7話
「起きてください」
心地よい夢のなか意識を飛ばしていると一つの声が意識を起こした
「ん…どこ、ここ……」
目をこすり、寝ぼけた頭の霧が晴れるとやっと昨日の濃い一日を思い出した
「あ…俺…胡散臭い…妖怪警察に入ることになったんだっけ…」
頭の中を整理するためにまだ働かない脳でそう言うと
「悪かったですね、胡散臭い警察で」
と聞き覚えのない声が聞こえた
その声のほうを向くと糸目の…いやそんなことより何かの液体に塗れた胡散臭い青年が佇んでいた
「うわ…誰、何…!?」
「あ、目を覚ましましたね、貴方こそ誰です?
不法侵入てわけではなさそうですが」
青年は笑みを張り付けた顔でそう言った
「俺は橘悠真、昨日玄とかいう人に無理やり連れてこられた!決して泥棒とかではない!」
隠すこともないので自信満々にそう言う
すると糸目の青年は「玄さんが…」と呟いた
「なるほど…、僕は妖怪警察埼玉県の副部長、深谷蓮人です」
蓮人と名乗った青年は玄とはまた違った胡散臭さを放っていて、赤黒い液体に塗れた姿はなにか罪を犯した人間にもみえる
そのときーー
ガチャ
軽快に扉が開いた
「あれ、蓮人早いな」
入ってきたのは昨日と変わらずくたびれた様子の玄だった
「おはようございます、玄さん色々説明を」
蓮人が何やら膨らんだ紙袋を持った玄に言った
「あれ、言ってなかったか…?」
玄はおかしいなーと頭をかいた
「何も聞いてません」
「悪い悪いえっと…あいつは悠真、これから妖怪警察に入ることになった超大型新人だぞ」
玄は俺に手を向けると紙袋から手帳を取り出す
「これはこれは…」
玄は蓮人の見せたあと俺に手帳を差し出した
「これって…」
「妖怪警察手帳、一応妖異認証証の代わりにもなるから肌見放さずもっとけよ」
妖怪警察手帳には昨日の夜適当に撮らされた写真、そして名前と従六位と書かれたカードが入っていた
(本当俺妖怪警察になるんだな……)
昨日は流れに任せて色々決まっていた
………だが今やっと実感がどんどん湧いてくる。
手帳をよく見ると
妖怪名 登録番号
と書かれた場所が空白だった
まだ未完成らしい
「こんないきなり後輩が出来るなんて、嬉しいですね」
蓮人は嬉しそうに俺の顔をのぞいた
「えっと…蓮人はその…染みはなに…」
ついに気になっていたことを聞くと蓮人は顔を変えずに
「妖魔の血です」
と言った
(よくそんな汚えもんつけてられんな……)
今完全にわかった、こいつは変人だ
「ところで悠真くんはなぜ妖怪警察に?」
俺が引いていると蓮人が言った
「昨日妖人になって、その俺に取り憑いている残滓が強力だったから…?」
ふわっふわな説明だったが、覚えている限りの話をする
蓮人はどうやら今の説明で理解してくれたらしく
「それはすごいですね!」
と嘘くさく褒めた
「でも手帳には従六位てかいてある…なんで?」
「取り憑いてる妖怪が強くても、それを引き出せるかどうかは妖人次第だからな、まだ悠真の力がどのくらいか見れてないし、今の手帳はまぁ、人権確保のための仮手帳てところだな」
玄は眠たそうにそう言うと俺の反対側のソファに腰掛けた
「今日は帰ってもいいけど…どうする今から仕事してくれてもいいよ?」
「妖怪を駆除するんですか?」
俺が目を輝かせてそう言うと
「駆除て……【祓う】な」
と呆れたようにそう言うと玄は訂正してきた
どっちでもいいと思うが
「あぁ、でも…今日は妖魔の通報は入ってないし…簡単な事務仕事だな」
それなら俺は帰りたいのだが、玄のくまを見るに昨日は夜通し仕事をしていたらしい
少し悩ましいが正直昨日は汗もかいたし帰りたい
だから俺は笑顔で「じゃあ、帰ります」と宣言した
悪いのは誘拐?した玄だし
読んでくださりありがとうございました!