本当に?」香流の言葉に、私は驚いた。

一瞬微笑んだけど、香流はすぐに真顔になった。


「ええ。正しくは罠アイテムね。取ると、パワーダウンするアイテム」

「何それ。どんなヤツなの?」

「うーん、よくわかんないけどそんなのがあるって。

あの光の女の子が、そんなことも言っていた」

光の女の子?そういえば家庭科実習室に現れたあの子か。

私には、そんなことを教えてくれた覚えがなかったけどな。

そういえば、あの子は名前も知らないなぁ。


「でも、あなたはアイテムを取っていないようだし…罠アイテムが出ても問題ないと思うわ」

「でも、出ちゃったら」不安な顔で、香流を見ていた。

「そしたら、一生静は守ってあげるから」

「本当?」

「…多分」歯切れの悪い香流は、少し照れていた。

半べその私は、香流に甘えるような眼を見せていた。

香流は、暖かい顔で私に微笑んだ。


「でも、静が開けてみなさいよ」

「わかった、開けてみる」

香流に押されて、私は¥マークの宝箱の前に立ち止まった。

少し緊張した顔で、私は宝箱を開けた。

開いた大きな宝箱の中には、なぜか大きなタケノコが入っていた。


「なに、タケノコ?」

意味がよくわからないけど、私はタケノコに触れてみた。


よく見ると分厚い皮がはがれていて、調理されたタケノコ。

すぐ食べられるように、茹でてあった。

持ったタケノコは、結構熱かった。


「熱っ」私は落とそうとしたけど、我慢した。

「タケノコだね」香流は、宝箱から出てきたタケノコを興味深く見ていた。


「このタケノコ、なんなの?」

ブレザーの袖をまくって手でつかむことで、熱さを緩和した。


「武器……じゃないわね」

「うーん、どうするんだろ?」

「食べてみれば?」

「なんか、香流のとは全然違う。

香流は、どんなのが出たの?」

「あたしは、火の玉とこの赤いリボンよ」

ブレザーのリボンが、確かに赤い。赤いというか、燃えているようにも見えた。


私は、困惑の表情を見せつつもタケノコを食べてみた。

熱いタケノコを食べると、私の体には…変化がない。

口の中が、ただ熱くなっただけだった。


「結局何にも、変わらないじゃない!」私は、不満そうに騒いでいた。



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