プロローグ
青流結晶
今自分の目の前にある青色の結晶だ。
黒い蓋がされたガラス瓶の中にある。
なんでこんな物の中に入れているのか、それは人を蝕むから。この結晶のせいで、何人もの命が失われたか…
どうしてそんな物が今この場所にあるか、それは"特殊青流化人"と言われるものから摘出された物だからだ。特殊がいれば、普通の青流化人もいる。青流結晶自体は今となればあまり珍しくない。けど、特殊青流化人から取れた物、普通の青流結晶とは全く違う物…見た目ではあまり分からないが、これでしか取れない情報が多々ある。
自分はそんなものをなんとなく見つめていた。
「何してるんですか…」
そんな事をしていると、後ろから声をかけられる。
「あぁ、ツユリ…まぁ、何となく見つめていただけだ。」
今自分の目の前にいる銃を持った人物。名前はツユリ・カルーダという。
「そうですか、最近は特殊青流化人はいませんけど…どうやってそれを?」
「あぁ、これは2年ぐらい前の物。」
「どうやって手に入れたんですかそんな物…」
呆れたような顔で自分を見つめてくる。
まぁ、そりゃ2年も前物なら誰でもこうなるか、と思いつつ…
「まぁ、そんなことは気にせず…」
「いや気になりますよ?!」
やけに反応がいい。興味でもあるのだろうか。
自分は席から立ち上がり、廊下に出る。
さらっと見たツユリの表情はぽかんとしていた。
さて、改めてこの場所はある所の仮基地。
名前はHPF(人類守護軍)という場所。名前がやけにダサい感じがするが、しっかりしている場所なので安心ができる。
自分はその中のHFP青流結晶研究機関という所のトップ。日々自分たちは青流化人を元に戻す方法を研究していたりする。化け物とは言え、元は自分たちと同じ人間。何か戻せるかもしれない。という希望を抱いているだけの場所に過ぎないと、自分は思っている。
青流化人は日々徘徊しており、言わばゾンビのような存在なのだ。人の見た目はしていなく、人は特定量の青流線を受けると徐々に青流化人と化していく。
青流線というのは、言わば放射線の様な物だ。
自分は外に出る。灰色の空だ、活気がない。今日は曇りなのだろうか、少し高い場所に向かい、遠くを見ると一つの街が見える。そして、大きく、威嚇するようにそびえ立っている青流結晶に包まれた白色のタワーがある。その街の名前はホワイトスカイ。
そんなホワイトスカイにある青流結晶から街を守る塔、後に"青色終末塔"と呼ばれるタワー。この場所は、青流結晶を防いでくれる役目があった。青流化人を寄せつけない特殊な技術があった。けど、不可解にも青流結晶に蝕まれ、塔は使い物にならなくなった。ホワイトスカイから逃げた人は青流化人に滅茶苦茶にされ、現在でも何人も取り残されている。恐らく、大半の人は青流化人となっているだろう…
自分はそんな場所をぼんやり見つめながら色々なことを考える。
すると、後ろからツユリが話しかけてくる。
「また同じ場所で、同じところ見ているんですか?」
隣に来て、そう聞かれる。
「あぁ、"あの時"のことをどうしても忘れられなくて。」
そう言うと、ツユリは黙り込む。
「…恐ろしかった。」
「…そうだね」
あの時とは、ホワイトスカイから逃げていた。自分とツユリを含めもう1人とホワイトスカイから逃げていた。青流化人に追いかけられ、その時に自分の丁度後ろを走っていた"カルナ・トレード"という人、カルナはツユリにとっての一番の友達。そして、自分にとっては一番の研究者仲間だった。
そして、突如壁から生えてきた青流結晶にカルナは飲み込まれてしまった。縦横無尽に生える青流結晶には恐怖しか残らなかった。そして、なんとか逃げ切って、今に至る。
今何処にカルナが居るかもわからない。青流化人となっているかもしれないし、どこかで生きているかもしれない。
カルナを救うのも自分達の中の一つの目標かもしれない。
「カルナ、今どうしてるのかな…」
「さぁ、…調査しなきゃわからない…」
逃げてきてから、ホワイトスカイには近づいてはいない。なんせ、危険性が高すぎるから。さっき言った青色終末塔は今は青流結晶の核と化している。青色終末塔を崩せれば青流結晶はこれ以上広がらない。けど、実際は不可能に近い。なんせ、素材が硬すぎるから。戦車だろうが特殊青流化人だろうが、絶対に壊せない。
「青流化人達がこちらに近づいていてきている!!」
遠くからそんな声が聞こえる。ツユリと顔を合わせて自分達は下に行き、戦闘態勢に入る。自分達が持っている拳銃の銃弾は特殊な物になっており、対青流化人用と言える。奥を見ると、青流化人はこちらに一直線に向かって来る。ここのリーダー的な人が指揮をとっている。
「撃て!!」
そんな掛け声が聞こえると、自分達が一斉に青流化人に向かって弾を放つ。青流化人の弱点は基本的に右肩と腹部のひし形の場所。そこを撃てば死ぬ。
元人間だということもあるが、少し心が痛む。
だが、安心して成仏させるにはこうしかない。
暫くし、青流化人は来なくなった。負傷者はなし
「お疲れ様。」
ツユリが横から話しかけてくる。銃をどっかに置いたのか、両手をポッケに入れながら。
「あぁ、お疲れ。」
こちらもそう言う。
「取り敢えず、持ち場に戻りましょう。ここに長居してもあまり良くない気がするし。」
そうだな、と言いいつもの研究部屋へと向かう。
「久しぶりだったな、青流化人が来たの。」
椅子に座っては、ツユリに向かってそう言う。
「そうだね、3ヶ月…くらいこなかったのかな?」
青流化人は、人を見かけてはすぐに襲ってくる。武器があれば対抗することはできる。だが、それは特殊な武器を持っていればの話であって、普通の武器じゃ対抗する事は出来ない。3ヶ月前に特殊な武器が発明され、その日以来から青流化人はこちらには来ていなかった。危険性を知って近寄らなかったのだろう。
だが、どうして今頃来るのか。青流化人の中で何かがあったのか、そう思った。
「……青流化人の間で恐らく何かがあった。」
思わず口に出してしまう。
「…確かに、何かがあったのかも。」
ツユリもうんうんと頷く。
「あと、言ってなかったが自分はそろそろこの場所を移動するよ」
理由は"ハルバロス"という場所にいる部下と顔を合わせたかったら。あくまで個人的な感じだ。
「そうなの?じゃあ、私も移動の準備をしたほうがいいかな、?」
「うん、ついてきて欲しい。」
そう言うなり、立って荷物をまとめる。最終的には小さなブロック状になる。これをストレージキューブと言う。実に楽な技術。
「じゃあ、私も色々まとめますね。」
ツユリはそう言うと、自分の部屋に行った。
今更だが、ツユリは自分の部下的な存在。だから付いてくる。
荷物がまとまり、自分は外に出る。ツユリはとっくに終わっていたらしく、既に外に立っていた。
「あ、研究者。」
「ん、そんな呼び方だったっけ。」
普段とは違うことに気が付き、指摘する。
「…別にいいじゃん。」
少し黙ってから言われる。
「ま、いいけどさ。」
「向かう場所は?」
「ハルバロス。」
そう言うなり、自分はツユリとHPFの仮基地から出て行った。
― To be continued
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