010
窓の外の光は、なんだか騒がしい。
光の球が、私をめがけて飛んでいき、近くの本棚に飛んできた。
それはまるで、メテオのような隕石の落下に見えた。
私の少し前で、止まった光。
というより、本棚に刺さった光は輝きを失った。
よく見ると、それはとても小さな光ではない。
一人の羽の生えた女の子だ。
緑色のワンピースに、ハエのような透明な羽根。
耳が長く、かわいらしい女の子は顔面を本棚にぶつけていた。
「いたたっ!」
「ねえ、大丈夫?」
「風に流されたのっ!」
小さな体の女の子は、私を見てほほを膨らませた。
なぜか、私に対して怒っている様子だ。
そういえば、水飲み場で聞いたあの声とよく似ていた。
「静、あなたに会いに来たのよ」
「なぜ、私に?」
「伝言を預かっているから」
「伝言?」
女の子は、胸を張って鼻息を鳴らした。
「そ、伝言。ある方が、あなたを待っているのよ」
「ある方って?誰?」
「視聴覚室に行けば…わかるんじゃない」
羽根の生えた女の子は、だけどなんだか青ざめた顔を見せていた。
「え?」
「あそこ、こないで!」
女の子が指をさしたのは、ハエだ。
私が乗ってきたハエが、羽をはばたかせて少し遠くからやってきた。
それが見えた羽根の女の子は、体勢を立て直して飛び上がった。
「じゃあ、伝えたから。静」
羽根の女の子は、あっさりと逃げていく。
飛び上がった瞬間に、小さな光をまとって女の子は窓の外に消えていった。
そんなハエは、やはり黄色の目で私をしっかりと黙認していた。
(まさか、私を狙っていないわよね)
ハエは、まっすぐ本棚のそばにいる私にめがけて飛んできていた。
だが、私はまだ気づかなかった。
私の足元で、ガタという小さな音がしたのを。




