9話
「妖人…」
口から言葉がもれる
「妖人てそんなにいるもんなのか…?」
「それは後で答えましょう、はやく通報のある場所にいかなくては」
確かにそのとおりだ、妖怪がきっと今も暴れているのだから
一体何で行くんだ…!
車か自転車、それとも電車…?
そう考えていると蓮人は口を開いた
「付いてきてください」
「えっ、」
そして、猛スピードで走った
「いや、走りかよ!
てか早ぁ…」
軽くジャンプをし車を飛び越え、そして家の屋根へ飛び乗る
凄いがその身のこなしに見惚れている暇はない
俺もついていかないと置いてかれる
俺も地面を蹴り跳躍し、蓮人の後に続いた
妖人になってから運動神経が上がったとは思っていたが、やはり常人とは比べ物にならない
屋根と屋根の間を飛び越え、そして何メートルも下にある地面へ着地する
「おお、早いですね
流石です」
蓮人に追いつくと汗も流さず笑顔で蓮人はそういった
俺からしたらこんなスピードで走って息の上がらない蓮人のほうが化け物に見えるが
そのまま蓮人の後ろを離されないように追いかけ続ける
すると、やっと蓮人は足を止めた
「到着です」
「はぁ、はぁ、ここ…?」
蓮人が停まった場所は少し、川の流れが激しいことぐらいしか特に何の変哲もない場所だった
人っ子1人いない
「え?妖怪いなくね?」
(まさか…迷惑電話?)
そう思っていると蓮人がいきなり走り出した
「ちょ、蓮人??」
場所を間違えたのかと思ったが、蓮人は草の生い茂るところまで行くとすぐに足を止めた
「なんかあったのか?」
そばへ行くと蓮人の手の中にはずぶ濡れのカワウソがいた
「はい、いましたよ」
「は?カワウソ???」
蓮人は笑顔のまま濡れたカワウソを地面に置いた
カワウソが濡れた毛並みを整えるようにブルブルと震えたそのとき——
「溺れていた所を助けて頂きありがとうございます!」
「はぁ!?」
なんとそのカワウソが喋りだし、蓮人に感謝を伝えた
その様子につい口が開く
「いえ、礼には及びませんよ」
それに普通に笑顔で対応する蓮人
いや、おかしいだろ、カワウソは喋らねーよ??
あ、妖怪?カワウソ妖怪とかそういうの?
「顔色が悪いですが大丈夫ですか?」
小さい手を俺に向け、カワウソ妖怪は言った
「いや、いや、は?」
「ちょっと悠真くん、口が悪いですよ?」
蓮人が何か言っているような気がするが頭に入ってこない
そんなことよりこの妖怪は一体なにを考えているんだ
「ええと…よければお礼にこれどうぞ!」
カワウソは自分の毛に手をっ込むとビー玉をだした
本当に意味が分からない
「わぁ、ありがとうございます!」
それに蓮人は笑顔で対応する
頭くるってんのか
その様子を黙ってみているとカワウソ妖怪は何度か頭を下げ草むらへと駆けていった
「よし、任務完了です」
「いやいやいや」
あんなにかっこよく駆けつけてやること、これ?
ただのボランティアじゃねぇか
そうは思いたくない、それにーー
「さっきの妖怪だろ?
祓わなくていーのかよ??」
俺がそうつっこむと蓮人は不思議そうな顔をした
「物騒ですねぇ…」
「はぁ?」
ずっと笑顔なせいで蓮人の感情が読み取れない
ふざけてるのかと思ってしまうほどに
「そうでしたね、さっきも言いかけましたが
妖怪警察は妖怪を祓う組織ではありません」
「えっ」
濡れた手をハンカチで拭き取り
そして、当然だというように蓮人は言った
「妖怪警察の理念は妖怪と人間の共生ですから」
蓮人がいったその言葉は受け入れがたいものだった
俺が忌み嫌っていた妖怪が人間と共生…?
考えたくもない
「何いってんだ、妖怪と共生なんて…」
俺が言いかけたその時蓮人は軽くため息をついた
「貴方がなんで妖怪を嫌うかはわかりません、しかし妖怪は貴方が思っているより悪い人たちではありませんよ」
息がつまる、妖怪が俺の両親を殺したと思っていた、だけどそれは妖怪ではなかった、多分妖魔だ
俺は間違っていたのだ
最後まで読んでくださりありがとうございます!