初めまして!《お題:はじめての友達》
お題「はじめての友達」をテーマに制作したお話です
いつもこの瞬間はドキドキして胸が痛くなる。
先に入った先生の後を追いかけるように、教室の中に入る。たくさんの視線を一気に浴びて、思わず足がすくみそうになる。なんとか先生の横に立つと、先生は黒板に僕の名前を大きく書いた。
「はじめまして……黒沼ショウって言います。仲良くしてくれたら嬉しいです」
学校に来るまで何度も練習した言葉。何回言っても慣れない自己紹介をなんとかつっかえずに言い終える。ドキドキしながら僕のことをジッと見ている子友達の反応を伺う。隣に立って見守っていた、先生が拍手をする。すると他の子供達も真似をするように手を叩き出す。僕は心の中でホッとする。よかった、なんとか自己紹介を乗り越えたぞ、と。
拍手の音が小さくなり、先生が僕の席を教えてくれる。ありがちな、一番後ろの席だった。気の強そうな男の子が、「えー! ずるい!」って言って先生に嗜められていた。僕としては、他の子供たちから孤立しているような気持ちになるから、一番後ろの席はちょっとだけ苦手だった。
「はじめまして、よろしくね」
隣にいたおっとりとした男の子が早速声をかけてくれた。また、その子が一番に声をかけてくれたことが、僕は嬉しくて手を差し出した。目の前の男の子は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに笑顔になって握手をし返してくれた。僕はさらに嬉しくなって、その手をブンブンと振り回す。すると、その様子を見守っていた先生が、笑いながら「挨拶は済んだか? それなら前を向いて、始めるぞ」と言った。
僕は一人でテンションが舞い上がっていたことが恥ずかしくなり、体を小さくさせる。チラッと、隣を見ると、男の子が笑いを堪えていた。その子の笑顔をまた見ることができて、それだけで僕はすぐに嬉しくなる。
もう何度目かわからない、自己紹介。男の子の隣に座るのも、これで何回目だろう。
僕は湧き上がってくる気持ちを無理やり抑え込んで笑う。
今度こそ、男の子と明日を迎えたい。
それだけを願って、僕は今日を繰り返す。