022
真っ赤なウサギは、見た目がとても愛らしい。
小さなウサギの目の色は、真っ白だ。
赤い毛並みのウサギが、次々と段ボールから勢いよく出てきた。
不思議な白い瞳が、こちらを向けていた。
かわいらしい姿で、小さい。
いっぱい出てきたウサギは、とにかくかわいいを前面に押し出してきた。
(でも敵って?)香流の言葉が、どうしても引っ掛かった。
それでも香流が正しいと知るのは、僅か数秒後だ。
段ボールから出てきたウサギが、6匹になった。
集団で円を描いて集まったウサギの目が、白から赤に変わった。
それと同時に、口元に気がば見えた。
ぎざぎざの歯を出して、一斉にこちらに向かって飛び込んできた。
赤ウサギは、うさぎ跳びで向かってきたけどかなり早い。
「動きが変わった」
椅子の上にいた私にめがけて、飛び込んでくる赤ウサギ。
威嚇した顔で、私に対して両手を出して飛びついてきた。
見た目以上の変化で、起こったことに戸惑う私。
だけど、私の隣にいた香流は冷静だ。
目を瞑り、両手を広げて、自分の前で掌を開く。
その掌の間、ブレザーのリボンから赤い炎が出てきた。
右手を前に、突き出す。
そこから、赤い球が浮かび上がった。
出てきたのは炎。それを丸めたものを、香流の右手が前に突き出すことでウサギめがけて飛び出した。
香流の火の玉を触れることなく、赤いウサギに向けて投げつけた香流。
「なに、今の?」
赤い炎の球が、飛び向かうサギを焼き払う。
香流の攻撃に、私はやはり驚くしかなかった。
レシピブックの時でも使った香流の力、それが羨ましくも思えた。
香流はそれでも、右手を前に突き出していた。
火の玉が、彼女の周りに発生しウサギを目指して飛んでいく。
ウサギもまた、火の玉を交わして突進していく。
だけど、香流は体をねじってウサギの攻撃を避けた。
険しい顔で、周囲のウサギを威嚇した。
ウサギは、それでも香流を取り囲んでいた。
「敵?」
「そう、これはあたしたちを倒そうとする敵」
香流の言葉は、とても強い。
火の玉を放ったことで、ウサギの注目を香流が集めた。
ウサギは、次々と香流に突進して手を伸ばす。
それらを避けた香流は、次々と自分の両手で発生させた火の玉をぶつけていく。
「これで、二匹目」
二匹目のウサギは、火に包まれて消滅した。
火の玉を操る香流と、ウサギの群れの戦いを私は大きな椅子の上で見ていた。
激しい戦いを私は、ただオロオロするしかない。
「大丈夫、静はあたしが守るから」
香流が、ウサギを見ながら火の玉で戦っていた。
私に対して、勇ましい声を投げかけながら。
再び火の玉を、発生させた香流。
それを、囲んでいたウサギに投げつけていく。
隣で見ている私は、それでも何もできない。
だけど、思ってしまった。
(香流先輩、とってもカッコいい)と。




