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2話

螺旋階段を俺はただただ生きるために走った


あれは悪夢そのものだ


醜悪で人間に害をもたらす存在


恐怖で息が荒くなる、それでも生きるために走り続ける


妖怪は曲がり角で体を壁に打ち付け廃墟を揺らした


それのせいで転けそうになるが俺は手すりを掴み上へ上へと走り続けた


だが、それももう叶わない、屋上に辿り着いてしまったのだ


空はやはり夜よりも漆黒でほとんど見渡すことすら出来ない


「くそっ…」


屋上の隅、フェンスとフェンスの角へ背中をつける

 

ペタッペタッペタッペタッ


妖怪は俺を逃さぬよう、ゆっくりと迫った


「くそ妖怪が…」


俺の腰ほどしかないフェンスから下を見下ろす


そしてーー


(食われるくらいなら……!)


俺は身を投げた


それはただの反抗だ


体に突き抜けていく風が冷たい


場違いだが、それが体にあたると気持ちよくて、俺は目をつむった


だがーー


目の前が赤くなる


それは瞼に光が当たっている確かな証拠だ


目を開ける、そこには森に入ってすぐに見た、小さな小さな『光』があった


そしてそれは俺の体にすぅと入りこんだ


じわじわと体温が上がる


抵抗はなかった、理由は直感


だがその直感が生死を分けたーーーー



ドンッ


鈍い音を立て俺は土に衝突した


普通の人間なら死は免れない


しかしーー


指がぴくりと微かに動く


「っ…いってぇ……」


俺は驚くことに痛みさえあれど生きていた


確認するように体を見るが怪我すら見当たらない


どう考えてもさっきの光の影響だ


「どうなってんだ……?」


あの光はなんだったのか、なぜ自分は生きているのか、何も理解は出来ないが考えるだけの暇はなかった


妖怪が壁をトカゲのように手を使い降りてきている


速度は遅い、俺が死んだと思っているのだろう


死んだふりをしても意味がない、逃げるのも駄目だ、まだ田中が廃墟の中にいる


震える足を叩き化け物と対峙した


化け物は俺が生きていることに驚いたのか


グォォォォォォォォ


と咆哮をあげた


「まぁ…生きててもどうしようもねぇけどなっ…??」


(カッコつけてみたもののどうしようか…)


化け物は俺を仕留めようと巨体を使って突進を仕掛けてきた


「っ………!」


(間に合わないっ…)


左右に逃げることは出来ない


俺は一か八か化け物の上を跳躍した


そしてーーーなんと化け物を飛び越え回避してしまった


「なっ…!!??」


普通の人間じゃあり得ない高さの跳躍に自分自身驚きが隠せない


(この力なら…、)


しかしこのチャンスを逃すわけにはいかない、俺は突進を失敗し木に頭をぶつけた化け物を蹴り飛ばす


化け物はその勢いで今度は廃墟へと体を激突させた


「うわ…まじで出来た!!」


廃墟がボロボロと崩れ瓦礫が落ちる


「っ、あ、田中!!!」


田中の存在を思い出し叫ぶ


幸運なことに廃墟はどうにか持ちこたえたようでそれ以上崩れることはなかった


それでも次はないだろう


妖怪はそんなことお構い無しに、攻撃を仕掛ける


無数にある手物凄い勢いで俺を掴もうと伸ばされる


俺はそれを走って、飛んで、殴って回避した


しかし手の数は減ることはなく増えていく一方


このままでは数分も経たずに捕まってしまうだろう


息を呑んだ


しかし不思議と前のような恐怖はない


「よくわかんねーけど…お前を殺せるならなんだってやってやるよ…!」


それは赤子が生まれすぐに息の仕方がわかるように、俺も今何をすればいいのかわかったからだ


なんの確証もないそれでも


地面を力強く蹴り天高く跳躍し漆黒の手から離れる


そして自分の手を合わせて力を込める


『混合』


俺はそう発した


何の意味があるのか、何が起こるのかなんて分からない、でも今、そうすべきだと思ったのだ


「これは…!」


混合と唱えた瞬間俺の合わせた手から刃先が出現した


それは手のひらから刺さっていた物が抜けていくように少しずつその姿を現す


そして最後には一本の刀が生み出された


光のほとんどない暗闇のなか刃がキラキラと輝きその鋭さを知らしめている


「刀なんて使ったことねーけど…でも」


刀を見つめ強く握る


「やるしかねぇ!!!」


無数の漆黒の手が待ってくれるはずもなく俺を四方八方から取り囲み、逃げ場を無くす


漆黒の手を刀で縦に薙ぐするとパラパラと崩れ落ち隙間ができた


そこから逃げ出すと漆黒手と化け物を繋ぐ腕を両断する


「グワァァァァァァ゛」


化け物が初めて痛みで叫ぶ


それを見て思わず口角が上がった


「ははっ……これならやれる…!」


刀を片手に間合いを詰める


途中で漆黒の手が伸ばされるが全てを斬り裂く


そしてーー

化け物の頭上に飛び上がった


「はぁ!!」


咆哮とともに化け物は真っ二つに切り裂かれた


ドス黒い血飛沫があたりを舞う


はぁ、はぁ、はぁ、はぁ


俺の荒い呼吸が静かにこだまする


その後ろで半分にされた体がバタリと横に倒れ伏した


「勝った……」


思わず緊張の糸がぬけその場に力なく尻もちをついた


刀はその瞬間に消え光となって体の中吸い込まれた


「ほんと、どうなってんだこれ…?」


俺は草むらに倒れるとアドレナリンがドバドバと流れ出すなか妖怪の断末魔を思い出し紅潮する拳を握り締めた。


俺はずっと願っていた、見ることしか出来ない、触れることが出来ないあの害悪共をぶった切れる、そうーーーこんな力を


読んでくださりありがとうございます!!


毎日投稿していこうと思っています


よろしければポイントやリアクション大変励みになりますのでお願いします!!

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